«前の日記(2003年06月11日) 最新 次の日記(2003年06月13日)» 編集

Matzにっき


2003年06月12日 [長年日記]

_ [Linux] mozilla-firebird

今までMozillaを使っていましたが、今日からMozilla Firebirdに置き換えてみました。 たしかにちょっとだけ機敏に動くかな。 どうせメールリーダなどには使ってなかったので機能的にはこれで十分。

数日使って様子を見よう。

_ [OSS] 「オープンソース」の秘密

あ、そうか。別に俺定義を駆逐する必要はないんだ(どうせ無理だから)。 気負い過ぎていたかもしれない。

こういうのはどうだろう。

「オープンソース」でうまくやりたいなら、 オープンソースに隠されている「秘密」を知らないといけないんです。

ってのは。で、「うまくやりたい人」がその「秘密」を聞いてきたら、

うふふ、秘密です。

「オープンソースの定義」その解説を研究したら分かるかも。

と返すのだ。自分で学んで得た知識は役に立つぞ、きっと。

口をあけて教えてもらえるのを待っている人は成功できない、と。 成功したいなら甘えてちゃいけないよね。

やりすぎ? 不親切すぎるかなあ。

じゃあ、「本当に知りたいなら教えてあげます」は?

_ [OSS] エンドユーザへのスタンス

ユーザに対するスタンスですか。 前にも書いたように、 純粋なエンドユーザは「オープンソース」とは直接関係ないんです。

ですから、正直なところ私は純然たる「エンドユーザ」に対して どのようなスタンスを持つべきかということについて 結論を持っていないのです。

ちょっと考えてみよう。

まず「エンドユーザ」という言葉が指すものは「オープンソース」以上に広くて、 人によってとらえ方も違いそうで、そもそも「有意義なスタンス」が存在できるかということさえ疑問だ。

仮に「エンドユーザ」が単なるソフトウェアのユーザであった場合、彼らになにを伝えるべきか。

「ソフトウェアの自由」は現時点での彼らには意味がない。 彼らにとってソースコードはあってもなくても同じだ。 重要なのは「無料かどうか」しかない。 そのような彼らは「オープンソース」だろうが「フリーソフトウェア」だろうが、 無料ソフトウェアとしか捕らえないだろう。

しかし、そういう彼らもある時プログラミングに関心を持ち、 開発者の一員になるかもしれない。だから、彼らに今伝えるべきメッセージは、

「オープンソース」っていう今までにないやり方があって、 そのおかげでこのソフトが無料で手に入るんだよ。

でも、無料ってだけじゃなくて、 そのやり方でプログラムを作ると開発がすっごく「楽しい」んだって

ではないだろうか。ここで「楽しい」の部分は適宜「成功できる」とか良さそうな言葉に置き換えるとして。 要するに、将来に開発者になった時にじゃまにならない程度のメッセージを伝えれば良いということだ。

しかし、上のはかなり方便な説明だな。

  • 「今までにない」はほんとじゃない
  • ここで行ってるのは厳密には「オープンソース」ではなく、「バザール開発」ではないか

いかん。もうちょっとマシな説明を考えていく必要があるな。

_ [会社]新人歓迎会

中途入社の歓迎会。おなか一杯。服が煙草臭い。勘弁してほしい。

_ [OSS]オープンソースとバザール開発

たくさんのコメントありがとうございます。私にとっても刺激になります。

オープンソースはバザール的な要素を含むかということですが、 これは微妙です。というのも

  • 少なくとも「オープンソースの定義」にはバザール開発を含まない
  • その背景も「ソフトウェアの自由」であってバザール開発は含まない
  • 全てのオープンソースソフトウェアの開発がバザール的とは限らない

という事実があり、また一方では

  • 「オープンソース」のポジティブなイメージはバザール開発と不可分
  • 「オープンソース」の楽しさにもバザール開発は不可欠

というも事実だからです。

_ [TV]スペイン語講座

ふと思い立ってNHK教育のスペイン語講座を眺める。 なんか理由は分かるような気がするけど。

...だめだ、やっぱり新しい言語は覚えられない。プログラミング言語ならまだ大丈夫だと思うんだけど。 でも、Haskellとか身についてないよなあ。

_ [OSS]エンドユーザに対するスタンス(その2)

ああ、エンドユーザとひとくちに言ってもレベルがそれぞれという罠。

  1. 単なるユーザ。フィードバックのつもりもない
  2. バグレポートなどフィードバックするつもりはあるユーザ
  3. プログラムの改善に協力する(意見を言うなど)とか、もう少し積極的なユーザ
  4. パッチを作るなど開発にかかわるユーザ(もう開発者か)
  5. 開発者

で、(1)のレベルのユーザについては 前述のような「将来じゃまにならないようなメッセージ」が必要なんだろうなと思うんです。 あ、hsakaさんがおっしゃるようなrespectの気持ちはぜひ持ってほしいなと思います。 XPでもオープンソースでも日常生活でもrespectの気持ちは重要ですよね。

で、Tmbさんの意見である宣伝・広報活動については微妙*1な気持ちを持ってます。純粋に開発だけを考えるとユーザはそんなにたくさん必要ないんですよね。 むしろ、広がりすぎたコミュニティやいろんなタイプのユーザに振り回される危険性まであります。 船頭多くしてってやつですね。だから、開発者としての私は「そんなに要らない」と思ったり。 むやみに(1)から(2)への移行を勧めるのも考えものです。

しかし一方、ビジネスとして成立したり、有効な支援を受けたりするためには知名度や普及度が大いに関係します。 だから、オープンソースエバンジェリスト(自称)としての私は「ぜひ必要」と思ったりするんです。 かなり矛盾してます。まあ、開発者と中間層の立場をひとりで兼ねようとするから起きる矛盾なんですが。

ユーザ数についての暫定的な結論:

  • 開発者はたくさんのユーザを必要としていない
  • 中間層はたくさんのユーザを必要としている
  • たくさんのユーザは中間層を通じて開発者に対する間接的なメリットになる

*1  なんか「微妙」ばかりだけど


«前の日記(2003年06月11日) 最新 次の日記(2003年06月13日)» 編集