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Matzにっき


2004年01月31日

_ [家族]病院

長女が足が痛いということで、病院にいく。 最近は病院もWebページを持っているのね。

結局、体育の時間に足をぶつけて炎症を起こしているだけでしょう、 ということで、湿布をもらう。

_ [映画]『聖杯伝説』

深夜、なにげなくNHK-BSをつけたらやっていた映画。フランス語で字幕。

なんだか、みょーな映画で、 登場人物がト書きを読むし、脈絡もなく歌うし、展開はだるいし。 でも、そのみょーなパワーに引きつけられて夜更かしして見てしまう。

しかし、映画が始まって1時間半以上たってから、

  • フランス語を話す情けなさそーな王様が本当に本物のアーサー王であり、
  • 主人公らしき頭悪そーな若者が円卓の騎士の一人パーシバルである

ことが明らかになるのであった。いや、もっと早く気づくべきであった。 だって名乗らないんだもの。アーサー王たちがフランス語を話すというのも盲点だったし。 ずっとMonty Python系の不条理劇だと思ってた。鈍すぎ?

道理でロンギヌスの槍やら聖杯らしきものが登場するはずだ。 とはいえ、この時点まで映画のタイトルを確認していないのもいかがなものか。

その後、物語はもう一人の円卓の騎士ガウェインを主人公としてしばらく展開した後、 唐突にキリスト受難のシーンになり、 ガウェインの話も、パーシバルの話もなにもかも投げ出して、 エンドクレジットが始まってしまう。決闘はどうした。パーシーはどうなった。続きを見せろーっ。

謎な映画であった。


2005年01月31日

_ [特許]「本当にオープン?」、米Sunの特許無償提供に民間団体が異議

先日、懸念を表明したSunの特許開示だが、 PUBPATも異議を唱えているようだ。

PUBPATは、「Sun社の発表は関連の法律書類と比べてあまりに広範囲だった。Sun社の特許に対して一般(開発者)がどういった権利を持ちえるのかという疑問が残る」と指摘する。「Sun社があとになって特許侵害を追求することができてしまうのかどうか、オープンソース・ソフトウエアの開発者にはっきりと説明するべきだ」(PUBPAT)

PUBPATは意見書で、「どのライセンスを適用すれば安全にSun社の特許を利用できるのか」「Sun社は第三者が記述したソフトウエアに対して特許権の主張を放棄するのか」などの質問を挙げたほか、同社と米Microsoftとの関係が特許やオープンソース・コミュニティに与える影響についても懸念を示した。

PUBPATは開発者に対し、「Sun社の言葉に惑わされないように注意するべきだ。実際に許可される以上のことをSun社が与えてくれていると勘違いしてはならない」と忠告している。

まったくもってもっともだ。

「Matzにっき」はPUBPATを応援します。

_ [OSS] FSFは将来のGPLに対してフリーハンドか

うちのコメント欄でGPL3についての議論が続いている。が、あんまり熱が入り過ぎて、 結城さんにも「長くて読めない」と言われている

今回の議論で登場した危機の具体的な例というのは、私の知る範囲内では

  • FSFがGPL3をBSD様にしたら
  • FSFが「破産」し、資産(GNUソフトウェア)が第三者の所有となり、 フリーソフトウェアではなくなったら

くらいしか出ていないと思う(特許についても危険性がほのめかされていたが「具体的」とは思えなかった)。 これらは確かに具体的ではあるが、正直なところ、間違ってもこれを「現実的な例」とは呼べないと思う。 たとえStallmanがバスにはねられても、FSFがそんな「発狂」した行動を取るとは思えない。 まかり間違ってGNUソフトウェアが「誰かのもの」になったとしても ライセンスは過去に遡って変更できないから、フリーソフトウェアとしてのGNUソフトウェアがなくなることはない。また、フリーソフトウェアにとってあるソフトウェアが途中からフリーでなくなるというような 「攻撃」は過去頻繁に起きてきたたことだ(たとえば最近だとsourceforgeが思い出される)。 FSFがGNUソフトウェアの権利を保持することで、そのような危険性がほんの少し上がるとしても、 FSFが権利関係の調停で忙殺されるデメリットに比べたらゼロに等しい。要はバランスだ。 こんなことをいちいち心配するくらいなら、天から隕石が落ちてくることを心配する方がマシだ。

もうちょっと現実的な例が出てこない限り、 素人同士がいろいろ意見を突き合わせても、 世間に与えるインパクトはゼロに近く、 FSFになんらかの影響を与える可能性もほとんど期待できない。 「茶飲み話」以上の建設的な議論にはならないんじゃないだろうか。

ところで、先週末になってやっと思いついたのだが、 FSFは将来のGPLに対して本当にフリーハンドなのだろうか。

GPLの第9条にはこうある

9. The Free Software Foundation may publish revised and/or new versions of the General Public License from time to time. Such new versions will be similar in spirit to the present version, but may differ in detail to address new problems or concerns.

つまり、新しいGPLは現在のGPLに対して「similar in spirit」であると宣言されている。 であれば、FSFは新しいGPLを「GPLの精神の合致したもの」とする (たとえば単純なBSDライセンスにするような類の変更を行うことはしない)、 と約束していると考えてもよいのではないか。

その結果、将来のGPLがライセンサ(ソフトウェア権利保持者)の視点から、 「現在のGPLの精神と類似でない」と感じられたら、 「それはlater versionとは見なさない」と(後から)宣言できるような気がする。 権利がFSFに移行しているGNUソフトウェアの場合と違って、 単にGPLを適用しただけのソフトウェアの場合には、 FSFは様式を定義しただけの第三者なので、強制力は持たないはずだ。

「契約としてはいいかげん」というのは認めるけど、 「双方誠意をもって対応する」なんて平気で書いちゃう契約も結構見かけるし、なにより、 少なくとも日本の法律ではGPLはまだ「契約か、権利の不行使宣言か」すら弁護士でも判断できないレベルのはずだし。

より明確にするならば、「any later version, unless the author refuses explicitly」とでも書くか。 特にお薦めはしないけど。


2006年01月31日

_ [OOP] サブジェクト指向

小飼さんも「オブジェクト指向プログラミングは構造がプログラミングの次」という点に 納得して下さったようだ。伝わってよかった。

「サブジェクト指向」なるどこかで聞いたタームが登場するのはまあご愛敬として。

しばしば耳にする「サブジェクト指向」は(「自己中すぎる」という小飼さんの指摘以外にも)、 メッセージセンドのフォーマットにこだわりすぎているような気がする。

たとえば、CLOSのマルチメソッドだったら「サブジェクト」は存在しないわけだが、 これが「オブジェクト指向ではない」というのはちょっと極端すぎるだろう。 あるいは、通常のメッセージセンド(or メソッド呼び出し)についても、 たしかにレシーバは特別な位置にあるが、それ以外の引数もやはりオブジェクトである点は 見逃してはいけないと思う。


2007年01月31日

_ [OSS] OSS普及には新しい価値観をもった人々がリーダーシップを--日本OSS推進フォーラム

日本OSS推進フォーラム代表幹事の桑原洋氏。

中小規模のSIerなどは、かつては大手のレガシー戦略のもと、いわゆる下請けという立場で厳しい状況のなかビジネスをおこなってきた経緯がある。何か自分たちの力だけでブレークスルーを起こし、ビジネスとして大きな成功を果たせないか。そのひとつの選択肢として、OSSのビジネスで大手よりも先手をとろうとする企業がでてきている。

一方、大手にとっては、OSSのビジネスはまだまだ規模も小さく、当然のことながら大きな売り上げも期待できない。さらに、政府調達などでのOSSに対する官の動きも当初より緩慢で、現段階で大きな先行投資をこの分野に対しおこなうべきか迷いがあるというのだ。

うち(NaCl)なんかは この戦略を取った典型的な例であろう。 うちのサイズ(50名程度)のSIerだと、 オープンソースという武器が無ければ、下請けの下請けくらいにしかポジションを占めることはできなかったであろう。

ただ、オープンソースの認知度が上がってきたことと、 景気が上向いてきたことで若干危機感はある。

認知度が高まり、市場が大きくなれば、今まで手をこまねいてきた大手が 参入して競争が厳しくなるだろう。 また、「オープンソースを使ってお安く」という比較的景気低迷期に最適化された 戦略がだんだん通じなくなる(というか、差別化要因でなくなる)のも痛い。

次の一手を練らねばならない。いや、もう始めてはいるけど。

_ Effective Debugging using Dave Thomas' ”Programming Ruby” - evolutionNext WebLog

書籍『Programming Ruby』を使った効果的なデバッグ(虫退治)。 本を大切にする人にはあんまりお勧めではない。

_ [知財] 「松本零士氏 クリエーターの思い」著作権攻防

もうそういう浪花節は勘弁してください。

「自分の財産権に期限がついているのはうれしくない」という感情はわからないでもない。 けど、それであらゆる著作物の権利を巻き添えに延長するのはコモンズの見地からも ありがたくはない。

いっそ、「登録制で無期限延長」を推したい。 5年ごとに更新するとかで。

おまけにデフォルト(無登録)では、発表後10年とかだと申し分なし。 ベルヌ条約には反しそうだけど。

で、こういう後ろ向きの話よりは、 こちらの『「Jホラー、リメークによりハリウッドで勝利」著作権攻防』のような お金を払ってでも活用したいという前向きの話を読みたいものだ。

_ [言語] プログラマーの常識を学ぶ前に

@ITの記事。

で、「プログラマーの常識を身に付けるのにJavaはうってつけ」なんだそうだが、 その理由が明示されてない。 「Java言語の着実な普及に加え、最近オープンソース化されたことも相まって、Java言語の情報処理技術分野における重要性はますます高まって」いるからってことなのかなあ。

よくわかんないや。

_ [Ruby] xruby - Google Code

Javaバイトコードへのコンパイラxruby。

今回のリリースの特筆すべき点はsample/test.rbがちゃんと動くということ。 test.rbの中身を知っている人にとっては驚愕すべき点だ。


2008年01月31日

_ ITPro Expo

ホテルで朝ご飯をいただいて、ゆりかもめで会場へ(一駅)。

で、電車を降りたらwakhokの丸山先生を見かける。 あいさつしてそのまま講師控え室まで。 で、丸山先生なんだか面白いことを(Rubyで)はじめたみたい。 もうちょっとしたら公開する、とか。

そうこうしているうちに高橋さんがいらっしゃる。 うーむ、イケメンだ。おしゃれだし。

が、実際に話してみると、 外見や分野はともかく性格や行動がかなり似ている。

対談してても何回も「お前は俺か」とツッコもうかと思ったから。 大勢の観客もいたし、(高橋さん目当てに)テレビ局も来てたから自重したけど。 ほら、気配りもできるんだよ(笑)。

違っている点

  • 高橋さんはイケメン、私は童顔
  • 高橋さんはおしゃれ、私は外見に無頓着
  • 物理的実態のあるロボット、終始バーチャルな言語
  • 万人にわかりやすいロボット、一般人には理解不能な言語
  • ウケるロボットのデモ、つまらない言語のデモ
  • 高橋さんは特許保持者、私はむしろアンチ(ソフトウェア)パテント

似ている点

  • 好きなことばかりやってたい
  • 根はぐうたら、働き者じゃない
  • 他の人の手も借りるが、基本的に個人プレー
  • 最新鋭の技術を開発するというより、既存技術をパッケージング
  • デザインとバランスで評価されている
  • 国内外で講演・デモなどに飛び回ってる

全体的にITPro Expo会場での知名度はともかく、 高橋さんの方がなにかと徹底してるし、成功の度合が高いかな。

で、いろいろと話して楽しかったし、 クロイノやFTのデモを目の前で見れて大感激だったんだけど、 最終的にお客さんはどう思ったのかね。

冷静に客観的に振り替えると「変人二人」とかいうようなまとめになりそうなんだけど。

控え室でもさらに話がはずむ。 あちこちでデモを頼まれるけど(ロボットは普通の人が見てもわかりやすいから)、 以前物産展でハクサイの隣でデモするようなこともあったので、 ロボットの価値を下げないためにも安易な依頼は断ることにした、 というのは印象的だった。

まあ、私の世界中から何十倍も依頼が来てそうだし、取捨選択は必要だよね。

ちなみにこの後、「これらかインドに行きます」といって成田に向かわれた。 忙しそう。月に1,2度海外に行くと行ってたし。

そういえば、先週の週刊少年チャンピオンの漫画に 明らかに高橋さんをモデルにした人物が(棚橋さんという名前で)登場していたのだが、 ご本人はご存じないとのことであった。秋田書店の関係者は バックナンバーをロボガレージに送るべきだと思う。

その他、いろんなことを話したが、すべてためになった。 私のためにありがたい対談であった。日経BPさん、ありがとう。

当日のレポート

さて、ここで出番は終わらない。次は「Ruby検定」の解説である。

で、これら検定はぜんぶ「〜の○○検定」というフォーマットのタイトルがついているのだが、 「マイクロソフト」、「シスコ」などと並んで「まつもとゆきひろ」とあるのは なんの「いじめ」なんだろうか。

【ITpro EXPO 2008】ITpro EXPO検定に挑戦し,撃沈される:ITpro」とかを見る限り、Ruby検定は人気ないみたい。

で、解説者が実際に検定を受けてないのもなんだよな、と思い、 また、不人気なのは残念なのでサクラも兼ねて、 会場で受験する。まあ、問題作成側であったので良い成績はむしろ当然で、 なんかのミスがあったらどうしよう、とドキドキしたが、 首尾よく100点。

で、得点をスタッフのお姉さんにチェックしてもらうのだが、 その時ネームタグ(ICチップが入っている)をみて、 「くすっ」と小さく笑ったのを見逃さなかった。

今、「自分で受けてら」って思ったでしょ。 私でも思うもん。 だから、やっぱり「RubyアソシエーションのRuby検定」にしとけば良かった。 えーん。

気を取り直して。

実際の解説であったが、あまりお客は居なかった。 かなり関係者も目立ったし。やっぱり現時点ではまだ魅力不足だよね。 はじまったばっかりだし、どのくらい仕事につながるかも未知数だし。

いずれにしても、解説はせねばなるまい。 メイン解説者の大場さんが、「私は2回目で落ちました」という自虐ネタを 披露する。ちなみに奥さんは合格です。

で、適当にかけあいをしつつ解説をこなす。 予定よりもたくさん説明できた。 やっぱ他の言語(JavaとかPHPとか)から意識を切り替えられないと 間違いやすいみたい。Timeメソッドでaddとか使っちゃったり。

で、飛行機に乗って米子空港経由で帰る。 くたびれた。

_ 自分の経験の枠組みは自分で変えられるか? - アンカテ(Uncategorizable Blog)

essaさんによる提言。私の記述不足から起きた「話題」も このようなコラムの引き金になったのだとしたら本望だ。

_ [言語] やじうまWatch: 広く使われるプログラミング言語「PHP」を巡る議論に注目集中

やじうまWatchにまで取り上げられちゃったよ。 「ある「ハッカー」の顛末」以来だな。 みんなよっぽど話題がないんだろうか。

おかげで、すごいアクセスが来ている。夜とかサーバーが落ちそうになるくらい集中した。


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