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Matzにっき


2005年02月01日 [長年日記]

_ [家族] 学級閉鎖

寒いと思ったら雪が積もっている。インフルエンザもはやっているらしく、 次女と長男のクラスは学級閉鎖。長女はちょっと不満げな顔で登校。 もっとも自宅に残った子らも外出禁止なのでうれしいわけではない。 まあ、流行拡大を避けるためには当然の処置であろう。

しかし、考えてみれば社会人は風邪引いても仕事休めなかったりするわけで、 企業でのインフルエンザ拡大とかは現実的な脅威だったりしないんだろうか (うちの会社の連中は(よっぽど仕事が煮詰まってない限り)ちゃんと休みます)。

_ 『スモールコンパイラの制作で学ぶプログラムのしくみ』

スモールコンパイラ の制作で学ぶ プログラムのしくみ(石田 綾) 昨日、本屋に立ち寄ったら目に止まった。 恩師(中田育男先生)が監修していらっしゃるし、 価格も手ごろだったのでレジへ。 と思ったら、財布にお札が一枚も入ってなくて、あわててカードで購入。

教え子としては朝倉書店の『コンパイラの構成と最適化』も購入すべきなんだろうけど、ちょっとお財布にやさしくなくて(実は脳にもやさしくない)。

で、今日になって雪降る午前中に読んでみたら、なかなかよろしい。

文系出身で法政大学の大学院、IT Professional Courseに入学した著者は、 中田先生の「コンパイラはコンピュータサイエンスの基礎である」という言葉に だまされて惹かれてコンパイラをテーマに選び、 とうとう1年で携帯電話で動く小さなコンパイラを作り上げるところまで到達したという。 本書はその彼女が文系の視点でコンパイラの本を書き上げたのだそうだ。

1章は「たとえ」をつかってソフトウェアの働きについて解説しているのだが、 これはまさに私が書きたかったアプローチだ。某出版社から企画を通すところまで行ったのだが、 時間が取れずとても書けなかったので私の方からキャンセル。残念だ。

2章以降はJVM上で動作するCell言語のコンパイラとインタプリタ(VM)を作っている。 これも(別の本で)書きたかったテーマだ。 Rubyは元々書籍の解説用言語としてプロジェクトが始まったことを知っている人はもはや少ないが、 『(言語を)作りながら学ぶオブジェクト指向プログラミング』というような本になるはずだったのだ。 あまりにも売れそうにないので早々にキャンセルされたんだけど。

というわけで、「まつもとに(才能が足りなくて)書けなかった本」の片鱗がここにある、ということで。 言語に興味のある人は眺めてみて損はない本だと思う。他の中田先生の本よりもずっとやさしいし。

_ [特許]ジャスト「一太郎」の販売中止を命じる 松下アイコン訴訟で判決

また、えーっというような判決が出た。この特許の内容は

「アイコンの機能説明をさせる第1のアイコン」をクリックしてから第2のアイコンをクリックすると、第2のアイコンの機能説明をしてくれる処理

である。

こんなの誰でも思いつくんじゃない? こんなアイディアを本当に保護する必要があるわけ?

更に、こんなのに対して「製造・販売の中止と製品の廃棄を命じる判決」というのは、ちょっと。

ジャストシステムには、ぜひとも高裁まで争って逆転していただきたい。 また、私は当面、松下(Panasonic)の製品を買いません。 長らくLet's Noteユーザでしたが、今はIBMだし。

しかし、私の懸念はこれだけではない。松下がこのような「特許闘争」を行う企業体質だとすると、 いつの日か彼らの持つ特許2945753号、2982752号、2982753号を「行使」して、 日本を大混乱に陥れないとは限らないということだ。

いや、待てよ。

それで特許の「問題」がクローズアップされればむしろ望むところなのか? だとすれば「Matzにっき」は松下電器産業を(普通とは違う意味で)応援します。

追記

いくらなんでも「応援する」は不謹慎だと思うようになった。 訂正したい。


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