最新 追記

Matzにっき


2004年05月01日 [長年日記]

_ [OSS]インクの出ないペンで鼻歌をうたおう

ITmediaから。

同人誌を書く人についてなんだけど、 なんだか彼のスタンスが自分に重なったりする。 私はもう絵は描かないし、イベントに行ったりはしないけど。

彼は同人誌、私はオープンソースソフトウェア。

  「Windows 95時代、よく見てた同人さんのサイトがあったんだよね。その後何年もたってすっかり忘れてたんだけど、ある即売会に参加したら、そのサークルが本を売ってた。あのころ、そのサークルと同じ会場で自分が本を売ることになるなんて思ってもみなかったから、不思議な気がしてね……」。

というのは、私にとってはDave ThomasとAndy HuntやWard Cunningham、Martin Fowlerと、 世間話をするような仲になるという「思ってもみなかった」ことを思い出すし。

「ほんとに変な気分だよ……液晶の上にインクの出ないペンで線を引いていくと、そこに頭の中で思ってただけだった世界が“実体化”してるんだから。ただの電子データなんだけどね」。

「Emacsの上でキーをたたくと、そこに頭の中で思ってただけだった世界が実体化してるんだから。 ただの電子データなんだけどね」。

「そしてそれを読んでくれる人がいる。お金を出して。素人の漫画をさ。ヘンでしょ」。

そしてそれを使ってくれる人がいる。素人の言語をさ。ヘンでしょ。

そういえば高校時代には同人誌を書いたような気がするな、ある意味封印したい恥ずかしい記憶だが。


2004年05月02日 [長年日記]

_ [教会]自己責任

最近、自己責任ということがあちこちで取りざたされている。 まあ、「血税が浪費された」という思いは理解できないでもないが、 それでも違和感を感じる。

教会で聖句を読みながら、そんなことを考えた。

これは個人に対するメッセージで、政府もそうあるべきとは一概には言えないが、 自己責任というキーワードで正当化されるべきでないものもあるということで。


2004年05月03日 憲法記念日 [長年日記]

_ [家族]温泉プール

ゴールデンウィークだというのに引っ越しの片付けばかりではあんまりだろう、 ということで、家族サービスに安来にある温泉プールに。

もっと近いのもあるのにここをひいきにしているのは、 親戚のうちの隣だから。もっとも、従姉とはずいぶん疎遠にしているので、 近くにいっても「思い出す」だけなのだが。思ってるだけでは通じないのは自覚してるのに。

近いうちに挨拶しに行こう。祖母の墓参りもしよう。

それはさておき。遊ぶ。 もっとも、私はプールでは目が良く見えないし(ど近眼の悲しさ)、 すっかり泳げなくなっているので、お湯につかっている時間の方がはるかに長い。 妻も似たようなものだ。もっとも彼女は数年前まで水泳教室に通っていたので、 私よりはマシだが。

前回も同じようなことをしているなあ。

すっかりふやけて帰宅する。


2004年05月04日 国民の休日 [長年日記]

_ [生活]引っ越し残務

天気が悪いので、家で片付けを。すこしは箱が減ったが、まだまだ残っている。

今度の家は前よりもずっと広いので、空間はあるが、 この空間をどのように活用したらよいのかわからないのは貧乏性か。 あと、古いので、けっこうあちこち手を入れる必要が。

_ [会社]ソフトハウス大淘汰時代

日経コンピュータ5月3日号の特集。

中小のソフトハウス、特に地方にあるものがどんどん淘汰されつつある、 という内容。これはどういうことか。

需給関係から競争力の劣るものが淘汰されるというのはどこの業界にでもある話だ。 しかし、実際にはソフトウェア産業において供給過剰という感じはない。 むしろ、仕事は増えているような気がする。

にもかかわらず、単価が下がり、淘汰が行われるのはなぜか。 デフレだから、なのだろうか。 地方の景気回復があまり進まず、仕事が(中央に)偏在していること、 個々のプロジェクトの規模が小さくなり、開発期間が短くなったこと、 理由はいろいろ考えられる。

いずれにしても差別化が行えなければ生き残れないことは確かのようだ。 リスク分散についても考える必要がある。

うちの会社について考えると、差別化については(今のところ)合格点が出せると思う。 地方の厳しさが報じられているが、価格についてもあまり問題になっていないようだ。 地元の仕事は確かに単価が安いけれども、比率としては高くないし。 逆にリソースが足りなくて仕事を断るケースもある。

しかし、リスク分散を考えると、やや偏り過ぎているかもしれない。 もうひとつかふたつ柱になる仕事を用意したいなあ。


2004年05月05日 こどもの日 [長年日記]

_ [家族]遊園地

やっと晴れたので、岡山県の山の中にある某遊園地に。 高速を使えば玉造からでも1時間で着くのね。

マイナーなので、人はあまりいないかな、と期待していたのだが、 予想外に駐車場は一杯であった。これは「特捜戦隊デカレンジャー」ショーのせいか。

前に来た時にはほとんど並ぶことがなかったアトラクションにもかなり長い行列ができている。 行列は嫌いだ。まあ、ディズニーリゾートとかUSJに行けばこんなものでは済まないけれども。

14時から「特捜戦隊デカレンジャー」ショー。 息子は今年あたりから戦隊ものは気分的に卒業したはずだったが、 結構喜んで見ている。「がんばれーっ、デカレンジャーっ」。 見たこともない悪役であったが、それなりに工夫をしているようだ。 が、ストーリーはテレビの本編以上にツッコミどころ満載であった。

まあ、いいか。

3時も過ぎた頃から人が減りはじめる。あらゆるアトラクションが並ばずに遊べるようになる。 子供たちは走り回って、あちこち遊んでいる。大人はくたびれている。 結局、閉館の6時(早いなあ)ぎりぎりまで遊び回って、 満喫したようだ。小さい遊園地であるが、これくらいの方が時間を有意義に使えたような気がする。 ということで、この遊園地は午後から遊ぶのが吉かも。

しかし、くたびれた。


2004年05月06日 [長年日記]

_ [OSS]オープンソース・プログラマの職を見つけるには

japan.linux.comの記事から。

MySQL ABはオープンソースプログラマを求めている。 実績、特にオープンソースコミュニティでの実績が注目される、 というような内容。

うちについても似たようなところがある。標準以上のプログラマをいつも募集している。

が、地理的に分散しているのが普通のMySQL ABと比較すると、 ネットワーク応用通信研究所は松江と東京の事務所に集中しているので、 もっと保守的だ。自宅で作業する人はかなり多いが、 それでも完全在宅勤務で、遠隔地に住む人は(まだ)いない。 日本の法律やら規則やらがいろいろ面倒なせいもあるけど、 会社そのものが革新的な制度にそれほど積極的でないというのもある。 われわれ従業員も完全裁量労働制以上の自由を要求してはいないし。

オープンソースコミュニティでの実績はいつも重視される。 それは能力や業績の証明でもあるが、もうひとつは コミュニティでうまくやる人は会社でもうまくできる (ことが多い)点だ。 どちらももっとも重要なのは能力そのものよりも人間関係をマネージできる力だったり、 交渉力だったりする。仮に標準以上の二人の候補がいれば、 少々能力が劣っていてもきちんと話せる人を取りたい。

追記:

うち(netlab.jp)とMySQL ABとの大きな違いはもうひとつあった。

向こうはオープンソースソフトウェアであるMySQLそのものが商品だが、 うちはOSSをベースにしたシステムインテグレーションをメインのビジネスにしている。

だから、うちに就職した人の多くは業務ではオープンソースでないソフトウェアを開発している人も多い。 だが、本業を効率良く片付けてオープンソースソフトウェアの開発を行うことは奨励されている。 それにIPAなどの補助金を受けて開発するソフトウェアは基本的にオープンソースにしている。


2004年05月07日 [長年日記]

_ [聖書]放蕩息子

先日、自己責任についたら、いろいろなコメントを受けた。 もうずいぶん時機を過ぎたと思っていたのだが、いまだに注目を集める話題だったとは。

その中でのコメント:

「放蕩息子の帰還」の説話が広がるといいのですが……(クリスチャンじゃないので、間違っていたら不適当だったらごめんなさい)

放蕩息子とは新約聖書にあるたとえ話である。「放蕩」とはあまり聞かない単語だが、 広辞苑によると

放蕩
ほしいままにふるまうこと。特に、酒色にふけって品行が修まらないこと。放埒(ほうらつ)。道楽。「—して家を潰す」「—息子」

ということで、「どら息子」という感じか。

聖書にはたとえ話がたくさん出てくるが、どれも素晴らしい。 このたとえ話も鑑賞してみよう(ルカによる福音書15章)。

基本的には「失ったものが返ってきた時には喜びがある」というテーマである。 参考となる知識は以下の通り。

  • ユダヤ人は戒律により豚を食べない。よって豚を飼うのは基本的に異邦人であり、 ユダヤ人にとっては最下層の職業。
  • 兄が非難されているようにも読めるが、実際は兄は立派な人物である。 ただ、弟に対しては不寛容であった。 彼が弟のことを「このあなたの子」と呼んでいることからも察することができる
  • 一般には弟は「罪人」、兄は「パリサイ人(or ユダヤ教聖職者)」と解釈されることが多い。 ここで「罪人」とは、戒律に厳密に従っていない人という意味。

これを今回の人質騒ぎに適用すると、「とりあえず助かってよかったね」ってことですか?

_ [教会]『あなたの宗教は何ですか?』

夜、なにげなくNHK教育の「ハングル講座」を見ていた。

おととしの戦隊モノの悪役だったお姉さんが出てたり、 今年の仮面ライダーのお姉さんが出てたりして、最近は特撮の地位が向上したなあ、 などどぼ〜っと見ていたのだが、韓国人女生と日本人らしい男性の登場するスキットの内容に すこし(いや、かなり)驚いた。

韓: あなたの宗教は何ですか。
日: 特に宗教はありません。あなたは。
韓: 私はキリスト教を信じています。あなたはキリスト教について知っていますか。
日: ええ。
韓: じゃあ、今度教会に行きませんか。
日: はい、明日一緒に行きましょう。

なんとストレートな。前から韓国は日本よりもクリスチャンの割合が多い(1/3くらい?)とは 聞いていたが。

フラビージョは「このふたりいい感じですね」などとコメントしていたが、 案外それは当たりかもしれない。 彼は魅力的な女性に誘われたから教会に行く気になったというのは、ありそうな話だ。

しかし、たまにはストレートなアプローチも見ていて気持ちがよい。

あなたの宗教は何ですか。

キリスト教について知っていますか。

今度一緒に教会に行きませんか。


2004年05月08日 [長年日記]

_ オープンソースアクティビズム

念のため、前の家のポストをチェックしてみると郵便が入っている。 転居届は引っ越し前に出したはずなのになぜか。

DMなどに混じって、Linux Magazine 6月号も届いていた。

こちらではつい先日「自己責任」の話をしたばかりなのに、 安田幸弘さんの「オープンソースアクティビズム」ではすでに自己責任の話が取り上げられていた。

いかに世間に遅れてるかってことだな。 それだけ遅れてても熱いツッコミを引きつけるのだから、ホットな話題であったわけだ。

さて、6月号が出たということは7月号の原稿を書かねばならないわけだなあ。


2004年05月09日 母の日 [長年日記]

_ [家族]母の日

5月の第2日曜日は母の日である。両親を大切にしよう。

山口の義母には花を贈っておく。私の両親は昨日浜松に着いたばかりのはずで、連絡先がまだ不明である。 せめて思い出すことにしよう。


2004年05月10日 [長年日記]

_ [PC]VAIO Type U

新VAIO Uが登場した。 「VAIO Type U」という名前だそうだ。 最近ノートの調子が悪いので、魅力的に見える。 実際U101もあまりキーボードは使ってなかったし。

が、800x600はちょっと狭い気がするのと、VAIOシリーズはLinuxでの動作に不安がある。 やっぱ、次、買うならThinkpad X31(かその後継機)くらいかなあ。 X40も新しいのは悪くないんだが、大きさよりもパワーが欲しい気がする。


2004年05月11日 [長年日記]

_ Winny開発者、逮捕

昨日の話題だが、これが報道されてからずっと考えていたのだ。

Winnyを使ったことはないが、著作権侵害のファイル交換に用いられていたのは事実だろう。 が、個々のファイル交換の行為者が法律に違反しているとして、 その違法行為に使われたソフトウェアの開発者が「幇助」で逮捕されるとはどういうことか。

朝日新聞の報道によれば、

「Winnyはすばらしい技術。開発したことだけで立件したわけではない」−−。京都府警の阿波拓洋・生活安全企画課長は10日午前に開かれた記者会見でこう強調した。府警が立件に踏み切った背景は、金子勇容疑者の著作権法に対する挑発的な態度だった。

(強調はまつもとによる)のだそうだから、ソフトウェア開発そのものが問題ではないらしい。

ではなにが問題か。

「著作権侵害を蔓延させようという意図」をもって「違法行為に使われるソフトウェアを開発」したことか。 これらが両方同時に成立すれば、立件される可能性があるのか。

たとえば、私が「現在の日本の著作権法は間違っている。 インターネット時代に適合するためこれは正すべきだ」と挑発的な態度だったとして、 著作権侵害にRubyが使われたとしたら、 Rubyも違法行為に(も)使われるソフトウェアであると見なされ、私も幇助になるのか。

もし、そうならないとしたらその違いはなにか。 あるいはビデオデッキやテープレコーダーが合法でWinnyが違法である違いはなにか。

違法行為は取り締まられるべきだ。私自身は法律に違反すべきではないと考えている。 悪法は直されるべきだとは思っているが、法は法だ。

しかし、ソフトウェアあるいはツールの開発は、 それが法律で明確に禁止されているのでなければ違法であるべきではない。 また、人の生命に直結する武器・兵器を除いて、よっぽどのことがないかぎりは非合法化されるべきではない*1

ところで「府警が立件に踏み切った背景は、金子勇容疑者の著作権法に対する挑発的な態度だった」って、 朝日新聞の言葉、もし本当ならかなりまずいんじゃないかと。日本国憲法には

とあるのだが。法治国家としてはゆゆしき事態では。

追記:

ところで、「著作権法における罰則規定の概要」によると、今回「著作権侵害」とされたであろう

  • 著作権等の侵害
  • 営利を目的として権利管理情報の改変等

などは親告罪である。では、著作権侵害幇助は親告罪か。もしそうなら訴えたのは誰か。

*1  そういう意味から、私は前回の著作権法の改正には反対だ

_ Winny思考実験

先にも書いたように「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」は憲法でも認められた基本的人権だ。

たとえば、私がこの「言論の自由」を保障するために、 完全匿名を実現するP2Pベースの(そうでなくてもよいけど)掲示板ソフトウェアを開発したらどうだろう。 私の目的は基本的人権の追求であり、なんら恥じるところはない。

しかし、そのようなソフトウェアができたら、メッセージに混じって、 現在Winnyで流通していたような著作権侵害のデータが流通する可能性はある。 いや、きっとそうなるだろう。

そんな状況で、そのような著作権データが流通している事実を知りながら、 言論の自由の方が大切だからという理由で、開発を(2年間に236回くらいリリースして)継続したら、 それは著作権侵害幇助として立件されるか。

その時、私がうっかり、「そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて現在の著作権に関する概念を変えざるを得なくなるはず」とか発言しちゃったら立件されちゃうのか。


2004年05月12日 [長年日記]

_ [OSS]ネタブラカダブラ「オープンソース」

My Human Gets Me Bluesより。

NHKによる子供向け情報教育ページ「ネタブラカダブラ」が その22話でオープンソースについて扱っている。 NHKがこんな風に扱ってくれるとは時代も変わったものだ。 おおむね適切な表現に涙ぐみそうになる。

【オープンソース】
自分で作ったソフトの「ソース」を無償で公開し、多くのユーザーに自由に使ってもらって、こうすれば使いやすくなるという提案やバグを報告してもらったり、プログラマ同士が「ソース」を改良し合うことで、より優れたソフトを生みだそうという考え方。

うちの子に読ませて、「これでお父さんのやってることが分かった?」と尋ねると、 「だいたい」とのこと。その後、「どうしてソースを隠しちゃう人がいるの?」と聞いてきた。 「お金のためだよ(笑)」と答えつつ、 そうそう、ソースは公開して助け合うのが「普通」なんだよな、と改めて認識する。

_ ソフトウェア自由の危機

昨日のWinnyの件でツッコミをもらう。

まずは、babieさん

明日の各紙朝刊にのると思いますが、「大阪のほう助事件参考に立件判断」<http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004051100113&genre=C1&area=K00>だそうです。立件の背景ですが、朝日新聞の「挑発的な態度」と、この記事の最後の「故意と加罰性」では同じ内容でもニュアンスが変わってきますね。

蛇足ですが「特製Winnyで摘発逃れか」<http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004051100115&genre=C1&area=K00>という記事もあり、この疑いが事実だとすれば、47氏が逮捕早々から弱気だったのも頷けます。ネットワークにおける自由の行方を占う事件だけに、いやな材料です。

昨日の私の文章は基本的に疑問文である。私は知りたいのだ。 なにが幇助でなにがそうでないかを。なにが言論の自由でなにが制限されるべきものかを。 あるいは今回の件はソフトウェアの自由に関係があるのかないのかを。

私は47氏が特製Winnyを使っていたかどうかはあまり関心がない。 それは「著作権侵害の摘発逃れ」を意図したものであって、 もし彼が著作権侵害をしたというのであれば、 その法律違反にしたがった処分を受けてしかるべきだ。

私が関心があるのは、なにが幇助にあたり、なにがそうでないかだ。

プリペイド携帯電話は犯罪に利用されることがある。 携帯電話会社はそのことを認識しているはずだ。 これは幇助にあたのか。少なくとも可罰性はないらしい。 プリペイド携帯電話に犯罪以外の用途がたくさんあるからか。

ビデオデッキは著作権侵害に利用されることがある。 電機メーカーはそのことを認識しているはずだ。 これは幇助にあたるのか。少なくとも可罰性はないようだ。 ビデオデッキに犯罪以外の用途がたくさんあるからか。

暗号化ソフトウェアは犯罪に利用されることがある。 これは幇助にあたるのか。アメリカではZimmermanが戦った(幇助の罪ではないけど)。 日本ではどうなのか。

今回の件がhinaさんのおっしゃるように、

ただ、違法な用途の為にその道具を作って違法な使い方を説明して配布したなら幇助に値するという事なのでしょう。

ということであり、Winny固有の事情によるものであれば、それはそれで問題ない。

しかし、私自身は確証のないうちから、

だとしたら、法治国家としてこれを放って置かないのは当然です。力ずくの自己主張が力で封じられるのも当然だと思います。 それだから、私は法改正の言論が封じられたという印象は持てないし、日本が危ういとも思えません。

<中略>

この件をきっかけに、この国の自由が危うくなるんでしょうか。 とてもそうは思えません。

と安心してしまうことはできない。

だからこその思考実験である。

違法なことにも利用できる完全匿名のメッセージ交換システムの開発は幇助になるのかならないのか。 その特性から管理も責任の追及も不可能な場を存在させてしまうことは、その行為そのものが罪なのか。

_ 時限くん

「〜あらゆるデータを3分後に自動消滅させます!〜 情報漏えい・著作権保護関連の新機軸技術ソリューション」なのだそうだ。

一体どういう技術によって実現されているのだろうか。

開発会社には「デバイスドライバ開発のトップカンパニー」がいるようなので、 Windowsに組み込むドライバの形で実現しているのだろうか。

だとすると、この技術が適用されたファイルをLinuxやOS Xに持ち込むと動作しない?

だとすると、LinuxやOS Xの開発者はこの技術を回避する手段ということで、 Linusたちは著作権法違反(非親告罪)で検挙されちゃう?*1

*1  しつこすぎたか


2004年05月13日 [長年日記]

_ Google AdSense

〆切前の逃避行動で、今日から導入してみたのだが、昨日のエントリに対して

  • お香典返しのコツ教えます
  • 葬儀の返礼品全国無料宅配

とかの広告が出るのはいかがなものか。

やはりアレか、「人の生命に直結する」なんて書いたせいか。

_ [テレビ]『鋼の錬金術師』第31話

すいません。遅れてます。

録画しておいたものをようやっと見るが、えー、なんなんでしょう、 完全に独自路線ですか。なんか原作での謎があっさり明らかになったり、 出てこない超重要キャラクタとかいるんですが。

子供がアニメをまじめに見るようになるまで、ずいぶんアニメを離れていたのだが、 その間にこういうのは普通になってしまったのだろうか。

漫画とテレビの乖離としては、

  • 打ち切りなどの理由で原作の一部しか映像化できなかったもの(例『ドン・ドラキュラ』)
  • 原作ではなくむしろテレビの漫画化(例『サンダーマスク』)

などは思い至る*1が、 この『鋼の錬金術師』はそのどちらにもあてはまらない。 原作よりもペースが速く(漫画は月刊だものな)、 しかも原作とは独立の作品にしあがっている。 しかも、個人的な感想では原作に負けないくらいストーリーが面白い。 というか、スピード感があってこっちのほうが好きかも。

って、また前回前々回と同じこと書いてる。

*1  例が古くて偏っているのは、ほら、年寄りだから


2004年05月14日 [長年日記]

_ [Winny]日経ネット「識者の反応

記事の日付は11日だから、私はあいかわらず見つけるのが遅い。

識者とされたのは以下の方々。

賛成反対いろいろあるが、それは立場の違いとしておおむね理解できる。

中川氏、藤原氏はソフトの開発には責任が伴うという意見を持っておられるようだ。 特許のときにもあったが、個人的な趣味の延長線上だったソフトウェア開発が、 インターネットなどの手段によってかつてなかったほど広く流布するようになった現代においては、個人を対象に、 従来では企業などだけに求められてきた責任が要求されるようになっていることを示しているのかもしれない。 特許も著作権も「私的利用」に対しては(影響が軽微であったので)規制が緩やかであったが、 いまや個人の行動も無視できない影響力を持てるようになったと。

個人的には技術によって社会が変化しても、従来通り社会は個人を保護すべきだと考える。

社会秩序とか権利者の立場からは許容できない(したくない)変化だろうし、 そのような立場からは我々の希望は「甘え」にしか聞こえないのかもしれない。 ここにも「新しい文化との軋轢」があるように思える。

しかし、どうかと思うのは、ITジャーナリストである津田氏の発言である。

ユーザーの大量摘発が困難な以上、事態を沈静化させるためには、秩序を守るべき立場にある警察が作者を逮捕するしか方法はないと個人的には思っていた。先日、京都府警の巡査がWinnyを利用して捜査上の機密書類を流出させるという事件が起こったが、今回の逮捕はこれと無関係ではないだろう。ソフトウエア開発が著作権侵害ほう助にあたるかどうかは議論の分かれるところだが、警察の真意はこの事件の立件よりもWinnyネットワークそのものを無力化することにあるのではないだろうか。

あるいはインタビューの内容が正しく要約されなかったのかもしれないが、 この文章を読むと「100万人逮捕するわけにはいかないから、一人を幇助で逮捕する」、 「社会秩序を維持するために警察は逮捕を利用した」としか読めない。 しかも、彼は「摘発するしかないと思っていた」と、それに否定的なニュアンスはない。 この警察の行為を正当なものと考えているのだろうか。

いくらなんでも、それはまずいんじゃないだろうか。 警察は秩序を守るために逮捕するんじゃなくて、犯罪者を確保するために逮捕するはずではないかと。 津田氏の真意がどこにあるのか。

もしかしたら、この文章は「警察はこういう動機で動いた」ということを解説しただけで、 彼自身はそれを肯定するつもりはないのかもしれない。 もし、日経の記者がそのニュアンスを書き落としたのだとしたら、それはそれで問題だなあ。

追記:

彼自身は今回の逮捕に賛成している訳ではなく、 日経ネットでの文章は「警察には警察なりの理由があったんだろう」と 言っているだけだと思います。

というツッコミをもらいました。 薄々そうではないかとは思っていたのですが、 「それならそれで(日経は)問題だなあ」という意見の方は変わりません。

_ [テレビ]原作と乖離したアニメ

いろいろあるんですね

『ジャイアントロボ』は漫画化されたものを読みました。 光輝キャラ総出演で楽しかったです。これもアニメとは違うんでしょうね。

デビルマンは、 「原案: 永井豪」でアニメと漫画は独立に作られたのではなかったかな。 で、永井豪が暴走(いや、良い意味ですが)してしまったと。

そういうのは多いですよね。例に挙げた『サンダーマスク』もそうですが。 ちゅーか、こっちは設定からなんから全部別物で、一致してるのはタイトルだけか。

_ [OSS]オープンソース開発モデルの泣きどころと強み

ITmedia Enterpriseの記事から。

まあ、オープンソースが万能だと主張したことはないんで、 「泣きどころ」があるのも否定しないんだが、 この記事には同意できない点がいくつもあった。

典型的なオープンソースプロジェクト開発戦略はフリーソフトウェアには有効だが、商用製品の開発ではうまくいかないと指摘する専門家がいる。

「オープンソースプロジェクト開発戦略」を「商用製品の開発」に適用するというのは どういうことかと。これは「バザールモデル」は商用製品の開発に向かないということか。

オープンソースプロジェクトに提供できるのは、基本的にコードとバグ報告とパッチに限定されているからだ。

だれだ、そんなことを言ったのは。大嘘だよね。

多くのプロジェクトでは仕様をどうするかという点でも話し合われているし、 その話し合いに開発者しか参加できないなんてこともない。 「コードとバグ報告とパッチ」は大いに歓迎されるが、限定されているわけではない。

一方、同意できる点もある。

Eclipseがオープン化した途端に、開発者はFOSS開発のギブアンドテイク主義に適応することが求められたという。

すなわち、開発者は毎日時間をかけて、ニュースグループの記事を読んだり、ニュースグループに投稿したり、ユーザーに説明をしたり、デモを行ったりすることが求められたのだ。また、ユーザーからのフィードバック(機能に対する要求など)をチェックしたり、提出されたパッチや機能改善を検討したりする必要もあった。

そう、オープンソースソフトウェアのメンテナンスにはとにかく時間が取られる。 Riteの開発がなかなか進まないくらいに(言い訳モード)。

_ [原稿]Linux Magazine

Linux Magazineの原稿。7月号のテーマはeruby、amritaをはじめとするテンプレートエンジン。

『Ruby開発日記』の方は、「ソフトウェア開発者の責任」というテーマでWinny事件について....

書こうと思ったのだが、怒りにまかせて半ページほど書いてやめた。

7月号が世に出る来月上旬までには状況がそれなりに変わっているだろうし、 もうちょっと考察が必要そうだ。 特にインターネットやオープンソースなどに代表される社会の変化と 従来の社会秩序との折り合いとかについて。

_ [Winny]サービス提供者

broomさんのツッコミについてちょっと考える。

すみません。先ほどのつっこみ、分かりにくかったと思いますが、要約すれば、『Winny開発者が、Winnyを配布していた点につき、著作権侵害に継続使用されていたサービスの提供者にあたるかどうか』という点が、問題になるのでは?ということでした。ご理解いただければ幸甚です。

たとえば、以前「ファイルローグ事件」があって、ファイル交換サービスを提供していた日本MMOに6689万の損害賠償命令が出されている。

ここで、日本MMOが管理主体であったことについては、中間判決で、

日本MMOが著作権侵害の主体か否かという点では、実際に複製されたMP3ファイルが保存されているのがユーザーのハードディスク内であり、日本MMOの中央サーバーにはインデックス情報しかなかったとしても、交換を行なうためには、日本MMOのサーバーを利用し、日本MMOが提供するクライアントソフトが必要であるため、日本MMOが著作権法の自動公衆送信権と送信可能化権を侵害している主体と認定された。つまり、実際に違法MP3ファイルをやり取りしていたのがユーザーであっても、それは日本MMOの管理下で行なわれていたと判断された。また、広告を掲載していたことや、有料化の予定があったことにも触れられ、日本MMOが利益を上げるために、送信者にMP3ファイル交換をさせていたと判断された。

とある。要約すると交換には

  • 日本MMOのサーバ
  • 日本MMOが提供するクライアント

が必要で、

  • 日本MMOが利益を上げるために、送信者にMP3ファイル交換をさせていた

から侵害の主体は日本MMOという主張だ。やや無理があるが、納得できないことはない。

では、47氏についてはどうか。

  1. 彼は著作権侵害の主体になりえるか

    無理だろう。確かに交換には「彼の作ったクライアント」 が必要だが、それ以外については成立しないのだから。

    だから彼は著作権侵害の主体ではありえない。 実際に彼は著作権侵害の罪ではなく、 幇助という罪で逮捕されているのだから、 その点については京都府警もそう考えているのだろう。

  2. 彼がサービス提供者とみなされるか

    もし彼がサービス提供者で、Winnyで利益を上げるつもりだった(広告を掲載するとか、有料化の予定があったりとか)ならば、 判例があるのでクロ。だが、そうではない。

    しかし、冷静に考えれば、Winnyクラスタをひとつのサービスとみなすならば、 サービスの提供者はWinny利用者ひとりひとりであるはずだ。 開発者であるといえども、どのようなファイルが交換されているかのインデックスを持つわけでもない。 P2Pでは個別のサービス提供者を特定しにくいという理由で、 特定しやすい開発者をサービス提供者とみなすのは間違い。

    どうしてもそうしたいならば、P2P禁止法を作り、日本をP2P暗黒国家にするしかない。 その場合でも法律制定前の違反は罪ではない。

  3. 彼の開発意図が著作権侵害なのか

    こればっかりはわからない。

    しかし、たとえ彼が開発動機が「現在の著作権のあり方に対する疑問」であって、 自分のソフトウェアによる著作権侵害を容認していたとしても、 他の人が行った著作権侵害に対する幇助として適用するのは思想統制の可能性が強い。

だからこそ、この件については注目を続けなければいけない。

権利者の横暴なのか、社会秩序のための必要悪なのか、 当然かつ正当な規制なのか、圧政の始まりなのか。

将来、日本を捨てなくてすむことを願ってやまない。

追記:

「特定しにくい」ではなく、「特定出来ない」とした場合も同様の結論となりますか?

というツッコミをもらった。 私なら同じ結論を出す。完全匿名の実現を禁止したP2P規制法が出来ない限り。

が、完全匿名の禁止はプライバシー権や言論の自由の封殺でもあり、 そのような法律には反対だし、そもそも憲法違反の疑いがある。

憲法違反の疑いがあってもなあなあで世の中が回ってしまう国であるけれど、この国は。

_ ネタブラカダブラその後

私が紹介したことを取り上げてくださるのは嬉しいが、 私の名前は「ゆきひろ」であって、「ゆきお」ではない。 しばしば「ひろゆき」と間違えられるが、「ゆきお」は久しぶりだな。

「ゆきお」は私の父の名前だ。

_ [Winny]「開発者逮捕は不当」 ウィニー事件で弁護団結成

今日はたくさんのツッコミをいただいたが、 当然私は法律家ではないし、素人なのでなにも断言できるものはない。 私がWinnyについて書いた文は、基本的に疑問の提示と意見の表明にすぎない。

弁護団がきちんと結成されたからには注目し続けることにしよう。

あと、津田さんご本人からもコメントをいただいた。 警察の行為を正当化する意図はなかったとのことで、 結局、表現だけの問題と分かった。限られた文章でニュアンスを表現するのは難しいので、 しかたがないのかもしれない。

それに私だって同じことだ。私の文章も 津田さんへの一方的な非難に読めないことはない。


2004年05月15日 [長年日記]

_ メゾン・ボルデロー

先月まで住んでいたアパートは「メゾン・ボルデロー」などという大層な名前がついていた。 入り口には「MAISON BORD DE L'EAU」と書いてあった。いかにもフランス語っぽい。

なんという名前だろうと思いつつ、ずーっとそのままにしていたのだが、 今日になってふと調べてみた。

「MAISON BORD DE L'EAU」は「MAISON AU BORD DE L'EAU」と書かれることの方が多いようだが、 「house at the edge of water」という意味だそうだ。建物の名前として登場しているらしい。 フランス語は読めないし、機械翻訳は信用できないので当て推量だけど*1

確かに川沿いに建っていたあのアパートに「水際の家」という名前はふさわしいかも。

良かった、とんでもない名前でなくて。「王侯貴族の屋敷」とかだったらどうしようと心配していたのだ。

*1  とか書いてるとenbug diaryあたりで突っ込まれるかも

_ かずひこさんと食事

アパート探しで松江に来ていたかずひこさんご夫妻と食事。 玉造の味皆美ふじな亭で。

楽しい時間を過ごさせてもらった。なかなか初々しいカップルである。 が、息子はずっと眠っているし、娘たちは行儀が悪いし、 かずひこさんたちは私たちにどういう印象を持っただろうかとちょっと心配にならないでもない。


2004年05月16日 [長年日記]

_ [教会]岡山

岡山で会議。乗せてもらったのでずいぶん楽。 最近は楽してるなあ。

会議では、組織の円滑な運営についてとか、 適切な動機づけなどについて話し合う。 が、なかなか具体的な行動計画に結びつかない。

というか、たぶん私がドラスティックなものを求め過ぎてるんだな。 地道な努力を軽視してはいけない。

(抽象的でごめんなさい)


2004年05月17日 [長年日記]

_ [OSS]「オープンソースカンファレンス2004」 開催のお知らせ

びぎねっとの宮原さんからメールをいただく。

9月4日(土)に「オープンソースカンファレンス2004」というイベントを開催するのだそうだ。

つきましては、Rubyの人たちにも出展やセミナー、BOFなどで参加していただけ ないかと思っております。この手の話について窓口になっていただける方をご紹 介いただけないでしょうか。

ということなので、紹介しておく。宮原さんには以前お世話になったしな。

追記:

なんか寝ぼけてたらしい。

紹介って「オープンソースカンファレンス2004」をこのページで紹介することじゃないじゃん。 「窓口になってくれる人」ってちゃんと書いてあるのに。私の目は節穴です。

で、誰か窓口になりませんか? 日本Rubyの会?


2004年05月18日 [長年日記]

_ [OSS]メールオーガナイザー

〆切が終わったので、なにかまとまったことをはじめようと決心する。 ここ10年、Rubyの世話ばかりしていたので、 「なにか新しいことをはじめる力」は確実に鈍ったような気がする。 1日程度で片づく仕事に関する能力は向上しているように思うんだけどな。

新しいことをはじめるためには、何日も集中を続ける必要があるんだけど、 それだけの集中力を維持できない。歳とったかな。

で、まずはメールオーガナイザーのために下調べ。 先日来、ごみ以外のメールを削除していないので、だんだん今までのソフトウェアでは切迫してきたのだ。

いろいろ調査を行うが、自分が物を知らないのにあきれる。 そうか、検索というのはこうやって行うのか。とか、特徴的単語の抽出方法とか。

できれば車輪の再発明は避けたいので、 既存のものも調べる。

基本的には、以下のような条件を満たす全文検索エンジンがあれば良い。

  1. インクリメンタルにインデックスを追加できる。
  2. メールの削除に対応できる(できれば)
  3. TF・IDF法などで特徴的単語が抽出できる(類似メール検索のため)
  4. 日本語に対応している

候補に挙がったのはGETANamazuMairixなどだ。

機能が一番そろっているのはGETAだ。 インデックスさえ用意できれば、ほしい機能は全てある。 ただ、これはインクリメンタルなインデックス操作はできないらしい。 毎回巨大なfreqファイルを作るのは避けたいなあ。

些細だが、OSD準拠でないライセンスもできればなんとかしてほしい(単なる要望)。

4. あなたは、本ソフトウェアを原子力関連、航空管制その他の交通関連、医療、救急関連、警備関連その他人の生命、身体、財産等に重大な損害が発生する危険を有するシステムに使用してはいけません。

付則1. 本ソフトウェアを利用して、インターネット上での交換検索サービス等を実施する場合には、その入り口となるようなページなど、通常利用者の目に触れると考えられる位置に下のロゴマークを掲示し、「IPAが開発した本ソフトウェアを利用している」旨を明記しなければなりません。

類似のライセンスだったGalatea Projectも ライセンス変更したことだし。

Mairixも面白そうだが、日本語には対応していないし、 対応させるのも簡単ではなさそうだ。

となると、Namazuベースか。特徴的単語の抽出とかできたかな。 ファイル削除に対応していないのは暇な時にインデックスを作り直すことで対応できるか。

できれば自前で作るというのは(楽しそうではあるけど)やめたほうがよさそうだ。


2004年05月19日 [長年日記]

_ [OSS]P2Pによる配布

スラッシュドットによれば、 このほどリリースされたFedora Core 2はBitTorrentでも配布 されているらしい。

以前、Ruby 1.6.8をリリースした時に、大量のダウンロードにうちの会社の回線が使いつくされたことがあって、 それ以来、あらかじめミラーを用意して、リダイレクトしたりと 工夫(苦労)していたのだが、1.8.2のリリースはこの手を使ってみようかなあ。


2004年05月20日 [長年日記]

_ [OSS][morg]メールオーガナイザー

「メールオーガナイザー」というのは、単にメールをオーガナイズするツールのつもりで呼んだので、 「その名はメールオーガナイザー」 などと期待されてしまうと、当惑する。

しかし、プロジェクトには名前が必要だ。 10年くらい前(今作ろうとしてるものとは別物だけど)、メールオーガナイザーを作ろうと思った時には、 「MMO」という名前を考えていたのだが、最近のエントリにもあるように ファイル交換の裁判で負けた会社が「日本MMO」だったりして縁起が悪い。

せっかく、「メールオーガナイザー」と呼んでもらったんだから、それを反映するのはどうだろう。

ということで「Mail ORGanizer」略してmorgというのを考えてみた。 ちょっと検索した範囲内では広く使われている名前ではなさそうだし。

名前重要

で、たださん

いきなり検索エンジン探しから入るところがまつもとさんらしいというか(笑)。

と見透かされているように、 私は名前のような表面的なところと、実装の一番奥のところ(だけ)に強く惹かれるんだよねえ。 あとはどうでもいいっていうか。

Rubyでも文法のような表層的なところと、GCとかみたいな奥底とに一番興味がある。

で、morgのバックエンドには、namazuを検討していたのだが、 ちらっとソースを読んだところ各単語のTF・IDF値を得るのは簡単ではなさそうだ。 通常のAPIでは文書スコアとして間接的にしか入手できないみたい。

どうしようかと思っていたが、かずひこさんのツッコミに紹介されている、 Estraierは私の要求を全て満たしているみたい。 これ、以前チェックした覚えがあるんだけど、なんでそれ以上追及しなかったのかな。 なにか不具合が見つかるまでは、これを使うことにしよう。

名前が決まって、バックエンドが決まったら、後はUIか。

当面、アクセスコマンドとcmail(風)フロントエンドを用意するつもりだけど、 UIについてはまだ漠然としたイメージしかない。

検索ベースのMUAは以前にも存在していたらしいけど、今まで使ったことないんだよね。 いろんな人からのUIの提案を待っている。 M2も(Operaを)インストールしてみたけど、いまいちピンとこなかったし。

とりあえず既存のMUAに十分似ていないと使いにくいってことだけは確かだな。

_ [Ruby]新パーザ

最近集中力がないので、ひとつのことを続けてやっていられない。 morgのことを考えていてもすぐ疲れてしまうので、 別のことに手を出してしまう。

で、ここ数日手を出している「もうひとつのこと」がこれ。

結局、再帰下降構文解析を使おうと決めたのだけど、 自分の知識が浅いのに愕然とする。 学生時代もっと勉強しとけばよかった。中田先生、佐々先生、ごめんなさい。

これまた遅々として進まない。

他にもM17NやらGCやら控えてるんだが....。

_ [morg]Why Morg?

以前のエントリにコメントがあった。

最近の Emacs 上のメーラは大抵 Namazu と連携できるので,検索の問題はな いのではないかと思います.

Mew -> mew-nmz.el
Wanderlust -> elmo-nmz.el
Gnus -> gnus-namazu.el

ただまあ,1GB を emacs-lisp で扱えるかというとちょっとアレですが.個人 的には,5年前からの全てのメールを保存・検索できるようにしてあって,結 構快適に使えています.

それに対する私の返答はこれ。

私の使ってるcmailではできないってのは、ツールの問題だけなん ですけど。既存のものでない理由は

  • 私の非力なマシンではフォルダのメール数が2000を越えると反 応が鈍くてやってらんない(これは運用でどうにでもなるかも)
  • キーワードサーチだけでなく、「このメールに似たメール」と いう機能が欲しい

という2点です。

今気が付いたんですけど、gnus-nmz.elはnamazu.elを使ってるんで すね。namazu.elは私が原作なので懐かしい気がしました。旧友に 再会したような。

それとは別に「検索ベース」でMUAのUIを再構成してみたいってのもあるけど。

ところで、ITmediaの「Gmailの新たな障壁? 浮上した“もう1つの特許”」という記事のタイトルを読んで、「げ、検索ベースのメーラーに特許が!?」と心配したのだが、実際にはメールのコンテキストに反応する広告が対象の特許のようだ。

一安心。そういう安易な特許が成立することの是非は置いておくとしても。

_ [OSS]ライバルに差をつけるオープンソースビジネス7つの戦略

japan.linux.comの記事より。

オープンソースをベースにしたビジネス戦略を7つ紹介している。

  • 最適化戦略
  • デュアルライセンス戦略
  • コンサルタント戦略
  • 年間契約戦略
  • パトロン戦略
  • ホスト戦略
  • 組み込み戦略

これは開発者個人の戦略でなく、企業に対する戦略であることに注意。


2004年05月21日 [長年日記]

_ [morg]死体安置所

「morg」からmorgueを連想する人ってけっっこういるのね。そうか、私なんか「岩男<いわおとこ>のモーグ」を思い出してたよ*1

まあ、辞書(リーダーズ英和中辞典)を引くと

morgue
  1. a 死体保管所, モルグ <身元不明死体の確認・引取りまたは剖検など処理が済むまでの>
    b 陰気な場所.
  2. <特に新聞社の> 参考資料集[ファイル], 参考資料室, 調査部; <出版社の> 編集部[室].

だそうなので「参考資料集」なんて気が利いてるかも。

*1  『太陽の王子ホルスの大冒険』。古すぎですな

_ [morg]名前

かずひこさんが名前チェックをしてくださった

ドメインが取られているのには気がついていたが、 sourceforge.netには気がつかなかった。文脈が違う場合には混乱は起きないが、 おなじフリーソフトウェアという文脈だとトラブルが起きそうだなあ。

名前を変えるか。

「mmorg(mega mail organizer)」とか「gmorg(giga mail organizer)」とかでどうだろう。 いずれも発音は同じで。


2004年05月22日 [長年日記]

_ [本]Code Reading

やっと製本に回ったらしい。

目次

Code Reading
序文
はじめに
まえがき
付録CD-ROMについて

第1章 序論
1.1 コードを読む理由と方法論
1.1.1 文芸作品としてのコード
1.1.2 手本としてのコード
1.1.3 保守
1.1.4 進化
1.1.5 再利用
1.1.6 インスペクション
1.2 本書の読み方
1.2.1 表記上の規則
1.2.2 ダイアグラム
1.2.3 練習問題
1.2.4 副教材
1.2.5 ツール
1.2.6 本書の大要
1.2.7 大いなる「言語論争」

第2章 プログラミングの基本要素
2.1 最初に取り上げる完全なプログラム
2.2 関数とグローバル変数
2.3 whileループ、条件、ブロック
2.4 switchステートメント
2.5 forループ
2.6 breakとcontinueステートメント
2.7 文字式とブール式
2.8 gotoステートメント
2.9 小規模なリファクタリング
2.10 doループと整数式
2.11 制御構造再考

第3章 Cのデータ型(上級編)
3.1 ポインタ
3.1.1 リンクデータ構造
3.1.2 データ構造の動的割り当て
3.1.3 参照呼び出し
3.1.4 データ要素へのアクセス
3.1.5 配列による引数と戻り値
3.1.6 関数のポインタ
3.1.7 ポインタによる別名参照
3.1.8 ポインタと文字列
3.1.9 ダイレクトメモリアクセス
3.2 構造体
3.2.1 データ要素のグループ化
3.2.2 関数から複数のデータ要素を返すケース
3.2.3 データ構造のマッピング
3.2.4 オブジェクト指向プログラミングi
3.3 共用体
3.3.1 記憶域の効率的な使用
3.3.2 多態の実装
3.3.3 さまざまな内部表現による操作
3.4 動的メモリ割り当て
3.4.1 空きメモリの管理
3.4.2 動的に割り当てられる配列を持つ構造体
3.5 typedef宣言

第4章 Cのデータ構造99
4.1 ベクタ
4.2 行列とテーブル
4.3 スタック
4.4 キュー
4.5 マップ
4.5.1 ハッシュテーブル
4.6 集合
4.7 連結リスト
4.8 ツリー
4.9 グラフ
4.9.1 ノード記憶
4.9.2 エッジ表現
4.9.3 エッジ記憶
4.9.4 グラフの性質
4.9.5 隠れた構造
4.9.6 その他の表現

第5章 制御フロー(上級編)
5.1 再帰
5.2 例外
5.3 並列性
5.3.1 ハードウェアとソフトウェアの並列性
5.3.2 制御モデル
5.3.3 スレッドの実装
5.4 シグナル
5.5 非ローカルジャンプ
5.6 マクロ置換

第6章 大きなプロジェクトへの取り組み
6.1 設計と実装のテクニック
6.2 プロジェクトの編成
6.3 ビルドプロセスとMakefile
6.4 設定
6.5 リビジョン管理
6.6 プロジェクト固有のツール
6.7 テスト

第7章 コーディング標準と規約
7.1 ファイルの名前と編成
7.2 インデント
7.3 書式
7.4 名前付け規則
7.5 プログラミング作法
7.6 プロセス標準

第8章 ドキュメント
8.1 ドキュメントの種類
8.2 ドキュメントを読む
8.3 ドキュメントの問題点
8.4 いろいろなドキュメントソース
8.5 オープンソースにおける一般的なドキュメント形式

第9章 アーキテクチャ
9.1 システム構造
9.1.1 中央リポジトリと分散型の手法
9.1.2 データフローアーキテクチャ
9.1.3 オブジェクト指向構造
9.1.4 階層型アーキテクチャ
9.1.5 ヒエラルキー
9.1.6 スライシング
9.2 制御モデル
9.2.1 イベントドリブンシステム
9.2.2 システムマネージャ
9.2.3 状態遷移
9.3 要素のパッケージ化
9.3.1 モジュール
9.3.2 名前空間
9.3.3 オブジェクト
9.3.4 ジェネリックインプリメンテーション
9.3.5 抽象データ型
9.3.6 ライブラリ
9.3.7 プロセスとフィルタ
9.3.8 コンポーネント
9.3.9 データリポジトリ
9.4 アーキテクチャの再利用
9.4.1 フレームワーク
9.4.2 コードウィザード
9.4.3 デザインパターン
9.4.4 分野固有のアーキテクチャ

第10章 コードを読むためのツール
10.1 正規表現
10.2 コード閲覧ツールとしてのエディタ
10.3 grepによるコード検索
10.4 ファイル間の差異の検索
10.5 ツールの自作
10.6 コードを読むツールとしてのコンパイラ
10.7 コードブラウザと美化ツール
10.8 ランタイムツール
10.9 ソフトウェア以外のツールや手法

第11章 総合的な例
11.1 下準備
11.2 進め方の作戦
11.3 コードの再利用
11.4 テストおよびデバッグ
11.5 ドキュメント
11.6 講評

付録A 本書に収録したコードの概略
付録B ソースコードの著作者
付録C 本書で参照しているソースファイルの一覧
付録D ソースコードのライセンス
D.1 ACE
D.2 Apache
D.3 ArgoUML
D.4 DemoGL
D.5 hsqldb
D.6 NetBSD
D.7 OpenCL
D.8 Perl
D.9 qtchat
D.10 socket
D.11 vcf
D.12 X Window System
D.13 Ruby
D.14 WideStudio

付録E コードを読むための金言集
E.1 第1章 序論
E.2 第2章 プログラミングの基本要素
E.3 第3章 Cのデータ型(上級編)
E.4 第4章 Cのデータ構造
E.5 第5章 制御フロー(上級編)
E.6 第6章 大きなプロジェクトへの取り組み
E.7 第7章 コーディング標準と規約
E.8 第8章 ドキュメント
E.9 第9章 アーキテクチャ
E.10 第10章 コードを読むためのツール
E.11 第11章 総合的な例

参考文献
索引
題辞
あとがき
著者紹介/監訳者紹介

立ち読みコーナーもある。

_ [生活]D.I.Y.

新しいうちは古いうちなので、あちこち手直しが必要だ。

  • 畑の雑草抜き
  • カーテンレールの交換・設置
  • ドアに留め金を追加
  • ドアの蝶番の交換
  • 蛍光燈の交換・掃除

慣れない作業でなかなかうまくいかない。父親は器用な人なのだが。

_ [テレビ][特許]『特許はだれのものか 〜知的財産をめぐる攻防〜』

先週放映されたものの録画を見る。紹介されていたエピソードは以下の通り。

  • 種苗メーカー、モンサントから訴えられたカナダの菜種農家

    菜種畑に近隣の畑から飛散してきた(と思われる)種が混入していたため、 特許侵害で訴えられた。一審は菜種農家が敗訴。控訴中。

  • レメルソン特許(マシンビジョンとバーコードリーダ)に関する訴訟

    サブマリン特許でマシンビジョンのユーザ(車メーカーとか)を提訴。 laches(ラッチェス、法的怠慢)により、レメルソン側の一審敗訴。 控訴中。

  • インドの伝統的知識の特許化

    インドでの伝統的植物の利用法(ニームという植物の殺菌効果)に対してアメリカ企業による特許が成立。 ニームの買い占めにより価格の上昇。インドでは特許の取り消し。アメリカ特許は依然成立。 同様の問題を避けるため、インドでは伝統的知識(アーユルヴェーダ)をDB化。

特にカナダの農家の話は印象的だ。 彼には落ち度がない(と思われる)のに、菜種栽培を禁止され(仮処分が成立しているようだ)、 損害賠償まで請求されるのは、どう考えても不幸だし、 明日自分に身に降りかかるのではないかという不安さえ感じる。

特許制度そのものを今すぐ無くすべきだとまでは思わないが、 やっぱりどこか間違っている印象を持つ。 違う側面からみると違う印象を持つのだろうか。

コメンテーターは「特許はバランスだ」と発言していた。 正しいバランスはどこにあるのか。


2004年05月23日 [長年日記]

_ [教会]出雲支部大会

年に一度の支部大会。いろいろなことがあったが、ほとんど略。

印象に残ったお話、2題。

私の知人の会社に、SI屋が営業に来た。 ひょんなはずみからRubyの話になり、 知人は「Rubyのまつもとなら知り合いだ」と言う。 営業は「えー、雲の上の人なのに」と驚く。

私は死んでるのか。

もうひとつ。

別の知人(教会では上司にあたる人)の本職は、日本刀の研ぎ師である。

彼は独立する前、7年間師匠について修行したそうだ。 が、この師匠、7年間ちっとも仕事を見せてくれない。 どういうふうに研ぐのか教えてもくれない。 ただ、自分の作品を見せに行くと、「ここは良い、ここはダメ、こっちはまあまあ」と評価だけはしてくれる。 おかげで自分で工夫を編み出す必要があり、えらい苦労したのだそうだ。

7年の修行が終わる時、ひとつだけ「ここはこうするんだ」と奥義(?)を教えてもらえた。 それは5分だった。

...7年で5分かあ。

しかし、自分で創意工夫して学んだことは忘れないので、 これはこれで良かったのだと思う、とのこと。

ソフトウェア業界でも同じやり方で伝授するというのはどうだろう。 7年は修行。師匠の仕事は見せない。 プログラムをもってくると「ここは良い、ここはダメ、こっちはまあまあ」と評価だけ。 自分で創意工夫する。

あ、オープンソースじゃ師匠の仕事がいくらでも見えちゃうな。

オープンソース、ダメじゃん(苦笑)。


2004年05月24日 [長年日記]

_ [特許]モンサント、遺伝子組み換え作物特許訴訟で勝訴

先日話題にしたシュマイヤーシュマイザー訴訟の最高裁判決。

一審敗訴だと思っていたのだけど、二審も敗訴していて、この度最高裁判決が出たということ。

米農業バイオ大手モンサントが、同社開発の遺伝子組み換え作物の特許を侵害されたとしてカナダ農家を相手取って訴訟していた問題で、カナダ最高裁は21日、モンサント側の主張を支持する判決を下した。

えーと、これはどういうことだろうか。

いや、遺伝子組み替え作物に特許が成立するかどうかという命題だけなら(疑問は残るが)理解はできるが、 シュマイヤーさんのような悪意もなく、むしろ被害者と呼ぶべき人物が 「犠牲」になるというのはどういうことだろうか。

私は、絶対になにかが間違っていると思う。特許制度か、(カナダの)裁判制度か、それとも別のなにかが。

もちろんモンサントが多額の費用をかけて遺伝子組み替え作物を開発したので、 それを保護したいという動機は理解できる。が、その扱いを「間違い」、 飛散してしまった(組み替え作物を望まない立場からは「汚染されてしまった」)状況で 汚染被害者を訴え、強制するのはいかがなものか。

特許保護の立場の人による見解が聞きたい。

ちょうど今朝食卓にあったマーガリンがカナダ産(ということは、おそらくはモンサントの遺伝子組み替え菜種に「汚染」されているかもしれない)キャノーラ油から作られていたことは皮肉としかいいようがない。なんとなく口にできなかった。

追記:

KLさんから追加情報をいただいた。

詳細を読むとそれほど無茶苦茶ではない、ということか。まだ納得できない点はあるけど。

報道というのは全部伝えるのはそもそも不可能なのものなので、 あまりそれだけに頼って論評するのも問題だということも意味しているのかもしれない。

ところで、KLさんのツッコミには

特許のせいというより、有事の際の法律を立法者が整備してなかったのが、農家が大会社相手の裁判闘争に脅かされることになった主因じゃないでしょうか。

とあるのだが、これは興味深い。この「有事の際の法律」とは具体的にどのようなものを想定されているのだろうか。 日本でそれを整備することは可能なのだろうか。


2004年05月25日 [長年日記]

_ 報道の表現

先日のシュマイザー訴訟の件ひとつとっても、 どの報道を読むかによって、印象がまるで違う。

たとえば、NIKKEI NET

モンサント、遺伝子組み換え作物特許訴訟で勝訴

【ワシントン=吉田透】米農業バイオ大手モンサントが、同社開発の遺伝子組み換え作物の特許を侵害されたとしてカナダ農家を相手取って訴訟していた問題で、カナダ最高裁は21日、モンサント側の主張を支持する判決を下した。

<中略>

特許の有効性を巡り係争していたのは、モンサントが開発した除草剤耐性を持つ遺伝子組み換えナタネ。カナダ・サスカチワン州の農家が同社に特許使用料を支払わずに組み換えナタネを栽培していたとして、1997年に訴えていた。

モンサントが勝訴した点と、 「同社に特許使用料を支払わずに組み替えナタネを栽培していた」という内容からは、 シュマイザーさんの主張はまるで読み取れない。

一方、HotWiredの記事は、 もっとシュマイザーさんに同情的だ。

遺伝子組み替え訴訟:カナダ農家、最高裁でもモンサント社に敗訴
Kristen Philipkoski

2004年5月21日 9:44am PT  カナダ最高裁判所は21日(米国時間)、農業ビジネス大手の米モンサント社が、自社が特許を保有する遺伝子組み替えカノーラ[食用油をとる菜種の一種]の種を自分の畑に蒔いたとされる農家に対して起こした訴訟で、原告側の訴えを認める判決を僅差で下した。

<中略>

敗訴したものの、シュマイザー氏は個人的には勝利だと述べている。最高裁が今回、同氏は種から利益を得ていないという判断もあわせて下したからだという。シュマイザー氏は、訴訟費用と種から得た利益としてモンサント社から20万ドルを請求されていたが、これを払う必要はない。

「真実はいつもひとつ」なのかもしれないが、それに手が届くとは限らない。 あるいは「いつもひとつ」ではないのかもしれない。

_ [特許]特許の不条理

まったくですな

特許が実におかしなものに思える理由はこういうことじゃないでしょうか。つまり、特許を取った人がやったことや特許そのものを見ることで、それと同じアイディアを模倣した場合、模倣行為に制限がかかったり、お金を請求されたりする。これはまだ分かります。でも、何も見てないのに、真似しようともしてないのに、やったら似たようなアイディアになってしまった、それだけで訴えられる場合があります。そして、こうやって現実に裁判で負けちゃったりするわけです。

見ないで同じものが出来てしまうのであれば、最初の発明者が公開してようがしてまいが関係ないわけで、特許権が及ぶのはまさに不合理ですね。

確かにソフトウェア開発者としては同意できる意見だ。でもって、私の立場からは

逆に言えば、「アイディアを故意に盗んだことが証明できなければ、特許による独占権を発動できない」ことにすれば、特許もそう悪いものではないのかな?

にも同意したい。

でも、権利者の立場から言えば、「それでは盗用して偽装した人による侵害から保護されない」ということになるような気もする。ならば、

  • 公示(or 秘密の開示)される前に同様の発明を行ったことが証明できれば、 その人に対しては独占権を行使できない
  • 公示された特許への総合的な検索手段を無料で提供する

くらいならどうだろう。後者は弁理士の仕事を阻害しそうだが、 特許という権利が有効に働くためにはそれくらい必要な気がする。 現在弁理士の方には国家公務員になっていただくということで(いいのか、それで)。

_ [OSS]疑念払拭へ、Linuxの開発プロセス変更

誰がコードを導入したかの責任をとるプロセスを明確に文書化するというお話。

FSFがコードのコントリビューションに文書を要求するので面倒だと思っていたのだが、 とうとうLinuxもそうなってしまった、ということか。 オープンソースソフトウェアが社会的に重要なプレイヤーになるにしたがって責任も増すということなのだろう。 嬉しくないが、受容しなければならない変化なのだろうか。

とはいえ、Linuxだけでなくすべてのオープンソースソフトウェアにそのようなプロセスが必要、 という話になるとかなりイヤだな。Rubyとか権利関係が(とくに著作者人格権に関して)怪しい部分があるものな。

以前の牧歌的な開発が懐かしい。

_ [特許]特許の問題

nisさんからツッコミをいただいた。

特許は無料で検索できませんか? 特許庁や、US Patent Officeで。

でも、実際に専門家の話を聞くと、無料の検索では十分に見つからないので、きちんと調べようと思うと、結局それなりのコストをかけて弁理士なり知財部門なりに依頼する必要があるようです。たとえ、相当のコストをかけて専門家に依頼しても、たとえば「Rubyのどこかが既存の特許に抵触していないかどうか」という調査が可能かどうか自信がありません。

どうすれば産業や社会に貢献する発明を促せるか、というところから出来たのが発明者の権利を守るための特許法ですよね。そういうルールとインセンティブの構造を作ったうえで、みんなで競争して知恵を出そうと、やってきているのに、「ルールがあるなんて知らなかった、前例があるなんて知らなかった」がまかり通るのでは困りませんか?

私は特許の理念まで否定するものではありません。理想は素晴らしいと思います。

ですから、別に「前例があるなんて知らなかった」と言いたいわけじゃないんです。ただ、「訴えられない確信を得るためのコストが高すぎる」ということです。大企業ならそのコストを負担できるかもしれませんが、個人には無理です。 テクノロジーは個人にパワーを与えているのに、 法制度や経済情勢はますますビッグプレイヤー(大企業とか先進国とか)にだけ有利になっていくのは不合理に感じます。

そもそも既存技術、技術トレンド、他社の研究動向、特許申請状況を把握していないような技術者が、発明ができるようには思えません。

だったら良かったんですが、実際にはソフトウェアの分野では「特許申請状況を把握していないような技術者」が開発したものが、(結果的に発明になってしまって)他社の特許と衝突するケースがしばしばあります。

それは、

誰もが思いつくような発明に独占権を与えてしまうことがあるということが問題であって(FATファイルシステムとか)、発明登録制度自体に根元的な問題があるようには思えません。

ということで、 おっしゃる通り根源的な問題ではないのかもしれませんが、

  • 相当なコストをかけないと衝突しているかどうか十分に調査できない
  • 偶然衝突してしまった時に発生する不幸が大きい
  • 誰でも思い付くような発明に独占権が与えられることがたびたびあるが、それらを無効化するにも相当のコストがかかる

という現状は、特許の理想を達成するよりも、他者の妨害(ひいては人類全体の進歩の阻害)に向かっているのではないかと思います。

また、知財部門を持ち、それなりに調査を行っているはずの企業間でも特許紛争が絶えないことを見ると、 すでに現在、特許申請状況を把握することは誰にも不可能になりつつあるのではないかと感じます。 膨大な数の特許それぞれのクレームの全容(しかもそれらは拡大解釈されうる)を把握し、 自分のプロダクトがそれら全てを侵害していないことを確認することは、確かに困難を極めそうです。 いや、はっきり言って無理でしょう。

もし仮に既存の特許の全容を把握することが不可能なのであれば、すべての開発者(発明者)は、 まだ見ぬ特許権者から訴えられないように祈るよりほか手段がなく、 それは特許の理念からかけはなれたものになるのではないでしょうか。

現状の制度の下でそういう事態を避けるためには、 特許検索の分野で大胆な改革を行うことしか思い付かないのですが。 それでも十分ではないかもしれませんけど。

「誰でも思い付くような特許」が認められてしまうことそのものが、 既存の全ての特許、また公知の全ての知識を検索することが現実的でないことの証拠のような気がします。


2004年05月26日 [長年日記]

_ [特許]権利者との妥協

おくじさんに突っ込まれた

matzさんの意見を読んで、思わず考えてしまったのは「なんでmatzさんが、政策決定をするわけでもないのに、権利者側との妥協を熱心に考えるのだろう?」ってことなんですけど... 実はmatzさんは特許でがっぽり儲けているとか?(笑)

いや、儲けてたらこんなことしてませんってば。

で、私がなんで「妥協」を模索するかというと、社会を変化させたいから。 単なる理念だけでなく実現させたいからこそ妥協点を探っているわけです。

個人的には「特許なんてなくていい」とか、私も思っていますが、 そういうことを主張してくれる人は他にもいるし、 どうもそれを繰り返していても社会は変わりそうにないので、 少しでも「改善」するとっかかりを模索したいというか。

と、思っているので、特許の問題点を指摘するだけでなく、 現行制度から漸近的に変化できる対策を考えたいわけ。

訴えられた側が証明しなければならないようなやり方は、「持たざる者」の負担が十分に軽くならないので、同意しかねます。

んー、そうだよなあ。でも、ここはたぶん簡単には変えられないと思います。 ここ100年以上そうやってきたわけだし。 これは「証明」の方法を広げることで対応できるんじゃないかなあ。 それこそインターネットアーカイブを使うとか。

_ U-20プログラミングコンテスト

昨年までの「情報化・全国月間高校生・専門学校生プログラミングコンテスト」が、 今年からは「U-20 プログラミングコンテスト」として模様替えが予定されている。

今までの

  • 高校生、専門学校生対象
  • 学校参加
  • プログラミング部門とコンテンツ部門の区別

などを廃し、

  • 今後のIT社会に貢献する人材の育成・奨励
  • 新しい技術に挑戦する若々しい意欲と努力の発掘

を目的としたプログラミングコンテストである。日本国内に居住する、 平成17年3月31日時点で満20歳以下の人なら誰でも参加できる。

今年は、実行委員(審査員)にも

も加わっている(石田晴久委員長をはじめ総勢9名)。

内情をばらすと、昨年の「セキュリティ甲子園」の騒動から、 昨年度検討委員会が開かれ(私も委員だった)、 セキュリティ合宿とプログラミングコンテストのふたつを実施することになったというもの。

セキュリティ合宿についてもたぶん別のチームが検討しているのだろう、よく知らないけど。

で、このコンテストの〆切は8月上旬ということで、 今からモノを作るのでは難しいだろうけど、 「これは独創的だ」というモノを持っている若い人は、 ぜひ応募を考えてみてほしい。 バグが残ってても、あるいは場合によっては未完成でも発想に光るものがあれば、 少なくとも私は高く評価するつもりだ。

_ 電車男

アニメオタクに偶然訪れた恋の行方は。

本当かよ、と思うような展開だが、 これをフィクションで書けるなら、それはそれですごい才能だと思う。

東京からの帰りの飛行機の中で読んでいたわけだが、 ノートPCに向かって、読んでる途中吹き出したり、くすくす笑ったりしていて、 近くに座っていたアテンダントのお姉さんに怪訝そうな顔で見られてしまった。

しかし、読み終わって、冷静になって考えると、 はるかな昔のウブで奥手の言語オタクの恋物語(ノンフィクション)を思い出して、 恥ずかしいやら、情けないやら。

そんな私でも今では3人の子供のお父さんです。


2004年05月27日 [長年日記]

_ [Ruby]パーザ制作

ここ数日パーザを作っている。 まずBNFを書いて、それを再帰下降構文解析の関数に置換していく。 1日ちょっとで基本的な部分は出来てしまう。 なんと16段の関数ネストはちょっとどうかと思うが。

あまりスムーズに進むので、「なんでいままでやらなかったの」って感じ。 このペースがいつも維持できると素晴らしい生産性なんだが、 あいにく私ってば、ほとんどの時間はだらだらとあまり活動せず、 ごくたまに「がっ」とコードを書く典型的な肉食獣タイプ。 こつこつ開発できる人とか、継続的に開発できる人がうらやましい。

ところで、パーザの中身はconsだの、appendだの、まるっきりLispなのだが。 構文木はS式(というかcons cellのリンク)になる。

_ [本]「Rubyレシピブック 268の技

届いた。これは初級・中級者に役に立つ本だと思う。

売れるといいなあ。

目次

第1章 Rubyの文法
第2章 文字列
第3章 配列とハッシュ
第4章 ファイルとディレクトリ
第5章 入出力
第6章 数値
第7章 日付と時刻
第8章 環境とのかかわり
第9章 プロセスとプロセス間通信
第10章 CGI
第11章 オブジェクト

「Code Reading」も送ったとのことだが、どうやら引っ越し前の住所に送ってしまったらしい。 近いとは言え、ややこしいことになるか。

追記:

帰宅したら「Code Reading」も届いていた。編集部の人が適切に対応してくださったらしい。 ありがとう。

_ 事務処理

Code Reading」と 「Rubyレシピブック 268の技」の 出版契約書と、 大阪市立大学のワークショップの事務手続きの書類に 記入、記名、捺印、投函を行う。ああ、めんどくさい。なんで私の汚い手書きの字が必要なんだ。 幹事漢字もだいぶ思い出せなくなってるし。全部電子化すればいいじゃん。

どこでも入手可能で認証の役にも立たない三文判を電子化するために、 公開鍵暗号が必要な世の中も間違っている。

追記:

三文判が問題ではなく、 三文判の代替品として、えらいheavy weightのものを要求しちゃう構図がおかしいってことです。

「はんこがなくなった世界」というのも読んでみたいものです。

_ キーワード

昨日、面白かった検索キーワード

  • Scheme 後置記法 書き方

    Schemeのようなのは、一般に「前置記法」と呼ばれると思います。 関数(オペレータ)名が前に置かれるからです。 一般的な演算子式のように、オペレータが中に置かれるのが中置記法、 FORTHやPostScriptのように後に置かれるのが後置記法です。

    学生時代に考えたのは、スタックベースの前置記法です。つまり、 各行を一度読み込んで、逆順にFORTHのように評価します。

    + * 1 2 + 3 4

    のような感じ。戻り値が複数あると破綻しそうですね。

  • Ruby まつもとひろゆき

    間違えないでくださいね。「ひろゆき」は2チャンネル。Rubyの開発者は「ゆきひろ」です。 子供のときから何度間違えられたことか。義理の父にも何度か間違えられてます。

  • 昨日の事故

    どの事故だろう。 うちの両親の事故では、ケガ人はなかったそうです、ご安心ください(絶対違う)。

  • 私はクリスチャン

    お仲間ですか。すがすがしい宣言ですが、Yahooに向かって叫ばなくても。

そういえば、ここんとこGoogle AdSenseが公共広告ばかりなのは、 なにかNGワードを踏んでしまったに違いない。21日あたりが怪しい。


2004年05月28日 [長年日記]

_ 番犬

新しいうちは細い路地の奥にある。路地の入り口の家には犬がいる。

この犬は気まぐれな犬で、機嫌が悪いと路地を歩く人に吠えかかる。 けっこうびっくりする。

宅配業者がうちに電話すると必ず「おたくは犬の家の奥ですね」と確認する。 今日も吠えられていた。

_ 散髪

久しぶりに散髪に行った。暑くなってきたので耐えられなくなったからだ。

今日は意外と混んでいて、数名が待っていた。お姉さんが順番を間違えないように名前を聞きに来た。

お姉さん	「あのー、お名前を」
わたし        「まつもとです」
客A           (当惑した様子で)「まつもとです」
客B           (困惑した様子で)「....まつもとです」
お姉さん      「....(笑)」

だめじゃん。

_ [言語]住商情報システム、プログラミング言語「Curl」の知的財産を買収

住商情報システムが本家Curlをまるごと買い取ってしまったという話

やっぱりCurlは(アメリカでは)ビジネス的には成功できなかったのだろうか。 やはり「言語ビジネスは死屍累々」の1ページを飾るのか。 (過去の例)

戦略として有効そうなのは、言語そのものを売るのではなく

  • 言語はブランド確立のために使う
  • ツール(or サービス、ソリューション)を売る

くらいだろうか。 少なくとも「言語は広まってナンボ」というハードルをクリアするのが難しいということだろう。

ビジネスって難しいなあ。


2004年05月29日 [長年日記]

_ クラックされました

www, ftp, cvsなどを提供しているhelium.ruby-lang.orgがクラックされました。 クラックされたのはnamazu.orgなどと同様に CVSの脆弱性によるものです。アップデートをサボっていました。迂闊。

28日に確認したところ、未知のプロセスがいくつか動作しており、 バックドアが仕掛けられていました。

ただし、helium.ruby-lang.orgではCVSはchroot環境で動作しており、 またバックドアポートへのアクセスもフィルタリングされていました。

ですから、helium全体が侵入されていない可能性はかなり高く、 現時点ではchroot環境外での改竄は発見されていないのですが、 侵入者の意図、目的、手段、技術レベルが分からない現状では安心は出来ません。

現在、スタッフが安全性の確認を行っています。

  • 各メンバのsshキーの確認
  • CVSリポジトリの改竄確認
  • ftpで提供されているrubyの各バージョンのチェック

などはほぼ完了しています。しかし、改竄されていないことの証明は難しいですよね。

作業してくださっているみなさんに感謝します。特に前田くんは金曜・土曜がつぶれちゃったね。

犯人が見つかった場合には不正アクセス法違反に加えて、 (netlab.jpに被害を加えたことで)会社として損害賠償も請求することになると思います。

前田くんたちの単価は高いぞぉ。


2004年05月30日 [長年日記]

暫定的な状態だが、やっと復旧した。これを書いているのは6/5である。

_ [教会]松江

松江出席。家族と一緒にいられるのは祝福である。

心から福音を求めた経験談を聞く。私なんざ、あんまり求めなくても与えられているので、 ハングリー精神に欠ける。

_ [Ruby]Ruby and Unicode

There Ain't No Such Thing As Plain Text」に関連して、 Paul Prescodからメールをもらう。要するに「Prothonはバイナリも格納できる文字列を採用しようとしているようだが、これは間違いだ。それに関してマイクロソフトが日本でどのように(Unicodeを使って)日本語を扱うソフトウェアを作っているのかいくつか質問がある」ということだそうな。

が、この質問に私はこたえられなかった。私も知りたいので、どなたか知恵を貸していただけないだろうか。

Microsoft is a huge promoter of Unicode, and not even full Unicode, but mostly the BMP subset. So I would like to understand how they make Japanese software that is popular.
  • Do they use Unicode?

    マイクロソフトは(日本で)Unicodeを使っているか。

  • Do they layer on encoding tags or something on top?

    エンコーディングを示すタグのようなものを使っているのか。

  • Does Japanese Word support a) just the BMP, b) all of Unicode or c) much more?

    日本語版マイクロソフトワードは a) BMPだけを使っているか b) Unicode全部か c)それ以上か?

  • Can Japanese Word show un-unified Chinese and Japanese characters side by side?

    日本語版マイクロソフトワードは中国の文字と日本の文字を(ユニファイせずにそれぞれの字体で)並べて表示できるか。

  • Can Word import from Ichitaro? If so, how do they manage the extra characters?

    ワードは一太郎から文書をインポートできるか。できるなら、外字をどう扱っているか?

ご存じの方はいらっしゃるだろうか。最初のふたつの質問の答えが「Yes」、「No」であることは容易に想像ができるのだが。

リンク


2004年05月31日 [長年日記]

_ 東京でびっくりした食べ物

NIKKEIプラス1の何でもランキング。

東京のたべものは他の地方とは違うことがあるという話。 こういう話になること自体、東京中心主義のような気もしないでもない。

が、確かにうどんやそばのつゆが黒いのは閉口した。 大学ではうどん屋でも牛丼ばかり食べてたっけ。 自炊しようとしても薄口醤油が売ってなくてねえ。

が、私の実家では桜餅は道明寺ではないので、別にびっくりはしなかった。

「和菓子屋でいなりずしを売っている」のは知らなかったなあ。

リンク先の内容は変わってしまいそうなので、ランキングだけ保存しておく。

  1. そばのおつゆが黒い
  2. もんじゃ焼きを初めて見た
  3. ちくわぶを初めて見た
  4. 濡れせんべいがあった
  5. うどんがシコシコしてなくてやわらかい
  6. すじが牛筋でなく練り物だった
  7. 桜もちのご飯粒がつぶつぶしていない
  8. 肉じゃがの肉が牛でなく豚だった
  9. 青ネギがなく白ネギばかり
  10. 和菓子屋でいなりずしを売っている

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