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Matzにっき


2004年06月18日 [長年日記]

_ 未来の作り方

山田祥平のRe:config.sysで引用されていた言葉に感動した。

今から五〇〇年前の中世ヨーロッパにでかけていって、グーテンベルグが発明した印刷術を評価することを依頼されたとしよう。たぶん、われわれは自信を持って、印刷術は普及しないと断定するにちがいない。その理由は次のようになる。第一に、印刷はきわめて高価であるから写学生の筆写に価格面で太刀打ちできない。第二に、ほとんどの人が読み書きを知らないのだから、複製を大量に必要とする市場がない。第三に、一五世紀当時は、本当に重要な問題は宗教に限られており、個人のプライベートな内面の思想の問題であったため、これは印刷物によって伝達できる内容ではない。それ故に、印刷術は絶対に普及しない。普通の観察力と判断力を持つ人ならば、かならずやそう断言したであろう。

[「アラン・ケイ」(アスキー、1992年)より、監修の浜野保樹氏の言葉]

いや、まったく。半端な知識は未来を予測するのに役立たない。

そして、未来を予測する適切な方法をアランは教えてくれる。

The best way to predict the future is to invent it.
(未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ)

この言葉は僕の着ているTシャツの背中にも書いてある。重要なのは新しいものを作ることだ。 たとえ、それが生き残らなくてもすくなくとも人類の多様性には貢献する。

_ [言語]挑戦!言語塾

日本人で世界で使われている言語をデザインした人は少ないようだ。 しかし、決して日本人が言語を作っていないとか、言語に興味がないと言うわけではない。

実際、この2週間ほどのうちで二人から「自分も言語を作りたい」という言葉を聞いた。 私に対するお世辞の一種である可能性もあるが、世の中「自分の言語を作りたい」という思いの人は 思ったよりもたくさんいるのではないだろうか。 『自分の言語の作り方』とかいう本が『コンピュータ・サイエンス』誌の別冊で出たこともあったように思う。

しかし、そういう人の中で実際に言語を作る人はそれほど多くないようだし、 ましてや、そういう言語が個人のおもちゃを越えて広く使われるケースはほとんどない。 ある意味Rubyは貴重な例外といえるかもしれない。私はラッキーだった。

しかし、「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、新しい言語をデザイン(と実装)したい人が集まって、 意見や情報を交換し、相談するような場があれば、これから第二第三のRubyが日本から出てくることもあるかもしれない*1。あるいは、他の言語に影響を与えるようなアイディアが登場するかもしれない。

そういう場(メーリングリストとか)があれば参加したいという人は、 このエントリに(アドレスを入れて)ツッコミをいれてほしい。 あるいは直接私にメールをくれてもよい。

ある程度人が多いようならどこか適当な場所にメーリングリストでも作ろうと思う。

名前はlangsmith(言語鍛冶)かな。海外にもそういう名前のリストがあるらしい。

*1  ここで日本にこだわっているのは、私が日本語が一番得意という以上の意味はない

_ [家族]ふつうがスキ

今日、散髪した息子との会話

私: 散髪してかっこよくなったねえ
子: かっこよくないっ
私: あ、「かっこいい」より「かわいい」って言われたいんだっけ
子: 「かわいい」でもないっ
私: じゃあ、どういうのがいいわけ
子: 「ふつう」がいい
私: そうなのか
子: うん
私: じゃあ、散髪してすっごく「ふつう」になったよ。とっても「ふつう」
子: (ぷいっ)
私: (あ、怒らせちゃったかな...)

普通って難しい。


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