«前の日(09-24) 最新 次の日(09-26)» 追記

Matzにっき


2003年09月25日

_ [JAOO]旅立ち

出発の日。JAOOカンファレンスは昨日で終わってしまって、 今日残っているのはチュートリアルのみ。 これには参加する予定はないので、ホテルの部屋でインターネット回線を購入(150DKR)し、 午前中はウェブとメール。

午後には出発。まずオーフス駅から空港までバス(60DKR)。 バスは予定時間より微妙に早く出発するので注意。

空港(Aarhus Lufthavn)から、ATR42/72でコペンハーゲン空港へ。 機体は来た時のものよりも大きいので、こっちがATR72なのだろうか。 しかし、なんど聞いてもコペンハーゲンではなく「こぺなげ」にしか聞こえない。

コペンハーゲン空港では家族に少々おみやげを買ったり、ぶらぶらしたり。 おなかが空いたのでホットドッグを食べる。しかし、この旅行でクローネの現金を使ったのは、 空港からの行き帰りのバス代とこのホットドッグだけであった。 おみやげとホテルでのインターネット料金はカード払いだったし。

コペンハーゲンからパリへ。3時間ほど空き時間があったのは辛かったが、 売店をぶらぶらしたりして時間を過ごした。

出発ターミナルでは日本人があふれてる。まあ、日本行きの便が出るターミナルなので 当然と言えば当然なのだが、なんか変な気分。

駄目もとで無線LANカードを差すとつながる。便利なものだ。

現地時間25日遅くに出発。


2004年09月25日

_ [教会]鳥取訪問

普段は日曜日だけ訪問するのだが、今回は特別に依頼されたので土曜日から出かける。 鳥取市内で迷ってしまって遅刻してしまったのは秘密だ。

扶助協会の教師改善集会の講師というのが依頼内容だったのだが、 おおむね満足いただけたようだ。教会における教師ってのは、 学校の教師とは違う側面が多いので難しいよね。

集会終了後、弟のアパートへ。今晩は泊めてもらう。 おかげで年が離れた弟とゆっくり話す機会があった。 今まで、あんまり年が離れ過ぎててゆっくり話す機会が無かったのだが、 良い機会であった。

_ [言語]すべては初心者のために

先に私自身の考えを言っておくと、 個人的には「初心者(だけ)のための言語」ってのは駄目だと思っている。 langsmith MLでも書いたし、以前にここでも書いたような気がするけど。

理由は以下の通り。

  • 初心者と言えども言語の全ての機能を一度にマスターする必要はない。 よって言語が初心者向きでない機能を持つことは、あまり問題にならない。
  • 初心者はいつまでも初心者ではない。 初心者にだけ嬉しいツールを設計してしまうと、 いずれ学習が進むにつれツールの移行が余儀なくされる。 過去の経験から言うと、言語の場合、初心者に近い人ほど移行に困難を伴い、 避けたがる傾向がある。となると、初心者に(だけ)優しいツールは、 初心者をいつまでも初心者レベルにとどめてしまう効果があることになり、 上達を疎外すると言う意味で初心者にふさわしくない。
  • 言語に機能(or 文法)が多く、高度な機能が駆使されていると、 その言語で書かれたプログラムを読解するには高度な知識が必要になる。 しかし、そのような機能が必要な局面は そもそも「初心者向け」の機能だけでは実現が難しいものではないだろうか。 「小さな言語」を目指すならばアセンブラが最適だ。 しかし、ほとんどの人はアセンブラを使わない。

そうはいうものの、実は私が間違っていたり、なにかを見落としている可能性まで否定はしない。 「初心者の言語かくあるべし」という人の意見をぜひ聞きたいものだ。


2005年09月25日

_ [教会] 松江

今週もあやうく遅刻しそうになる。15分早めに見積もっていたら30分遅くなるという。 いくら遅れてもちっとも危機感のない子供に焦燥するが、 考えてみると自分にも危機感がない。人のことはいえないな。

司会。まだ恥ずかしい。

集会後、青少年対象の教師改善集会。 若い人を教えるのは難しい。歳取ったということか。


2006年09月25日

_ カーネル読書会

kosakiさんが、YLUGのカーネル読書会でglibc mallocについて語られたらしい。 スライド[PPT]はさっそく眺めてみた。dlmallocってこんないろいろ工夫してたのね。 Rubyのメモリ管理も以前にいろいろ試してみたのだが、 結局小さなchunkはmallocですなおに管理するのが一番高速という結果が出たのは これらの工夫が原因なんだろうか。 でも、sweepで一気に解放するから、プレゼンの中で「苦手なパターン」と されているケースのような気がするんだけど。

Googleビデオも公開されているので、ぜひチェックしたい。 ビデオは時間がかかるのが難点なんだが。

_ [Ruby] ObjectView

私は今まで知らなかったんだけど『ObjectView』という雑誌があって、それのPDF版を(少し遅れて?)公開しているのだそうだ。

で、その第9号[PDF 2.2M]が Ruby特集なのだそうだ。

我らがレベッカたんも登場している(Rubyのことじゃないけど)。

_ ■コンピュータは人間を進化させるか■アラン・ケイ氏インタビュー

やっぱ、Alanって視点が人と違うよな。

我々が(私が)、今、目の前にあるツールをどう良くして、 自分がどう楽をするかってことを考えてる時に、 数百年後のことを考えている。

"Reinventing Computing"という彼の講演からの抜粋[英語]も興味深い。

_ svkとCVSの連携

ああ、そうか、VCPがCVSへのuploadをサポートしていない時点であきらめてしまったけど、 uploadだけcvs ciを使うという手があったよな。

考えてみれば、StGITを使った今の運用だって、そうしてるんだものな。

現在、私が利用しているStGITと上記のsvk+CVS連携の比較は以下の通り。

  • pull(sync)は結局CVSを使うのでおんなじ。 ただ、StGITは(私の運用方法では)手元のパッチを全部revertしてから 同期するのでこの時点では矛盾が発生しないのは嬉しいかも。
  • ローカルリポジトリの操作は、好みによる。 svkの方がいろいろできるが、StGITの方が(私には)わかりやすい。 特にStGITはブランチとか考えることなく、一連の変更をまとめて操作できるのは 個人的にありがたい。
  • pushもCVSを使うので同じ。私はスクリプトを書いたので いろいろ自動化されて便利(ChangeLogからのコミットログ切り出しとか)だが、 それはsvkを使っても似たようなことはできるだろう。

ま、結局、svkの操作とStGITの(というかQuiltの)操作のどちらが好みかということだろう。 先にも書いたが、私はStGIT派である。


2007年09月25日

_ 講習参加

最近ではなんらかの形で教える(情報発信する)機会ばかりで、 勉強会とか講習会のようにいかにも「学びます」という感じのことは ほとんどなくなっていたのだが、諸般の事情から講習会に参加することになった。

内容は「いかにすぐれた認定試験を行うか」というもの。

生涯において認定試験というものをあまり高く評価してこなかったので、 まさかこんなことを学ぶことになるとは予想もしていなかった。 しかし、いざ学んでみるとこれが非常に面白い。 さりげなく眺めていた「試験」がこれほど奥が深いとは。

  • どのような試験が理想的か
  • どのような問題がすぐれているか
  • どのように評価するか

などについて、理論的背景と共にしっかり学んできた。 こんな講習会を受けられる機会は滅多に無いだろう。 なんか久しぶりに「私の知らない世界」を見た気分だ。

_ [知財] “コミケの力”をアニメにも−−“権利者公認”2次創作の祭典

コミケでは(じゃっかんグレー気味に)二次創作が黙認されていて、 それがマンガにおける裾野の広さに繋がっている。 しかし、アニメではより権利関係に厳しくそのような伝統はこれまでなかった。 それを緩めることで、もっと良いものが出てくるのではないか、という話。

まあ、こういう「損して得とれ」のような発想が権利者から出てくるというのは 良いことだと思う。ほんとは音楽業界(アーチストや作曲家よりもレコード会社)に こういう発想が必要なんだと思うけどね。 でないと、長期的に見て音楽は壊滅的なダメージを受ける可能性がある。

あまり音楽に依存していない私には関係ない話ではあるが。 そうなって欲しくない人はそれなりにいるんじゃないかな。

_ [Ruby] InfoQ: Rubinius roundup

Rubinius頑張ってるって話。

  • It is byte code based. This means it's easier to handle performance.
  • It has a pluggable, very clean architecture, meaning that for example garbage collection/object memory can be switched out to use another algorithm.
  • It is designed to be thread safe (though this is not really true yet), and Multi-VM capable.
  • It works with existing MRI extensions.
  • Most of the code is written in Ruby.
  • It gives you access to all the innards, directly from your Ruby code (stuff like MethodContexts/BlockContexts, etc).
  • The project uses Valgrind to ensure that the C code written is bullet proof.

拡張ライブラリがそのまま使えるというのは驚異だ。

_ [Ruby] Ruby Way

Ruby/RSpec/Railsに、「デファクトを受け入れる」という姿勢は希薄だ。いや、無い訳じゃない。Lispを差し置いてRubyなんかが目立ってしまったのはデファクトスタンダードなALGOL風記法によるところも大きいだろう。ただ、今あるものを粛々と受け入れる姿勢はない。いまあるものの本質を理解して、それに反するものは本家本元であろうと容赦なく批判し、本家もそれを受け入れていく。それがRuby wayである。

そんな感じ。私のカリスマ性が低いことの結果かも。

現在の「Railsバブル」にはちょっと危機感を持ってる。 確かにRails(とRuby)は最近たいへん評判が良くて、 あちこちで注目されている。 中には実体以上に期待されているところがある。

が、バブルはいつまでも続かない。

そのうち、Railsと比較して生産性において遜色ない(おそらくはRuby以外の言語ベースの) フレームワークが登場し、相対的にRailsの注目度は下がるだろう。 また、Railsをそれが向いていない領域にまで適用して、 「Rails使えねーっ」と叫ぶ人も登場するだろう(もう出てるか)。

そうなっても、良いものは良い、悪いところは(できる範囲で)直す、 という態度で淡々と進みたい。それがRuby Wayだと思う。


2008年09月25日

_ [Ruby] Disparition de Guy Decoux

誰も知らないRubyハッカーとしても知られる Guy Decoux(フランス語では「ぎー・でくー」と発音するらしい)が実は7月の初めに火事のため亡くなっていたことが報告される。

ショック。

今回の訃報ではじめて彼の年齢や顔が明らかになった(私にとっては)。 53歳。まだまだ若いのに。

とても残念である。惜しい人を亡くした。 一度も会ったことはなかったが、大変親しみを感じていただけに ショックが大きい。


«前の日(09-24) 最新 次の日(09-26)» 追記