«前の日記(2004年04月21日) 最新 次の日記(2004年04月23日)» 編集

Matzにっき


2004年04月22日 [長年日記]

_ [生活]地域差を利用した生き方

元ネタはCNET Japanの梅田さんのコラム

生活コストの高いことが前提の「大都市圏標準サラリー」を稼ぎ、生活コストの安い田舎の小さい町に住むことで、2つの世界のいいとこ取りをしよう、というのがGeographic Arbitrageである。

しかし、別にこの生き方は新しいものでもアメリカ特有でもない。 日本でできない理由はないし、実践している人も多いだろう。 事実、私はずっとそうしている。

鍵は「ふたつの世界のいいとこ取り」である。

まず、第一に仕事である。地域性に限定された仕事では難しい。

日本だけじゃないと思うが、田舎は住環境、生活コストその他で恵まれている (たとえば、今のうちは3LDKで共益費、駐車場2台分込みで8万だ)。 一方、産業に乏しいことが多いので、地元ではなかなか仕事はない(ので高給に恵まれない)。 環境が豊かでも収入が厳しければ「いいとこ取り」ではない。

しかし、「IT革命」ばんざい。すべての職種とは言えないが、 ソフトウェア開発に限って言えば、いまや地理的な問題はかなり少なくなっている。 電子メール、FAX、IRCなどを活用すれば、開発作業のほとんどは地理的な制約を受けない。 以前は情報が遅いのが難点だったが(松江は今でも雑誌の発売日が二日遅い)、 インターネットのおかげで最新の情報が自宅で入手できるようになっている。

理屈から言えば、会社としては開発者がどこにいようが、きちんと仕事を果たしてくれれば、 貢献に対する報酬として同じだけの額を払うのは当然である。都会地手当てのようなものを除けば。

であれば、あと必要なものはなにか。

実はそういう働き方を理解してくれる文化や会社だけのような気がする。 いずれにしてもソフトウェア開発職は他の職種に比べてチャンスが多い。 サポートや営業ではなかなか難しいだろう。

あきらめずチャレンジするのはどうだろうか。


«前の日記(2004年04月21日) 最新 次の日記(2004年04月23日)» 編集