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Matzにっき


2003年12月01日 [長年日記]

_ [言語]Groovy

JVMベースの新言語。Rubyを意識した新世代の言語が登場することは喜ばしい。

  • 名前が長いぞ(6文字)
  • 新規性が少ない気がする。結局ブレースが使えることと、JVMで動作することくらいしか嬉しさがない?
  • いや、それでも十分嬉しい人はいるか。"end"がだめでRubyを使わない人もいるらしいし
  • ブロックの文法がちょっと納得できない。 ブロックはクロージャを引数にしているだけのようにも見えるが、 Rubyのようにブロックを特別扱いしているように見える例題もある
  • Mapにも [] を使うのは面白い。 しかし、空のMapはどうするつもりか。 AWKやPHPのようにListはたまたまkeyが整数のMapというわけではなさそうだし。
  • ほぼ同じ文法でデータが表現できるGroovy Markupは 面白いかも。でも、YAMLの方が便利なような気も

_ [映画]『Matrix Revolutions』

映画の日で割引ということでようやっと見に行った。 個人的な評価は『Revolusions』はMatrix 3部作の中では一番高い。

なぜか。

1作目の『Matrix』はサイバーな雰囲気を構築するのに成功していてなかなか良い映画だと思ったが、 一番最後に主人公が空を飛ぶシーンで幻滅。ここまでしといて空を飛んで終わり? 『ネバーエンディングストーリー』のラストをほうふつとさせるがっかりのさせ方。 ネオの能力は結局仮想空間内でしか有効でないわけで、コンピュータと対立するということは 結局自らの唯一の武器である力を否定することになる構造もいまいちだった。

2作目の『Reloaded』の評価は3作の中で一番低いけど、良い点もあった。 つまり世界を膨らませることで1作目の不備を埋めることができる「可能性」を提示したことだ。 しかし、2時間ではそんなものは表現しきれず、 結局伝わったのは「CGつきワイヤアクションはすごいんだぞ」というメッセージだけだった。 全然納得できなかったんだけど、「まあ3部作ってことだから最後まで見て判断しよう」と我慢する作品だった。

こういう経緯での3作目。かなりの謎は説明されずに残ったが、 時間的制約から考えれば、まあ世界観の構築には成功した方だろう。 「100人スミス」みたいなこけおどしのくだらないシーンがなかったのも評価できる。 最後の一騎討ちは陳腐だが、まあ対立をビジュアルに表現しなければならないという映画の制約から妥協しよう。

だが、しかし、個人的には、もうちょっと違う世界を見せてほしかった。 1作目では「現実」は実は人類がコンピュータに管理された仮想現実(マトリックス)であったという世界、 2作目では、この仮想現実の世界は最初のものではなく繰り返し作られては滅びてきたという世界を提示したわけだ。

ならば、3作目では2作目の世界観をもう一段深めた、 たとえば「(仮想でない)現実世界も実は誰かに構築された閉じた世界であった」というような、 「バベルの図書館」や「リバーワールド」のような世界を見せてほしかったなあ。ぜいたく?

ところで、忘れた頃に『Matrix Resurrection(復活)』とか作りそうじゃない? 柳の下に何匹どじょうがいるか。


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