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Matzにっき


2003年11月29日

_ [特許]京都へ移動

「ソフトウェア特許研究会」に参加するために京都に移動。

朝7時の「スーパーやくも」で岡山、「のぞみ」に乗り換えて京都まで。 京都駅で地下鉄に乗り換え、さらに今出川で市バス。京都大学へ。 ここで12時すぎ。

京大の中でさんざん迷ったあげく会場のVBL(ベンチャービジネスラボラトリ)に。 いやあ、遠い。

_ [特許]ソフトウェア特許研究会

で、やや遅れて研究会が始まる。プログラムは以下の通り。

開会:柴田有三氏(KGC理事長)
理事長って言葉からは連想できないような若い人。KGCというのは京大をベースにしたベンチャーの集まり...なのかな?
挨拶:扇谷高男氏 (内閣府参事官/京都大学国際融合創造センター客員教授)
えー、20人ほどのあつまりにはもったいないような「偉い」人。 知的財産権を強化するのがトレンドであるというような話。
講演:末松千尋氏 (京都大学大学院経済学研究科助教授)
CNET Japanの連載でも有名な人。 特許とは直接関係なかったが、トランザクションのあり方という視点から、 オープンソースを含む各種の枠組みを比較していたのが興味深かった。 あと、オープンソースソフトウェアのライセンスは少数に収束するという意見も。 個人的には「収束してほしいが、難しいだろう」と「でも、新規に選ぶ場合にはメジャーなものを選ぶべき」 という意見で、自然に収束する方向にはないと思う。
講演:谷川秀和氏 (IRD国際特許事務所所長/京都大学知的財産企画室産学連携研究員)

ソフトウェア特許についての知識あれこれ。実務に携わっている人からの話は知らない世界のようで刺激を受ける。 うーむ、そういうものなのね。

途中、HTML2.0をカバーしそうな特許について紹介された(2945753号、2982752号、2982753号)。 僕にはクレームを読み取る能力はないのだけど、彼の言うことを信じるなら、 この特許を行使するとHTML2.0以降を差し止めできるわけで、 Eolas特許なんか問題じゃないくらいインターネットに大混乱を起こせることになるなあ。

パネルディスカッション1:パネラー まつもとゆきひろ (Rubyの人)
えーと、特許については素人の発言(笑)。スライド
パネルディスカッション2:パネラー 松田陽一氏 (某企業知財部)
時間が押してて少ししか発表できなかった人。企業名はインターネットでは明らかにしたくないそうだ。 内容は要するに「現実を直視しよう」、「他人の権利を尊重しよう」という ある意味常識的なもの。『Think GNU』は特許的には(事実に反する)プロパガンダであるとの批判も。 確かにそうかもしれない。
閉会:office(The Pointer)
この会の主催者、というか言い出しっぺ。関西方面の人はお互いに知っているみたいだけど、 私にとっては終始謎の人であった。コピーレフトならぬ実施権レフトを構想中?
研究会終了後:「ちくわ」にて宴会
店の名前は「ちくわ」だったと思ったんですけど、あんまり定かではないです。

で、全体を通しての私の印象。

  • まあ、今から「特許を無くせ」は無理だろう。 また、ソフトウェアを特許の適用外にするというのも(世界の流れから見て)非現実的。
  • でも、本音では、特許のない世界の方が、私には住みやすそうだなあ。
  • ということで、スライドにも書いたように以下のことができれば、比較的現実的に幸せになれるかも。
    • 審査の厳密化
    • 公知化主段手段の緩和
    • インタフェース・プロトコル・ファイルフォーマットの特許化禁止
    • オープンソースによる侵害に対する対処方法の明確化
    • インターネットで配布されるソフトウェアにおける特許問題の明確化
  • ま、お互いに相手のことを知らないとね。特にこっちからの啓蒙が重要。
  • 風穴さん、登録してたけど来なかった。奥村先生とお話しできなかったのは心残り。

_ [特許]京都から帰る

お店を早めにおいとまして、来た道を逆にたどって帰る。

  • やっぱり京都は遠い
  • 帰り道、「タクシーをつかまえるかな」と考えただけでタクシーが止まった。 京都のタクシーはテレパシーが使えるのか。

2004年11月29日

_ コンピュータ偉人伝

ちえの和WEBページというサイトに 「コンピュータ偉人伝」というコーナーがあるのだが、 どういうわけだか「まつもと ゆきひろ」というエントリが登場した。

「らしい」とか「だろう」とか「ようだ」とか、 「伝記」っぽくない表現が多用されているものの、 よく調べたな、というのが正直な印象。

恥ずかしい限りだ。

_ [Ruby]Ruby 講習会中級コース 1 日目

今まで「体験コース」、「初級コース(前半)」、「初級コース(後半)」ときたが、 とうとう「中級コース」だ。今日の講師はゆうぞうくん

しょっぱなから飛ばし気味でついていけるのか危ぶまれたが、 なかなかレベルの高い受講者が多く、なんとか大丈夫だったらしい。 「横浜からこのために来ました」なんて人もいたのだが、期待に応えられただろうか。

私は後のほうの席で明日のためのスライドを用意していた。 受講者のレベルが見えてから準備できるのは助かるが、 なにより時間が足りなくて焦っているのも確かだな。

かずひこくんのレポート


2005年11月29日

_ [OOP] DRYとOCP

DRYとはDon't Repeat Yourselfの略で「繰り返しを避ける」というソフトウェア設計上の原則のことである。Dave ThomasとAndy Huntの『Pragmatic Programmers』で紹介され、Railsが強調したことで知られるこの原則は、ソフトウェアの生産性・保守性の向上に有効な原則として知られている。

一方のOCPとはOpen-Closed Principleの略で「開放・閉鎖原則」とか「オープン・クローズ原則」とか訳される。先日も述べたが、この原則の定義は

モジュールは拡張に対して開いて (Open) おり,修正に対して閉じて (Closed) いなければならない

というものである。 詳しくは、 まさーるさんの記事を参照されたい。

さて、日経Linuxの原稿で今月はOCPについて語ろうとしているわけだが、 えらい苦労しながら、改めて気がついたのは、 この全然違うようにみえるふたつの原則は実は密接な関連があることだ。

すなわち、DRY原則にしたがっていないソフトウェアは自動的にOCPに反することになる。 逆に、DRY原則に従おうとクラス設計すると結果的にOCPに従うことになる(ことが多い)。

で、原稿ではそのことを説明しようとしているのだが、あまり上手に書けてないような気がする。 別にスランプというわけではなくて、いつものことなのだが。


2006年11月29日

_ [知財] 特許二題

まずは韓国からのニュース。

マイクロソフトのOfficeが韓国で販売停止の危機──特許訴訟敗訴で

クレームを読んでいないが(きっと韓国語なので読めないが)、 記事を読むかぎりは、 単にインプット先に合わせてIMEのオン・オフを制御するだけの特許にみえる。 こんな特許で販売停止が言い渡されるというのも迷惑な話ではないか。

で、さすがにこういうことはまずいと思うのか、 アメリカでは動きが出てきている(のかな?)。

米最高裁、特許の「自明性」を審理へ

要するに「あんまり自明な特許はやめようよ」ということらしい。 その通りだ。

ほんとうは特許審査のレベルではねることができればそれに越したことはないのだが。


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