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Matzにっき


2004年11月27日 [長年日記]

_ fork システムコールを用いた並列ガーベジコレクション

「IPSJ 論文誌 Vol.45 No. SIG 12 (PRO 23)」より。

forkを使ってサブプロセスでGCを行っちゃうというアイディア。 forkするとメモリ状態がまったく同じままコピーが得られるので、 ライトバリアが不要というアイディア。結構秀逸かも。 OSのcopy-on-write機能が働くので性能的にも有利かもしれない。

「既存のGC実装に簡単に適用できる」ということだが、 マークフラグを独立したビットマップで持ったり、 回収するオブジェクトの情報の受け渡し方法を(mmapとかで)工夫しないと性能が出ないような気がする。 特に前者は気をつけないと全部のページのコピーが発生してしまうので、 せっかくのcopy-on-writeが無意味になってしまう。

性能評価が知りたいものだ。

とはいえ、やっぱり「forkのないOSでは動かない」というのは厳しいかな。 某有名なOSをまったくサポートできないってことだものな。 その辺が論文掲載に至らなかった理由だろうか。

_ [映画]『B0000YTR6Y』

B0000YTR6Y

「不運続きのニュースレポーターがひょんなことから、3週間だけ神様のパワーを授かってしまった」というような話。大量の「祈り」を処理するためパソコンを使うっていう表現が面白かった。 祈りを検索したりね。後は自由意志は左右できないっていうルールも。結局はほのぼのと終わる。 そういえば、なんだか似たようなプロットの映画が以前にもあったような気がする。

さて、私が「3週間だけ神様のパワーを授かってしまった」というお題で話をつくるとしたら、 どんな話をつくるだろう。

『理解』風味
『4150114587』(テッド・チャン)収録。 当初は絶大なパワーにとまどうが、パワーとともに認知能力なども上がり、 次第になすべきかを理解する。別のスーパーパワーの持ち主と対立したり。
『4151101012』風
上の『理解』のバリエーション。 パワーとともに、絶大な知的能力を授かった彼の心象の表現と、 それを失ってしまってからの彼に残された「気持ち」の表現、とか。
夢落ち
パワーが暴走し、世界中がめちゃめちゃになってしまう。 ほとんど破滅した世界に一人残された「彼」は、 最後のパワーを使って時を巻き戻すのだった。 自覚なしに元の生活を続ける「彼」。 しかし、彼の気持ちの持ちようは以前と少し違っているのだった。

うーん、いまいち。

結局自分が「パワーにはそれを使いこなす知性が必要」と考えているのがよくわかるな。


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