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Matzにっき


2003年08月18日

_ [原稿]技術の真髄

Linux Magazineの原稿はようやっと片付けたのだが、 今月は実はもう一本引き受けていたのだ。 これは日経バイトの「技術の真髄」という記事で、 名前が知られている技術者に技術の動向等について 書いてもらうという企画なのだそうだ。

で、私には言語おたくとしてプログラミング言語の歴史と現状と未来についての依頼があった。まあ、好きなネタではあるので、 初心者に分かってもらえるだろうかなどの葛藤がないぶん、楽かも。しかし、これもお盆開けに原稿出すと約束しているので、すでに〆切が過ぎているのだった。メールで交渉し、数日期限を伸ばしてもらう。


2004年08月18日

_ [言語]The Jolt Programming Language

GroovyがRubyの影響を受けたことは間違いない。 もちろん、Rubyだけじゃなく、他の言語の影響もたくさんあるだろうけど、 (Javaをのぞけば)もっとも大きい影響を与えたのはRubyだろうと確信できる。 名前だって「ぐRuby」だし(笑)。

別の側面では、Alephという言語の公式サイトである www.aleph-lang.orgというドメイン名もruby-lang.orgの影響でないと誰が言えよう(言語は似てないけど)。

さて、次第に認知度が高まって、間接的に他の言語の影響を与えはじめたRubyだが、 その影響を受けたに違いない(勝手に断言)言語がまたひとつ登場した。

その名も「Jolt」!

ハッカー御用達のカフェイン飲料Joltにちなんで名付けられたらしい。 ドメイン名もwww.jolt-lang.orgと、ちゃんと-lang.orgの伝統(?)にのっとっている。

この言語はC++をリプレースするのを目的とする、静的型のシステム言語なのだが、 文法が(静的型があることを除けば)Rubyそっくり。「end文法」だし。

Rubyの特徴であったブロックもGroovyではなんかハック的な文法*1であったのに対して、 こちらのブロックはきちんとRubyとそっくりのセマンティックスになっている。「do〜end」と「{〜 }」の両方が使えるところまでRubyそっくり。

annotationというか可視性などの属性の指定の仕方が趣味じゃないのと、 仕様が必要以上に複雑な気がするのを除けば、これは「静的型のRuby」と呼んでもよいのではないだろうか。

こうやって、自分の言語やアイディアが他の言語デザイナーに影響を与えているのを見ると、 言語デザイナーとしてはこの上ない喜びを感じる。

*1  Groovyのブロックはクロージャとして引数リストの最後に追加される


2005年08月18日

_ [原稿] UUゲラ

ゲラが来る。大体毎回かなり削っているのだが、今回は珍しく行が足りなかったので書き足し。

_ プレゼン資料

「お願いしていたプレゼン資料がまだ届いていないのですが」というメールをもらう。 そういえば、OpenOffice.org指定でプレゼン資料を書いてくれと依頼されていたな。

「〆切はいつですか」と尋ねたら、「昨日です」と返答。

....だめじゃん。急いで書く。

_ [OSS] 八田真行のオープンソース考現学: Hear Me Talkin' To Ya

企業が「オープンソースコミュニティ」とうまくやるには、 ハッカー(開発者)の気持ちがわかるHR (Hacker Relation)のようなポストが必要ではないか、 という話。

ま、それはそうだ。スーツ族はなかなかギーク族の気持ちがわからないが、 相互理解無しには成功はなさそうだものな。


2006年08月18日

_ 会議

打ち合わせ。米澤先生をはじめとするエラい人に会って緊張する。

面白い話がいろいろと聞けた。 東大の学生は頭がいいなあ(or 頭がいいことを期待されてるなあ)。

米澤先生の運転で場所を移動。 東京の道はさっぱりわからない。 道はまっすぐじゃないし、どこがどこにつながっているのかすぐにわからなくなる。 城下町だからか。

松江も城下町で道はややこしいのだが、 東京に比べると規模が小さいのと 普段から運転しているから慣れているのがあるのだろう。 それに松江の旧市街はやっぱり難しいし。

それよりなにより東京の道路をわからなくしてるのは、 公共交通機関が発達しているから、道路を把握しようという動機がゼロだからだろう。 動機は重要だ。

会議はけっこう面白いネタがいくつも登場した。 話だけなら誰でもできるので、これを現実化するのが次の大きな課題だ。

_ パンダパン

会議の場所から駅まで移動する途中のパン屋でパンダの形をしたパンが売っていた。 アイシングとチョコで完全にパンダ型。感動したのでおみやげに買って帰った。

_ [Ruby] Can Ruby Live Without Rails?

Bruce Tateのインタビュー。 いくら昨今のRuby人気がRailsのおかげだからといって 「Railsなしで生きていけるか」と思われるほど依存してはいないと思うな。 もっともそう言っているのはBruceではなくインタビュアーなのだが。


2007年08月18日

_ IPA未踏ソフトウェア創造事業2006年度下期千葉PM採択プロジェクト最終成果報告会

YARVプロジェクトも含め、いろいろと発表する会。

今回はそのプロジェクトが無駄でないことを示すためか、 プロジェクト成果の社会的インパクトについても紹介するのだとか。

で、うち(NaCl)や永和さんや楽天から 「エンタープライズRuby」な未来について語ってもらうんだそうだ。 もちろん、YARVそのものについても、ささだくん自身による解説がある。

時間の都合がつけば私も行きたかった。

_ [言語] The rantings of Clinton Forbes: The D Programming Language versus a Datsun 240Z

D vs Ruby」を 受けて、「そんな比較、意味無いじゃん」とばかりに書かれたパロディ。

言語の比較って難しいよね、特に客観的になろうとすると。

たとえば、「Ruby's Named Parameter Passing, and its Sometimes Confusing Use in Rails」のコメント欄では、

Aesthetics aside, you should select Python over Ruby if you care about Unicode (and therefore XML) or need native threads or want more performance. Those are the indisputable ones. The disputable ones are: you want to build a large application from parts without worrying about name clashes OR you need to make maintenance easier by having a consistent, language-enforced coding style OR you need to reduce the cost of training new programmers by using a language with a simpler syntax.

Now what I've been looking for for a year is the reverse statement. Aesthetics aside, you should choose Ruby over Python if .... where the answer does not involve Rails. Rails aside, what problems are intrinsically a better fit for Ruby than for Python? Is it really just "tastes great, less filling?"

とある。「Rubyは遅いし、Unicodeサポートはプアだし、 美的感覚を除いてはPythonを選ばない理由はないんじゃない?」のだそうだ。

私でさえはっきり言語化できないけど、PythonとRubyとじゃ利用感が全然違い、 それは単なる「Aesthetics」である(ので重要ではない)という感覚は あまりに感覚を重要視していない気がする。

もっとも、美観についてもPythonを選ぶ人が多いのは、 それはそれで納得してるんだけど。

_ The Multicore Kerfuffle and a Dose of Reality at Mark Nelson

マルチコアの未来。

マルチコアになったらそれを活用するには特別なOSやソフトウェアが必要になる という論調が多いが、よく考えてみれば、普段我々はある特定のプロセスにCPUパワーを 全部預けるようなコンピュータの使い方はしていない。

日常的に複数のプログラムが動作しているのが当たり前なんだから、 コアの増加についてそんなに心配することはないのではないか、という話。

そういえば、我々が一番問題にしがちなWeb系では元々サーバープロセスがいっぱい いるんだからあまり難しいことを考えなくてもマルチコアは十分に活用できるよね。 スレッドだの、軽量プロセスだの、あまり心配しなくてもいいのかもしれない。


2008年08月18日

_ 出発準備

三鷹でのイベントに向けて、 出発の準備をする。今回は家族連れなので準備も大がかりだ。

とはいえ、肝心のスライドがまだ完成してないんだが。 いや、なんとかする。絶対に。

ちなみにテーマは「進化し続けるRuby 〜その未来について〜」ということで、 「未来のRuby」について語る、ということになっている。

_ フィード削減

RSSリーダーで他人のブログを見ている時間があまりにも長すぎる気がしたので、 あまり技術的でない内容のフィードをいくつか削った。

それぞれの人が折々どのようなことを考えたのか、 あるいはどのような生活をしているのか知ることはある意味楽しいが、 純粋に時間が足りない。

が、ふと振り替えると、この日記がまさにそのようなことになっていて へこむ。

できることならば、Factor: a practical stack languageくらい面白いネタを書きたいのだが。

_ 妻のブログ

ところで、しばらく前から妻がブログを書いている(URLは特に秘す)。 だいぶ前に強く薦められたがうやむやになっているココログを使うことにした。 MovableType(Perl)だけどなっ。

なにを書くのかと思っていたのだが、 末娘を寝かす時に語っているものがたりとか詩(!)とかをアップしているようだ。

しかし、そのものがたりが実に面白い。 結婚してもう16年になるが、こんな才能があるとは知らなかった。

かわいい絵を付けて絵本にしたいくらいだ。身内の欲目?

残念ながら私の知り合いの出版関係はみんな技術出版だなあ。


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