出雲便が満席だったので米子便を使って東京へ。 東京の方が最終便の時刻が遅いから土曜日には有利かもしれない。 なぜかゲート前で社長と一緒になる。
で、品川で待ち合わせて、私、笹田くん、江渡さんで、 Smalltalkのデザイナーでありチューリング賞受賞者でもあるAlan Kay(と仲間たち)と 昼食会。なんか、すっごい緊張してるんですけど。
彼の考えている「子供たちのためのプログラミング環境」のために RubyなどSqueak以外の言語コミュニティからアイディアを借りたい、 ということで今回のセッティングであった。大島さん、ありがとう。
なかなか面白い話が満載であった。
WikiWygWysiWikiについて
「WisiwygなWiki」というのが語源なのは見ただけで分かるのだが、 実際はそれどころではない。プログラマブルなプレゼンテーションくらいから。 目指すのは21世紀のHyperCardというのが近いかもしれない。 簡単なデモの範囲内ではViscuitに似てるけど、 ターゲットはもうちょっと違いそう。
Alan Kayの名刺
名刺ジャンケンで強そうなのをゲット。Bjarn Strustrupに負けない強さだろう。
AlanとRuby
Alan Kayに「Rubyは好きだ」と言わせた。それなんて罰ゲーム?
AlanとSmalltalk
えーと、「Smalltalkのことをもう愛していない」とか、 「Smalltalkは死んだ言語(dead language)だ」とか、 「Smalltalk-80よりもSmalltalk-76の方が私の理想に近い。Smalltalk-76はRubyに似てる(え?)」とか、 「コンセプトの私(Alan)、実装のDan (Ingalls)とのせめぎあいがあった。Smalltalk-80は私の手を離れ、Lisp好きの影響を強く受けてた」とか、 「おいおい、そんなこと言っていいのか」というネタ満載だった。
拡張可能文法とマクロ
「言語は拡張可能であるべきだが、Lispのマクロは正しい解ではない(強力過ぎ)」という点で意見が一致した。実際、私は20年近く遅れてSmalltalkの真似をしてきたわけだが、それでもなお、Alanとここまで意見が一致するのは意外であった。
その他、古い言語について
IMPとかLucidとかいう初耳の言語の話をいくつか聞いた。 後で調べなきゃ。歴史に埋もれていったアイディアや言語はたくさんあるんだなあ。
歴史は繰り返す・悪貨は良貨を駆逐する
すばらしいアイディアが世に広まるとは限らない。 過去の反省に基づかないで「新しい」技術が誕生するとは限らない。
特にWWWブラウザについて、そう思ってるみたい。 全然プログラマブルじゃないし(Ajax(JavaScript)はあるけど、貧弱だし、ドキュメントモデルはHTMLページレンダリング以外の目的には最悪)、 せめてHyperCardのようなものが普及していれば。
彼らはWikiWygのようなものを、できるだけダウンロードなしに実現したいのだが、 そのためには現在のクライアントサイド技術はあまりにも弱い。
ああ、他にも一杯聞いたような気がするのに。全部録音すべきであった。
追記
えーと、一部で「Alan KayはSmalltalkよりもRubyが好きだと言った」といった言われ方がしていますが、 私が聞いたのは「(もう)Smalltalkを愛していない」と「Rubyは好きだ」です。 それぞれ別のタイミングで。
両方の発言を組み合わせて上記の結論を引き出すのは不可能ではないけど やりすぎだと思う。
笹田くんのオフィスに寄ってから、東京支社へ。 原稿用の下調べをする。
テーマは「キャズム」。 先月のマーケティングネタのときにはみだしてしまって削った部分を 膨らませて2ページ。まあ、テーマが決まっているから書きやすい、のだが、 どうにも時間がない。
イベントと原稿〆切が重なると辛いなあ。