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Matzにっき


2006年07月11日 [長年日記]

_ [原稿] 日経Linux2006年9月号

テーマは「ネットワークプロトコル」。 取り扱うのは主にアプリケーション層だが、 一応OSI7階層モデル(古いっ)から、 各レイヤーのプロトコルについても簡単に触れる。

が、いかんせん時間と余裕がなく、 なかなか進まないのだ。

_ 集中講義スライド

余裕がないのは、今週の木曜と金曜に筑波大で集中講義をするから。

言語設計論に終始した昨年と比べ、 今年は実装よりの話をしようと考えていたのだが、 スライドを準備するうち、力尽きてしまった。

結局、2日あるうちの初日は昨年の使いまわしとなった。 いや、別に倫理上なんの問題もないのだが(元々昨年と全く同じ講義でも問題ないわけだし)、 当初の意気込みを実現できなかったのが残念だ。

学生さんたちゴメンよ。でも、今改めて考えると 実装オンリーだと難しすぎだったかも。

_ U−20プログラミングコンテンスト 作品募集

募集中である。〆切が近づいているな。

_ [OSS] オープンソースは何が“オープン”なのか?

オープンソース啓蒙的にはわかりやすい記事かもしれないけど、 歴史認識に誤認があるような気がする。

ソフトウェアが独立したビジネスとしたのを 「Bill Gatesの公開書簡」からだと位置づけると AT&TがUNIXを公開した時期はそれよりも古いのでは。 それを

一昔前までのコンピュータ業界では、ソフトウェアを作成した会社が、そのソフトウェア製品を販売することにより利益を上げるという形態が一般的でした。

...

その後アメリカのAT&T(日本の電話会社に先駆けて分割された結果、今はソフトウェアを扱っていません)のベル研究所で「UNIX」というOS が開発され、教育機関などに対して非常に安価に、一般企業に対してもかなり安価にソースコードを公開しました。この結果、ソースコードに触れることができる開発者がソースコードを修正することによりUNIXがいろいろなコンピュータ上で動くようになり、世界中広く行き渡りました。

とまとめるのは、かなり事実と違う。 初期のUNIXのテープ配布は、むしろ当時の、開発したソフトウェアは 同じコンピュータのユーザ同士で共有するという、より古い慣習に従っていると思う。 それこそがRichard Stallmanが回帰を望んでやまない「幸せな世界」である。

あと、AT&Tは元々ソフトウェアをビジネスにすることを禁じられていたので、 分割によってソフトウェアを扱わなくなったわけではない、とか。

若い人が歴史を知らない、興味がないのは仕方がないけど、 「ソフトウェアビジネスありき」という姿勢では オープンソースの(というかフリーソフトウェアの)歴史を見誤りそう。

_ 技術と事業を結びつける鍵--「ラボ」の存在意義を検証する

「ラボ」、はやってますねえ。

「ビジネスの閉塞感を打ち砕くため」や、 「将来に対する保険」、 「事業継続のために必要なイノベーション」などのために 「次の一手」を打ちたい事情はわかる。

が、過去に二度も名ばかりの「研究所」勤務だった経験からいうと、 ラボってかじ取り難しいよねえ。

技術者の言いなりだとビジネス的成果があげられないし、 経営者の言いなりだと技術的成果があげられないし。

本当は技術者にいろいろやらせて、その中からビジネス的価値のあるものを 拾い出して来るのが正統なんだろうけど、 技術者の評価という観点からも、事業的余裕って観点からも それが許される企業は少数のような。

ということは、零細企業では勝手連的な開発を黙認して そこから成果を吸い上げるって形になっちゃうのかな。

それなんてオープンソース?

_ The Semicolon Wars

後で読む。できるものなら英語読みたくない。


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