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Matzにっき


2004年06月12日 [長年日記]

_ Tシャツプレゼント応募者募集中

まだ応募がそんなに多くないので、当たる確率は高いですね。

「XLじゃ大きすぎっ」という話をちらほら聞くようですが、 確かに大きいです。でも、まあ、私くらいの体格の人でも着れないことはないくらいのサイズですね。 タグにはXL(46-48)って書いてあります。この数字はなんの意味だろう。

あと、「私の負担が...」なんて書いたので心配した方もいらっしゃるようですが、 結局(LL Weekendで直渡しを希望する人以外には)普通郵便で送ることにしました。着払いとか高いし。 その辺は遠慮なくどうぞ。

_ [morg]メールオーガナイザー

なぜだか今ごろになって、5月18日のエントリへのコメントが。

WinFS を先取りするような、ハードディスク・オルガナイザー のほうがメール単体のものより開発の流行では? デジタル家電の コンテンツ検索とかもホットです。

[MMXさん]

いや、分かるんですけど、やっぱ、必要は発明の母というかなんというか。

なぜ今ごろ「メール」オーガナイザーかというと、実は 私はメール以外のローカルファイル検索を今以上に必要としていないんです。

私のマシンにあるファイルのほとんどは、メールを除くと

  • OSのバイナリパッケージに所属するもの
  • オープンソースソフトウェアのソースコード
  • プレゼン資料や原稿
  • メモや電子化した聖書などの雑多なデータ

で、これらはlocateとgrepで十分検索可能なのです。 適切な名前のディレクトリに適当なファイル名でしまっておけば、 絞り込みも簡単ですぐに見つかります。 量的にも質的にも全然困ってない。

ところがメールに関しては、Spamを除いても相当な量で、 しかも構造化の手段がフォルダとか日付とかのような不十分な手段しかないので、 すごく困っているのです。データ量が増えるとクライアントが遅くなるし。

また、メールってのは見つけた後、読んだり書いたりするために適切なインタフェースを要求するので、 専用クライアントの方が良さそうに思います。

Bloomba - http://www.statalabs.com/ Chika Watanabeさんの日記 - http://blog.neoteny.com/chika/archives/006905.html 「メールがやってくると、逐次index化」、「検索結果をViewと呼ばれるカタマリで見せてくれる。」だそうです。

[やまさきさん]

参考にさせていただきます。Bloombaは存在は知っていたのですが、今回初めてデモを見ました。 なんかWorld's Firstとか言ってるけど、そんなに革新的な印象はないですねえ。

で、バックエンドの設計はあらかた終わりました。検索エンジンはQDBMを使うつもりです。

フロントエンドは、自分用に(cmailを改造して)Emacsクライアントを用意するつもりです。 Webクライアントを作るというのも面白いかもしれません。 私自身は文章をブラウザのTextareaで入力する気にはならないので(たとえmozexを使っても)、 Web版は使わないでしょうけどね。

あ、もうひとつ検索に困ってるデータがあった。取り溜めたデジカメの画像。 でもこれをどうやって検索しよう。「娘のピアノ発表会」とかでは絶対検索できなそうだよなあ。

_ Hermes

電車男氏とエルメス嬢のエピソードを女性の視点から記述した小説。「電車男」にはまった経験のある私としては、えらく面白い。性格づけもうまいし、文章も軽妙だ。「電車男」を知らない人が読んだらどう思うのかな。今度、妻に読ませてみよう。

仕事が忙しくなってきたので、第5話はもうしばらくかかりそう」ということだが、続きが楽しみだ*1。今のままの、ふんわりした雰囲気のまま続いてほしいものだ。

あんまり注目されるとプレッシャーだろうから静かに見守っていよう、 なんて、思ってたら「デイリーやじうま」で取り上げられてしまった。今ごろすごいアクセス数になってるんではないかと。Rubyで書かれたというCMS(なのかな?)「ccweb 0.1b (for ruby 1.8)」が元気に動作し続けることを祈るものだ。こんなところでRubyに会うなんて。

ところで、全っ然関係ないですが、スティーブくん(仮名)たちは私の友人の後輩です。 もう時効だとは思いますが、困った牧師さんだ。

*1  今見たら第5話が出てるじゃん。お疲れさま

_ 「禁ずる」

庭に撒く野菜の種を買おうと、種苗コーナーを眺めていると、以下のような文が書いてある種があった。

この種を、再生産、研究・分析のために用いることは禁じられています。

要するに「毎年、種を買え」、「(同業者は)分析するな」という種苗メーカーの望みを表現しているものだとは思うのだが、「しないでください」ではなく、「禁じられています」とはどういうことだろうか。

他人の自由を制限するには根拠が必要ではないか。 この「禁じている」のはなにを根拠に禁じているのか。

特許法? しかし、少なくとも日本ではユーザーは特許に縛られない。 件の種は(特許でユーザーを制限できる)アメリカからのものらしいから、その辺が関連しているかもしれない。 しかし、特許は属地主義だし。

契約? しかし、袋入りの種を買う行為を種苗メーカーとの契約であると考えることができる判例は存在しなさそう。 シュリンクラップ契約? 「この袋を開けることによって以下の条件に同意したこととします」とか。

著作権法? ご冗談でしょう?

ちょうど、共謀罪について読んだところだったので、しばらく考え込んでしまった。

人間の自由は限られた場合にしか制限できない

近代憲法のもとでは、人は生まれながらに基本的人権を享有します。国家権力がある人の自由を制限できるのは、ある人が自由にふるまうことが、他の人の自由と矛盾・抵触するため、それらを調整する必要があるときに限られます。これを刑罰についていうと、国家が刑罰権を発動しうるのは、その人が社会に対して害悪をもたらす行為をした場合に限られる、ということです。

これは2つの内容をもっています。1つは、処罰の対象はあくまで「行為」に限られることです。単にある考えや思いをもっているという、「行為」としてあらわれていない段階では、国家が人を処罰することは許されていません。もう1つは、その「行為」が社会に対して「害悪をもたらす」ことが必要だということです。そうでない限り、人はどのような「行為」をしようとも自由であり、そのことに国家刑罰権が干渉すべきいわれはないのです。

安易に自由を手放してはいけない。安易に人の自由を制限してはいけない。

結局、そういう文言のあるのは避けて違う種を種を買ってきたのだった。 おいしいトウモロコシができるかな。

その後、子供たちとF1(一代交配)について話し合ったのだった。

私: この野菜の種をまいて、花が咲いたらまた種が取れるよね。
子: うん。
私: その種を蒔いても同じように良い野菜はできないんだよ
子: えー、なんで?
私: F1と言ってね。
子: 車のレースでしょ。
私: ちがう、ちがう。(...以下説明略)
子: そんなのずるいじゃん。
私: いや、自然の法則だしねえ。種屋さんに都合がいいのは確かだけど。

この調子では、子供が「知財戦略」を理解できる日は遠そうだ。


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