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Matzにっき


2007年11月01日 [長年日記]

_ [Ruby] Rubyはエンタープライズの基盤になれるか:ITpro

なれるか。

基盤になるということは技術的問題だけでなく、

  • ライブラリがそろっているか
  • 教科書が入手できるか
  • 技術者が確保できるか
  • 話題性があるか

などがからんでくるので、断言は難しいが、 今のRubyなら結構いい線いくかもしれない。

もっとも、基盤になっても、ならなくても、 私に直接嬉しいことはないんだけど。

あ、私の経済的状況には貢献しているから、 「嬉しいことはない」ってのは嘘か。

_ 移動

まず、出雲空港から羽田へ。 それからバスで成田へ。

今回はほとんどの日本人参加者が同じ飛行機である。 が、席はバラバラ。満席のため機内での会話はほとんどなし。

スライドを準備したり、本を読んだり。

デトロイトで乗り換えて、ノースカロライナ州シャーロットへ。

ちなみに、今回の旅行で一番伝わらなかった単語は「デトロイト」であった。 「ロ」にアクセントがくるんだけど、どうにもうまく発音できない。

空港からタクシーでホテルへ。

で、夕食を食べに出る。 パブのようなところで、ピザやパスタなど。 人数分頼むと後悔することが予想されたので やや少なめに。正解であった。

しばらくするとウェイトレスのおねーさんが、 「あちらのお客様からです」とビールを持ってきた。 どうやらRubyConfの他の出席者が日本人参加者を見つけて おごってくれたらしい。私は飲めないけど、ささだくんがもらっていた。

さんきゅー。

ホテルに戻ったら、人だかりができている。 Rich KilmerとかChad Fowlerとかがいるので、 「なにごと?」と聞いたら「Warewolf」とのこと。

人狼のことかーっ

ChadはGame Masterも勤めていた。どんだけ世話係が好きなんだと。

なんでも、アメリカのRubyistの間では今年、人狼が大はやりなんだそうだ。 イベントで人が集まるたびに、やってるとか。 が、私の英語力では心理戦を鑑賞することさえ困難である。

がんばってねー、と言いつつ、 そのまま、寝る。


2007年11月07日 [長年日記]

_ 楽天ミーティング

帰国早々、楽天技術研究所ミーティング。

FairyもRomaもそれなりに進んでいるように見える。 コンセプトを実証するところまでは近いうちに到達するんじゃないだろうか。

帰国したばかりで体調が悪かったのが悔やまれる。

_ 楽天カフェテリア

新しい楽天タワーではカフェテリア(13F)が無料で利用できる。 せっかくの機会なので利用させてもらった。

なかなか本気である。Google本社は知らないけど、Google Japanには勝てる*1

その後、スケーラビリティ以外のテーマについて話をする(まだナイショ)。 技研の外での活動になるかもしれない。

*1  Google Japanの人数を考えると競争そのものが無意味である。反則である

_ 【楽●天】テクノロジーカンファレンス2007

で、11月24日(土)のイベントの告知を依頼される。 10周年にあたり、あまり知られていない「技術の楽天」を伝えたいという イベント。私も「なぜ楽天か」とかいうような方向性でプレゼンする。

はずなんだけど、なんか三木谷さんとのパネルとか、 私の出番が増えてるんですけど...。

まあ、いいや。

まあそれなりに面白いイベントになると思う。 あと、噂の無料カフェテリアも利用できるし。

ただし、事前の申し込みが必要。


2007年11月08日 [長年日記]

_ [Ruby] 日経デジタルコア: 第29回「オープンソースで町おこし”松江市のRuby City MATSUEプロジェクト”」

「Ruby(とオープンソース)で町おこし」の紹介。

まあ、「ほんとうにできるんかいな」というような不確定な部分があるのは 正直認めよう。しかし、だからといってなにもしないでいることが 正しい態度だとは思えない。

「地域資源」としての扱いなど、ちょっとからかっちゃうこともあるけれど、 私はこの松江市(と島根県)の活動の勇気を買う。

だから応援する。

_ [Ruby] 英語と日本語の障壁がなぁ… JRubyの開発者言葉の壁に悪戦苦闘中 | エンタープライズ | マイコミジャーナル

Charles Nutterがruby-talkでもらした不満。 それを受けて機械翻訳メーリングリストが立ち上がったりもしてるが、 どうなんだろうね。

昔、ボランティアがruby-dev summaryをやってた時には ぜんぜん反応がなくて、人でも足りないからやめちゃったわけなんだが、 今こそそれが必要とされているということなのかしら?

_ [Ruby] Ruby認定試験合格しました!

認定試験合格者の声。おめでとうございます。

一方で「予想外に落ちた」という声も聞こえます。 ちょっと問題が難しかったでしょうか。

ところで、

試験問題は是非とも明瞭に"1"と"l"の区別が付けられるフォントで印刷して下さい。そういう引っ掛けはさすがにどうかと思いました。

というのはちょっとびっくりしました。 私は印刷された問題用紙は見てなかったので。

今後はぜひとも気をつけたいです。というか、気をつけるように運営側にお願いしておきます。

_ [Ruby] LearnRuby.com: Matz on Ruby 1.9

Ruby 1.9の新機能。全部ではないが、わかりやすくまとめている。

スライド中「each.char」、「each.line」などがあるが、 これは「each_char」、「each_line」などの間違い。


2007年11月15日 [長年日記]

_ 梅田望夫さんとの対談

『4480063878』で 私を引き合いに出していただいた縁で、 ITProの高橋さんのアレンジで梅田望夫さんと対談させていただく。

梅田さんのことは書籍の記述以外には「よしおかさんの後輩」という 事前知識しか持ち合わせていなかったので、 正直、どういう方向に話が向くだろうかと不安であった。

私は田舎に住む根っからのプログラマ、 あちらはシリコンバレー在住の経営コンサルタント、 共通項の方が少ないような気もしたし。

が、それは杞憂であった。 梅田さんももともとは技術好きなことには変わりなく、 大変に盛り上がった。

対談時間は(撮影も含めて)2時間ほどであったが、 主観的にはあっという間であった。

_ サンワサプライとの対談

で、帰りに空港による途中、 サンワサプライの(社長さんを含む)方々とお話しした。

岡山に本社のある彼らは「同じ中国地方」ということで、 社長さんとの対談が実現したということ。

プログラマの私がどんなお役に立てるだろうか、 とも思ったが、個人的にガジェット好きなので 私の方は大変喜んでお会いすることにした。

サンワやELECOM(やアーベルなど)のガジェットは安い上に 楽しいものが多いので大好きだ。アイディア商品って感じだよね。

でも、私はELECOM商品と相性が悪いんだよなあ。 面白そうと思って買うんだけど、 すぐに壊れたり、壊したり、駄目になったり。

で、社長さんとは、Rubyのこととか、ガジェットのこととか とりとめもなく話をしたんだけど、 その間にもいろんなインスピレーションを受けていらっしゃったようだ。 さすがた。

で、トラックボール付きキーボード(昔のレッツノートの位置にボールがある)ものに ついて、本気で検討してくださるとのことであった。

普段はノート派の私ですが、それ、出たら買いますから。

帰りにはおみやげまでいただいてしまったのだが、 テンキー付きマウスとか、トラベルセットとかいろいろとありがたい。

B000DLFGV4 中でも一番のヒットは、 バッテリーフリーマウス

頻繁に動かすマウスにケーブルがついているとすぐに絡んでしまうので、 以前は(自宅PC用に)ワイヤレスマウスを使っていたのだが、 すぐに電池が切れてしまうので閉口していたのだ。

これならケーブル絡みの心配も少ないし、 マウスは軽いし、 言う事なし。

ま、私は普段はトラックポイントなんだけどね。

トラベルセットにはPCカメラが入っていたのだが、 Linuxからは使える(Ekigaでは表示できる)のだが、 Skype 2.0 for Linuxでは使えないようだ。残念。

_ lab.klab.org - MediaWiki - Repcached

レプリケーション機能付Memcached。

なんか矛盾しているような気がするけど、 それはそれで実用性はあるようだ。

理論だけから攻めていると決して出てこない発想である。


2007年11月22日 [長年日記]

_ [Think IT] 第3回:オブジェクト指向と関数型を兼ね備えた「Scala」 (1/3)

最近Think ITがプログラミング言語の特集をやっている。 すばらしいことだと思う。

実は最初私に話が来たのだけど、 とても書けそうになかったので、ご遠慮したのだが、 ちゃんとライターを見つけてくるところがますますすばらしい。

で、今回はScalaなのだが、最後のここがちょっと不満。 いや、解説ではなくて言語に。

これらを踏まえてScalaが依然として静的型付け言語であるということを思い出してほしい。「動的言語の特徴のように見える物」が、実はそうでもないことがみえてくるのではないだろうか。実際Scalaを学んでいくと「型安全性と実行効率を引き換えに記述性と柔軟性を手に入れる」という「動的言語の常識」が覆されていくような感覚すら覚えるほどだ。

ここではDuckTyping(もどき)がScaleのstructural conformanceで 実現されているところをもって、上のように説明しているのだが、 実際にはRubyのプログラムとScalaのプログラムはこのようになっている。

Ruby版

def safe_close(x) x.close unless x.closed? end

Scala版

def safeClose(x)[T] (x: T {def isClosed: boolean; def close}) = 
  if (!x.isClosed) x.close;

うむ、確かにScala版でも、ある特定の型(IOとか)を指定しておらず、 isClosedとcloseがある任意のオブジェクトに対して呼び出せるので これはDuckTypingの「匂い」がする。

しかし、考えてみてほしい。この二つのプログラムには重大な違いがある。 それはScala版が簡潔ではないことだ。特にxの型指定の部分が。 safeCloseの例は簡単だが、 もっと複雑な関数なら引数それぞれがネストして structural conformanceな型を持つ可能性だってあるわけだし。 明示的な指定では、複雑になれば発狂しそうになるだろう。

この明示性はDuckTypingの思想とは対立する。

せっかく型推論があるのだから、指定などさせず、 「xに対してisClosedとcloseが呼ばれているから、xの型は〜」と きちんと推論してほしいものだ。実際にOCamlなどでは可能なのだから。

どこまで複雑なものまで可能かは知らないけど。

_ NHK取材

1.9のリリースに関連して、もう一度松江局でとりあげたいとのお話。

だが、それでなくてもこれから年内は予定がびっしり 詰まっているので、「年明けてからにしてください」とお願いした。

リリース前に取材したかったみたいで、 少々不満そうな気配も感じられたが、 勘弁してもらった。そろそろ限界が近い。


2007年11月26日 [長年日記]

_ [Ruby] 大規模分散処理向けの国産“ウェブOS”をRubyで開発中 − @IT

先日の楽天テクノロジーカンファレンスのリポート。

しかし、「ウェブOS」ってなんだ? 個人的には ブラウザの中でデスクトップが動くようなものを想像しちゃうんだけど。

最近では、こうした大規模分散処理基盤は“ウェブOS”と呼ばれることもあり、注目を集めている。

ふーん。じゃあ、Hadoopとか「ウェブOS」なんだ。

それ以外の点では(私がしゃべったことをまとめたものなので)、 ふつー。

_ [言語] Clang c-lang parser for LLVM

LLVMのCフロントエンド。

LLVMもけっこう面白そうな技術である。 落ち着いたらYARV bytecode to LLVMとか考えてみたい。

YARVそのものに手を入れるのとどっちが面白いかなあ。

_ 「世界が完全に思考停止する前に」森達也さんのお話

真実でない、というか明らかに間違ったことが まかり通るのは、 とても恐い世の中であると思う。


2007年11月27日 [長年日記]

_ ヤフー井上社長に聞く:「『健全な場』が最後に勝つ」「ケータイはPC超える」「Androidはうさん臭い」 (1/4) - ITmedia News

この業界、「お前が言うか」と思うような発言には事欠かないわけだが。

PCではIntelとMicrosoftがプラットフォームを作り、その間にお金もうけもしたけれど、営利事業としてやってくれたから継続する。特にメーカーからは「ちょっともうけすぎじゃないか」といううらみつらみもあるが、そのお陰でユーザーは恩恵を被った。

 Androidは「無料でやります」と言っているのがうさんくさい。ちゃんとお金を取ってやるべきじゃないかとぼくは思う。「何か後ろで悪いこと考えているんじゃないのか」と思うじゃないですか。

無料でADSLモデムを配っていたヤフーのトップがそれを言うか。 配っていたのはYahooBBでYahooではないと言うつもりだろうか。

Yahooに限定しても、中では山のようにオープンソースソフトウェアを 使っているはずだし、少なくとも本家では積極的にOSSを支援してさえいる。

そのYahoo(ジャパン)のトップが、「無料でやりますと言っているのがうさんくさい」という発言は どうだろうか。いろいろとまずいと思うんだけど。

_ [Ruby] Confreaks: RubyConf 2007

RubyConfのビデオ収録を行っていたConfreaksから ビデオが公開されている。といっても、 現時点では1日目の私の「タウンミーティング」だけ。

改めて聞き直してみたら、あんまりにも英語が下手くそなので 落ち込む。その場では当って砕けろ、という気持ちで 一生懸命話したし、まわりの人も一生懸命汲んでくれているようだが、 今聞くと、自分で聞いてもよくわからない。

一日中、立ち直れない。


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