«前の日記(2005年02月02日) 最新 次の日記(2005年02月04日)» 編集

Matzにっき


2005年02月03日 [長年日記]

_ おわび

先日来のアクセス増加のため(スラッシュドットの影響が大きいらしい)、 昼休みや深夜などには負荷が高くこの「にっき」をはじめ boron.rubyist.net 上のたくさんのページが閲覧できないことがあったようだ。

調べたら日に何度もロードアベレージが30とかになっている。まあ、boronはもともとかずひこくんのマシンだったものをrubyist.netやmodruby.netなどが間借りしているのだが、 どうもマシンパワーが不足しているようだ。先日、全面的にmod_ruby化を行ったりしているのだが、焼け石に水らしい。

マシンリプレースが必要か。しかし、原資はどこから?

_ [特許] 一太郎の敗訴 自由な開発環境の整備も必要

ソフトウェア特許の危険性について触れた社説。こういう「一般向け文書」はありがたい。

_ デブサミ2005 (1日目)

朝、道が凍結していたが、心配したほどではなく、無事に飛行機で東京に。 そのまま表参道の青山ダイアモンドホールへ。

参加したセッションは以下の通り。

  • XP事例カタログ

    「dRubyの方から来ました」の咳さんをはじめとしたXP実践の事例紹介。 「忍者式テスト」とか「スタンダップミーティング」とか、実際にうまくやっている例は参考になる。 もっとも、私はうちのチームで一番XPを実践していないので、 他のチームメンバーには常識なのかもしれない。

  • Web-DBシステムチューニングの方法

    割とフツーのDBチューニング。私はDBに関しては素人以下なのだが、 みなさん、日々こんな苦労をしているのね。

  • 軽量Javaへの潮流

    「Struts + Spring + JSP」でJ2EE5.0を先取りって話。 「新しい技術で楽ができる」ことが強調されるが、 それはつまり「今のJava技術者」がめちゃめちゃ苦労していることを意味するような気がする。 これらがオープンソースソフトウェアであるのは確かだが、 この内容は「オープンソース」トラックではないような。

  • なぜ「オープンソース」でうまくいくのか(前編)

    副題が『オープンソース的開発手法の秘密をさぐる』。 Linuxの開発体制をベースに「オープンソース的開発手法」 あるいは「バザール手法」について解説。 私(とその周辺)には物足りなかったけど、 今日の聴衆の大半にはちょうどいいレベルだったのかも。 ビジネス的な話はあえて避けたみたい。

    聴衆における「スーツ族」の割合がめっぽう高いのも印象的だった。

  • なぜ「オープンソース」でうまくいくのか(後編)

    後半。副題は『まつもとゆきひろが語る「オープンソース的開発手法の現実」』。 後半になるとスーツ族とギーク族の割合が変化しているような気が。

    風穴さんが質問して、私がそれに答えるというスタイル。 私のバックグラウンドやらRubyの開発動機やら開発体制やら。 風穴さんの意向でオープンソースの思想やらビジネスやらの話は避けて、 開発スタイルや開発者の気持ちなどにフォーカス。 当たり前だが私にとってはなにも新しい話ではないので(みんなどこかで話したような気がするし)、 これを聞いた人たちがどう思ったのかはよくわからない。 私の周辺にいる人たちにとっては新規性は無かったみたいだし。

    最後の質疑応答でややビジネス的な話が。うち(netlab.jp)が差別化にオープンソースを使っている話を紹介した。あと、時節柄、特許の話が。それに対する答えは

    • オープンソース開発者は個人だったり零細だったりすることが多いので事前に特許検索とかしていることは期待できない。よって、特許侵害の可能性が高いように思えるかもしれない。
    • しかし、月間2万件(情報分野のみ)も申請される特許から自分の開発しているものに重複する特許を発見することは専門家でもほぼ不可能だ。
    • 現実にIBMやマイクロソフトのようなしっかりした法務を持つ会社でも特許訴訟の対象になっている。いや、むしろそういう会社の方が標的になっている(お金を持っているから)
    • よって、オープンソースが特に危険ということはない。
    • もっともソースを公開しているからばれやすいということはあるかもしれない。 逆にお金を持っていないから訴訟の対象になりにくいということもあるかも。

    結局、ソフトウェア特許はオープンソースに対する脅威というよりは、 ソフトウェア産業全体に対する脅威だと思う。良い機会なのでもっと議論を深めるべきだ。

その後、有志と表参道(から渋谷方面にちょっと移動した)インド料理店で食事。

参加者は、(私の席から時計まわりに)Shelacyさん、 naruseさん、かずひこくん、tellmeさん、 えとーさん、風穴さん、くろももさん(名前、間違ってないよね)。

今回はRuby関連の集まりとしてはありえない男女比であったような気がする。

えー、個人的にはおなかが空いていたのでがつがつ食べることばかりで(カレーおいしかった)、 あまりお話できなかった人もいましたが、私は楽しかったです。

参加表明してたのに、来れなかった人は残念でした。またの機会に。


«前の日記(2005年02月02日) 最新 次の日記(2005年02月04日)» 編集