Enterprise Watchより。
おそらくIBMが500件の特許をオープンソースに公開したことに対応する、プレス発表から。
ソフトウェアには、権利と製品そのものの2つのコンポーネントがあるとし、「特許は新製品を生み出す根源、ドライビングフォースとして無視できない。これは商用ソフトの世界では中心的な考え方として確立されている」との考えを述べた。
発明を公開させる代わりに一定期間独占的な権利を保証し、 発明(とその公開)に対するインセンティブを付与する、というのが特許の目的であるので、 「新製品を生み出すドライビングフォース」としての側面がないわけではないだろう。 また、その考えがマイクロソフトが所属している「商用ソフトの世界」で中心的な考えであることも否定しない。
しかし、本当に特許は「ドライビングフォース」として有効なのだろうか。
もちろん、苦労して発明した内容が真似されたい放題では発明意欲が下がる、というのはあるだろう。 しかし、逆に苦労して開発したソフトウェアが、 (実際には真似したわけではないのに)「そのアイディアは私の特許だ」と訴えられれば、 私だったら開発意欲が激減する。
おまけに特許は独占権なので、権利者は自分の特許に対して
ので、権利期間中はそのアイディアに関して事実上無限の権利を持つことになる。
つまり、「自分のアイディアが真似されない」という権利は、 逆に「自分の開発を阻害する」権利を他人に与えることと同等である。 なんとなく、大国が核兵器を抱えてにらみあった冷戦の構図を思い出す。 あの頃も核兵器に対して「抑止力である」と主張していたよなあ。
さて、この場で平野氏はオープンソースについても興味深い発言をしている。 こちらはCNET Japanの方が詳しい。
また平野氏は、オープンソースソフトウェア(OSS)と商用ソフトウェアの連携についてもコメントした。同氏は、両ソフトウェアをうまく連携させるためには、同一のルールに基づき、他者の知的財産権を尊重する必要があるとし、実効的な相互運用性の実現と、業界横断的な協業関係を構築することが重要だとしている。「商用ソフトウェアとOSSが知的財産によって連携することが必要だ」(平野氏)
ただ、OSSとの連携においては課題があると平野氏。それは、OSSの多くは知的財産権の検討を経ずに開発されており、他の知的財産権との連携を念頭においたプロセスが欠如していることだ。また、Linuxなどで採用されているGNU GPL(General Public License)が、特許に対してライセンス料を支払わずに配布するという方式を取っており、知的財産権との連携をむしろ阻止する考えであるためだ。このような問題はあるものの、平野氏は「これは制度の問題に過ぎないので、お互い知恵を出し合うことで解決に向かうのではないか」としている。
ええ、お互いの頭に銃口を突きつけあうような生き方はしたくありませんから。
とはいえ、平野氏の言う「商用ソフトウェアとOSSが知的財産によって連携すること」とか、 「お互い知恵を出し合うことで解決に向かう」ことで得られる「解決」とはどのようなものか 興味深い。私には知恵が足りないので、 「持てるもの」であるマイクロソフトに一方的に有利な「解決」を考えちゃうんだが。
あるいは、IBMのやり方を他のオープンソース関連企業(たとえばOSDN参加企業)も行い、 オープンソースの特許トラストを形成するとか?
追記
同様の内容がGroklawでも論じられている。
目新しい内容は
くらいか。オープンソース特許トラストができたら、マイクロソフトをはじめとする「旧体制」陣営はイヤだろうなあ。でも、それは「毒をもって毒を制している」わけだから、オープンソース側にも抵抗のある人は多そうだ。