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Matzにっき


2005年11月12日 [長年日記]

_ [原稿] 完成、あとひとつ

日経バイトはついに完成。なんか気が緩む。でも、もうひとつ(オープンソースマガジン)残っているのだ。

_ [Ruby] うさんくさい「Joy」

新山さんのメモから。

どうでもいいけど、Ruby 自身にしろ RoR にしろ、彼らはやたらと "joy" だの "使って楽しい" だのを強調するが、これ自体がそもそも非常にうさん臭い言葉だよな。プログラミングが楽しいのはある意味当然であって、必要以上に楽しすぎる場合はどこかでツケを払う必要が出てくる (そのツケを払うのが自分とは限らない) ということに彼らは気づいているのだろうか。

"joy" だの "使って楽しい" だのを強調することがうさんくさい点には同意します。 なんてったって、人はそれぞれ違うんで、全員が同じことをjoyと感じるわけはないので、 客観的に優れていることを示すことは不可能ですし。 Python使ってる方がRuby使うよりはるかに楽しい人を見付けるのは簡単でしょう。

にも関わらず、我々が「楽しい」を連発するのは、

  • プログラマのあるサブセットは共通の嗜好を持ち
  • その集合が「楽しい」と感じるある言語の性質がある
  • が、我々は語彙が足りなく、客観的にそれを表現できない

ということなんでしょうね、きっと。

で、いきおいイメージ先行のマーケティング的に使われることが多いので、 どうしても「うさんくさく」なるんでしょう。これは自覚してます。

が、「必要以上に楽しすぎる場合はどこかでツケを払う必要が出てくる」ということには、 正直、気づいてないです、すいません。

いや、私自身は毎日のようにツケを払ってますよ。極端に動的な言語は最適化が行いにくいんで、 処理系が遅いのをなんとかするのが大変とか、 「書いてて自然」とか自明でない設計ポリシーのため、言語設計上の判断が非常に難しいとか。

でも、「そのツケを払うのが自分とは限らない」ってのは、どういうシチュエーションなのか想像つかないっす。想像力足りないかな。


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