トラックバックをきっかけに梅田さんからも反応をいただいた。
「筆者(梅田)がどういう意図で、どんな読者を想定してこの文章を書いたのかよくわからんが・・・・」みたいなことが書かれていたので、
とあるが、私としては「よくわからない」ではなく「推測による断定は避けたい」というニュアンスだったのだが。 まあ、いいや。いちいち私の文章まで目を通していただいた梅田さんには感謝したい。
さて、荒川さんのコメントに戻ろう。私もしつこいとは思うが。
おっしゃることはもっともですが、それは「まつもとさん」だから言える事ではないでしょうか。
(その後のコメントで)
私は凡庸な「その他大勢」の職業プログラマです。「オープンソース・エンジニア」の暮らしはある種の理想ですが、現実的な距離には存在しません。どうしても「オープンソース・エンジニア」たろうとするなら理想と現実を埋める「何か」が必要です。梅田望夫さんのコラムには「何か」を暗示するものがありますが、失礼ながらまつもとさんのコメントにはそれが見当たりません。
先の「にっき」では、荒川さんが期待している「何か」についてはそもそも扱ってはいなかったのだが、 ちょっと面白いので改めて考えてみよう。
まず、最近しばしば「まつもとさんだから」とかいうニュアンスの発言を耳にするのだが、 なんか「お前は特別」と言われているように感じるのだが、実際には私はあんまり特別ではない。
より正確な言い方をするならば、「私の現在のポジション」は特別だが、 私というエンジニアはそれほど特別ではない。 技術力という観点からみれば、どちらかというと凡庸な部類だろう。
違いがあるとするならば、フリーソフトウェアの開発にかけてきた時間と熱意と、それから若干の幸運だろう。
それが「何か」である。 オープンソースエンジニアになるために必要な「何か」は、 口をあけて待っていることではなく、そのために一歩踏み出すことではないかと。
もっとも、一口にオープンソースエンジニアといってもさまざまだ。 ここでは私の知っているいくつかの種類のオープンソースエンジニアと そこへの道を紹介してみよう。 ここではオープンソースエンジニアを「オープンソース開発によって生活するエンジニア」と定義する。
まず、第一にはオープンソース周辺エンジニアがあるだろう。 つまり、オープンソースソフトウェアを使ってソリューションを構築し、 必要に応じてオープンソースソフトウェアそのものに手を入れるエンジニアだ。 現在ではオープンソースソフトウェアをコンポーネントとしてソリューション構築している企業は かなり多くなっている。そういう会社に転職すればこのタイプのエンジニアになるのは非常にたやすい。 あるいは自分が現在所属する企業を説得するという手もありえないことはない(難しいだろうけど)。
次に考えられるのは、企業内オープンソースエンジニアだ。 これは企業が開発するオープンソースソフトウェアの開発担当エンジニアだ。 これもそのような企業に転職することが必要なアクションだ。 また、そのような企業に所属するだけでだれでもこのタイプのエンジニアになれるわけではない。 企業としてそのようなプロジェクトを任せられるようなエンジニアである必要もあるだろうし、 多分に運も必要だ。
ちなみに、うちの会社でも、 これらのタイプのエンジニアを募集している。 私の目の前には実際に業務命令でオープンソースソフトウェアを開発しているエンジニアが何人もいる。 うちの他にもこのような企業は、まだ多くないが、いくつも存在している。
最後に、これがオープンソースエンジニアとして一般にイメージされるものだろうが、 自分が好きで始めたプロジェクトが認められ、その開発だけで給料をもらい、 生活を維持するエンジニアがいる。 しかし、正直なところ、このタイプのエンジニアは非常に少ない。日本でも数人しかいないんじゃないかな。
このようなエンジニアになるためには
必要がある。これは大変な時間と熱意と幸運が必要だ。 もっとも、状況は10年前よりは確実によくなっている。5年後にはもっと良いだろう。 問題は「あなた」がそれだけの時間と熱意をかけられるか、 オープンソースエンジニアになるためのアクションを取れるか、という点にある。
今のままの生活を取るか、夢(と理想の生活)を取るか。no pain, no gain.
追記
誤解されないようにはっきり書いておこう。現在なら、 ただ単に「オープンソースにかかわるエンジニア」になるのはたやすい。 しかし、私は「あなたのなりたいオープンソースエンジニア」になるのは簡単だとか いうつもりはない。それは人によって違うし、自分の人生は自分で決めるものだ。
先日トラックバックを送ったら、excerptがRDのまま送ってしまったので、 きちんと表示されない。これはやはりHTML化して送るべきではないだろうか。
ということで、修正。plugin/tb-send.rbを以下のように変更してみた。
# excerpt = @cgi.params['body'][0] if excerpt.empty? excerpt = @diaries[@date.strftime('%Y%m%d')].to_html({}) if excerpt.empty?
まだ、きちんとテストはしてないし、そもそもtDiaryの構造がよくわかってないのだが、 なんとなくHTML化しているようだ。
私のここ数日の論の前提には、おそらく「価値あるものならば、それは金になるはずだ」というのがあるのではないかとのツッコミ。
一般論としては確かにそう思っている。 もちろんオープンソースソフトウェアと一口に言ってもそれぞれで、 金になりやすいもの、なりにくいもの、 あるいは成功するもの、失敗するものがあるだろうが、 そんなことは当たり前のことだよね。
私が言いたいのは、「できる」、「昔よりは簡単になっている」ということで、 「誰にでもできる」、「努力なしでできる」と言ってるわけではない。
また、オープンソースで生活できるからと言って、 誰もがそういう道を選ばねばならないわけではない。 束縛を嫌って生活のかからないかかわり方を選ぶ人だっているだろう。 それはそれで立派な態度だ。