«前の日(10-20) 最新 次の日(10-22)» 追記

Matzにっき


2003年10月21日

_ [特許]インターネット公知

wakatonoさんから

wayback machineが格納している内容の信頼性を担保する手段/機関がない(ように私には見えます)んできついかと。

との指摘。確かに厳密にはそうかもしれないけど、 実際にはわずかな部数の出版物で公知と認められる例もあるようなので、 意外と芽があるのではと勝手に感じてます。 問題は内容の信頼性よりも、むしろ肝心の時点でarchive.orgがなくなってるかもしれないという不確実性の方でしょうね。

もしかしたら、公知にしたい情報を印刷して(国会)図書館に収めるとかという手が使えるかも。

あ、松田さんの日記の名前、直しておきました。

_ [特許]特許と著作権

もうひとつツッコミから。

上の「他人の自由を奪う」という側面は、特許権だけでなく著作権にもあるのではないでしょうか? 何で著作権は良くて特許はダメなのか?

と、そのべ@こまがわさんからの指摘

なるほど。確かに著作権も特許権も他人の「自由」を制限できるという点では似たところがありますよね。

問題となる違いは

  • 著作権は自然発生するが、特許は(高額の)費用をかけて登録する必要がある
  • 著作権には一部利用(引用)の権利やfair useの慣習があるが、特許にはない
  • 著作物の内容が偶然一致してしまう可能性は、特許に比べて相当低い

くらいでしょうか。けっこうcriticalな違いかも。 特に費用の件は一般に貧乏なオープンソースな人たちには辛い話です。

「特許版GPL」ってのは面白い考えだと思いますが、 現時点での私にはそれが成立できそうには思えませんでした。


2004年10月21日

_ [知財]コンテンツ業界の硬直化が生む最悪のシナリオ

本田雅一の週刊モバイル通信より。

同じようなことを考えている人を見付けてちょっと嬉しい。

もちろん、単に閉鎖的な姿勢を貫くだけでは、将来、テレビ業界が萎んでいく可能性もある。携帯電話のコンテンツ充実や、インターネットの利便性や娯楽性が上がっていけば、必然的にテレビ視聴に使える時間は短くなってくるからだ。その上、コピーワンスによってタイムシフト録画以外の使い方、つまりコンテンツをライブラリとして溜め込んで楽しみたいという視聴者に大きな不便を強いている。

しかし、コンテンツホルダー側だけの論理で作り上げられた仕組みが、ユーザーの利益を生むことはないと個人的には信じている。音楽出版社主導で行なわれている音楽配信サービスは、果たして1曲いくらで提供されているだろうか? B-CASカードが必須のデジタルチューナは1台いくらで販売されているだろう? デジタル放送の一律コピーワンスは、不便を強いる代わりにユーザーに何らかのメリットをもたらしただろうか?

そうした自問自答を繰り返すにつれ、ブロードバンド天国、もっともブロードバンドネットワークサービスの可能性が大きな国と言われる日本は、このままではアドバンテージを生かし切れず、そのうち彼の国に追い抜かれる気がしてならない。もちろん、最悪のシナリオなど誰も望んではいないはずなのだが。

むしろ思い切った自由とメリットを消費者に与えることで開ける世界もあるはずだ。

現在の日本は、むしろアメリカでの動きよりも硬直化していて、未来を感じさせない。IPacがんばれ。

IPacの理念は率直な内容だ。
  1. 考案および発明物の作者は、その成果物の対価を得る権利を有するが、政治的表現の制限、技術革新の拒否、教育と科学研究の制約を行う権利はない。
  2. 知的財産法は、アメリカ合衆国憲法で定めるとおり、新しい創作性を促進する可能性に基づいて審査するべきである(憲法第8項第8条では、「科学および有用な技芸の発展を促進するために、作者および発見者に、その著作および発見物に対する一定の期間に限られた独占的権利を与える」権限を連邦議会に与えている)。
  3. 知的財産法は、誰もが訴訟を恐れずに創作活動を行えるよう、明確かつ明示的でなければならない。

しごくもっともだ。

_ クマデス

島根県警によるクマ出没マップ。 情報公開はいいことだ。しかし、...クマデス、かあ。名前重要。

しかし、同じ情報公開でもこっちはより不安が大きい。うちの子の小学校の近くでも今年3件も「事件」が起きているのが分かる。


2005年10月21日

_ 高感度デジカメ

RubyConfの写真を整理する。ほとんど役に立つ写真を撮らなかった夏のOSCONの反省を活かして もうちょっと数多く写真をとってきた。Martin FowlerやDave Thomasなど有名人とのツーショットなど ミーハー色満載の写真から、ホテルの写真などいろいろ。

しかし、全般に「ピンぼけ」「手ブレ」「光量不足」のものが目立つ。 会場、暗かったものなあ。

こうなると暗さに強いカメラが欲しくなる。 一番魅力的なのはフジのFinepix F10 (F11が出たな)とかZ1 (Z2が出るとか)なのだが、 値段も結構下がってて(3万前後)心惹かれるのだが、 こいつらはメディアがxDカードなのが気に入らない。 これ以上メディアの種類を増やしたくないし。

となると、CASIOのExilim Z500/S500あたりだが、 どうもこれらはISO800くらいで撮るとノイズが乗るような気がする。

被写体ブレは気にしないということで、高感度よりも手ブレ防止機能に着目すると 光学手ブレ防止でLumixが有名だが...パナか...。


2006年10月21日

_ RubyConf 2日目

海外にいる間は、私の時間を世間の時間に同期してくれる「家族」という存在が無いため、 寝る時間や起きる時間が狂いまくる。おまけに時差の関係でSkypeする時間が 早朝とかになるためますます狂う。なんか平均2,3時間しか寝てないような気がする。

Open Classes, Open Companies

test/unitのNathaniel Talbottによるプレゼン。 だが、寝坊して聞きそこねた。

聞くところによると、Rubyとは直接関係なくて Rubyの原則(Open Classとか)をビジネスに適用したらどうなるか(なったか) とかいうような話だった、らしい。

Leveraging Mac OS X from Ruby

AppleのRuby担当者(現時点では「唯一の」らしい)である Laurent SansonettiによるOS Xプレゼン。

っていうか、会場のMac率は異常に高い。 RubyConfやOSCONではMac率は例年高いのだが、 今年はさらに高くなっているような気がする。 プレゼンする人もほとんどMacBookやPowerBookだし。 例外は数人(高橋さん、Evan、私、あともうひとりふたり)くらいじゃないか。

で、RubyからAppleScriptやCocoaを使って iTunesとかをいろいろ操作するデモが受けていた。

こういうのを見てると「RubyでOS Xで(or のために)作られたんじゃないだろうか」 と感じてしまう。実際には私自身はMacユーザだったことはないんだけど。 でも、自宅に一台くらいMacBookがあってもいいかなあ。

安いし(「10万円超は安くないです」と奥さんの声が聞こえるような気がする)。

この後、Laurentとは少し話して、興味深い話が聞けた。

  • Objective-C用のGCはすでに実装がある。Boehm GCではなくAppleが独自開発した
  • conservativeではないのでprotectしてやらなくてはいけない
  • 1.8用パッチは作った。
  • でも、まだNDAを結ばない人には見せられない
  • forkしたくないから将来取り込んでもらえるように調整したい
  • キーワード引数に注目している。Objective-Cのメソッドにマップできるから
  • でも、Hashを使った実装だとうれしくない。Objective-Cだと順序重要だし、重複もありえる。

なるほどぉ。

Rinda and DRb in the Real World

Glenn VanderburgがRindaについて熱く語る。

ここには咳さんがいるべきだったと思う。よろしく伝えてくれとのこと。

よろしく(伝わったかな)。

ここでアトリウムにメールを取りに行ったので、詳細はわからない。 けど、Rindaのことえらい誉めてたよ。

Lightning Talk

Josh Susserによる「More than enough rope to hang yourself」の予定だったが 彼が来れなくなったため、急遽、ライトニングトークに。 しかし、昨日の朝に募集して9件だったか10件だったかが あっという間に集まるというのもなかなか素敵。

しかし、昼飯時からメールの読み書きと原稿書きに追われていたのでほとんど聞けず。

Web 2.0 Beyond the Browser

Rich Kilmerが彼のFlashを使った新サービスについて。

これが本当にWeb 2.0かどうかは私にはよくわからなかったが、 Flashを使ったこれは見ていて美しい。

しかし、彼はこういう見映えがいいものが好きだねえ。

I18n, M17n, Unicode and all that

Tim BrayによるUnicodeの話。

Rubyだめじゃん、というような話かと思ってどきどきしてたのだが、 Unicodeの良いところも悪いところもちゃんとわかっていて、 それをどう取り扱うかというような話であった。

途中「大文字小文字は言語や文化と独立に定義できないからやっちゃ駄目」という発言があって、会場にどよめきが走った。プレゼン後の質疑応答でもそればっかり。

なんでも、たとえばトルコ語では「iの(一対一対応する)大文字」というものは 存在しないのだそうだ。で、どうするかというとロケールを見て、 テーブルをひいて、やたら重たい処理をしなくてはいけない、と。

でも、case insensitiveな処理とかは実際にあるわけで、 それらはどうするのかと聞いたら、

  • 検索インデックスみたいなのは言語情報を使ってテーブルをひく。 インデクシングはもともと重い処理なので問題なし
  • HTMLのタグとか属性名とかはASCIIアルファベットの範囲内だけなので、 その範囲でだけ有効と断言してしまう。範囲外はそもそも無視。

のいずれかだそうだ。他にも正規化などについて尋ねたのだけど、 「万能の解なし」ということで、ケースバイケースで最適なものを選ぶ必要がある という常識的な解答であった。

納得できたので、Stringクラスの大文字小文字を扱うメソッドのRDocに 「ASCIIの範囲だけ有効です」というただし書きを加えた。

Speak My Language: Natural Language Processing in Ruby

ここでの「My Language」は英語のこと。 UnicodeやM17Nの話の直後に英語オンリーの話をもってくるのは なにかの挑戦かと思ってしまいがちだが、 別に狙ったわけではあるまい。

英文を解析してくれるライブラリ。 「Time flies like an arrow」のような曖昧文でも 複数の候補とその重みという形で教えてくれる。

ま、英語処理するときには便利かも。

_ おみやげ

明日は安息日で買い物したくないので、今日のうちにおみやげを手配。

ホテルの売店でぬいぐるみ。 近所のスーパーでルートビアエクストラクトを探すが「ない」とのこと。 隣のドラッグストアでハロウィーン用キャンディー詰め合わせ。 さらに少し行った子供服の店で末娘用のドレスを。半額セールだった。ラッキー。

_ 乾燥注意報

デンバーは乾燥している。 唇が切れてしまったので、日本では使ったことのないリップスティックを購入。 あと、カカトもかさかさになってしまった。

_ [Ruby] implementers' summit

CRuby(私)、YARV(笹田くん)、JRuby(Charles Nutter)、Cardinal(Kevin Tew)、 Rubinius(Evan Phoenix)、その他大勢が集まってミーティング。 なかなか興味深い話ではあったが、デザインの先端、というよりは 1.8の仕様をいかに明確化するか、とか、 1.8でCRuby以外で実装が難しいところをいかに実装依存として分離するか、とかの 話が中心。

Pat Eylerが最後に半年に一回、こうやってミーティングしよう、と wrap upしていたが、我々日本組はどうしたらいいのさ、と思ったのは内緒。 たとえ交通費を手配してもらっても、私は辛いぞ、年に二回の訪米は。

あ、笹田くんに行ってもらえばいいのか。

_ [Ruby] Keynote: Return of the Bikeshed -- or Nuclear Plant in the Backyard.

デザインゲームの話。 Bikeshed(自転車小屋)とは誰もが簡単に口をはさめるため、 いつまで経っても終わらない議題のこと。 が、デザインそのものは面白いネタなので、 いっそ言語デザインそのものを議論することを加速しようというような話。

後で森脇さんに指摘されたが、 もしかすると聴衆は別のタイプの話が聞きたかったのかもしれない。

まあ、いーじゃん、そういう自虐ネタしか話せないんだからさ。

今回はビデオ出力に問題は無かったが スクリプト(台本)用PCが壊れてしまった。やはり呪われている。 台本用PCはBYUの時からディスクが異音を立てていたので不安だったのだが、 案の定だ。 急遽RichのMacBookを借りたのだが、 どうにも見にくくて、大変だった。やはり台本重要。

スライドはこちらビデオもある。 恥ずかしくてちゃんと聞けてない。


2007年10月21日

_ [教会] HT

今日はHTの予定であったが、 先方もまたHTで都合が悪いということで中止。

お忙しくて。 あんまり時間が取れてないことが申し訳ない。


«前の日(10-20) 最新 次の日(10-22)» 追記