最新 追記

Matzにっき


2005年05月01日 [長年日記]

_ [教会] 松江、支持と任命

ひさびさの気がする松江出席。

副監督に召される。今までやったことない分野なので緊張する。 高等評議員はまだ解任されないが、事実上こちらに専念するように、とのこと。

これからはあちこち訪問しなくてよいのはありがたいが、 より仕事の「抽象度」が下がるので、重大な役割でもある。 まあ、一緒に働く人たちが気心が知れた人であるのは良いことだ。

論文は気にはなるが、「日曜は仕事はしない」という自分への誓いがあるので、書かない。 でも、ふとPCで論文を眺めてたりするのは徹底していない。反省。


2005年05月02日 [長年日記]

_ 論文〆切日

朝から論文の手直し。笹田くんからの的確なコメントが役に立つ。 やっぱ自分だけで書いてると独り善がりでイカンな。

本筋に関係ないところを削り、足りないところを補い、 純粋に間違っているところを直し、 後は性能測定のやり直し。

誤差のばらつきに悩まされる。性能測定のときには、 あらかじめ決めた回数、複数回実行してもっとも良いものを選んでいるんだが、 本当はどうするのが一番望ましいのだろうか。なんて単純なことに悩んでいるんだ。

オフィスでも、 なんどかは会社員らしいことをしたような気もしないでもないが、 ほとんど論文にかかりきり。

で、帰宅して食事した後もずっと作業していて、 結局提出したのは23時50分だった。予想通り。って、おいっ。


2005年05月03日 憲法記念日 [長年日記]

_ [家族] 松江フォーゲルパーク

〆切からの開放感。なんてすばらしいんだ。

というわけで、家族で3連休を楽しむとする。 1日目は松江フォーゲルパークへ。 今はもう松江市民だから市民料金が適用されるのがちょっと嬉しい。

鳥と花がいっぱい。 駐車場がいっぱいだったので、どうなることかと思ったが、 中はそれほどひどい混雑ではなく、十分楽しむことができた。

いろんな鳥がいたけど、やはりペンギンが一番かわいいかな。 特に一番小さいのは末娘と誕生日が同じというのがいい。名前も「ももたろう」だし。


2005年05月04日 国民の休日 [長年日記]

_ [家族] 米子

連休の二日目。今日は米子の墓参りに。 墓のまわりの掃除をしようと思ったが、 すでに誰かがやっていたらしく、雑草とかほとんど生えていない。

その後、米子のお店数件に寄る。 松江より米子の方が商店がおもしろいものが多いような気がするのはなぜだろう。

それから叔父の家に末娘を見せに行き、 従姉の店でいくつか雑貨を買い(従姉には会えなかった)、 それから弟の家で姪っ子を拉致。玉造に連れ帰る。 初のお泊りだが、姪は何ともない様子だ。


2005年05月05日 こどもの日 [長年日記]

_ [家族] 出雲いりすの丘

昼ごろやってきた弟夫婦と出雲いりすの丘へ。 本当に遊んでばかりだな、この連休は。 末娘と妻は留守番。赤ちゃんはそんなに外出してたら体力がもちません。

動物をたくさん眺める。犬(シェットランドシープドッグ)がかわいい。 羊も癒される。

なぜかやっていたマジレンジャーショー。 息子が喜ぶかと思いきや、わりと醒めた目をして見ていた。 最近の小学校二年生はそんなに幼くないんだね。 でも、こないだ録画しそこなった時にはかなり怒っていたように思うんだけど。

あ、マジレンジャーは好きでもドサ回りのショーに不満だったのか。 じゃあ、今度は「こうらくえんゆうえんち」に連れて行ってあげるべきなのか。 ちょっと遠いなあ。

いりすの丘で弟夫婦と別れる。ちょっとくたびれた。


2005年05月06日 [長年日記]

_ 風邪

連休が終わり、出社だ...とか思ったら、体の節々が痛い。 目が涙っぽい。熱もあるみたい。

というわけで、休み。日ごろの運動不足で体力ないのに遊び過ぎたか。 こういう休みは嬉しくないなあ。

_ [連載] Unix User 7月号

とはいえ、〆切は来るわけだ。本当は2日〆切と言われていたのだが、 さすがに論文〆切当日に書き上げるのは無理だろうということで、 今日まで延ばしてもらっていたのだ。 もう一度延ばしてもらうのは気が引ける。

まあ、UUは2ページだし、なんとか書き上げる。 テーマは以前から考えていたんだし。

今回は「Vi対Emacs」。ただし、よくあるエディタ比較じゃなくて、 その背後にある思想の紹介。Emacsは、Viと並んでUnixの代表的エディタとみなされているが、 その思想は全然(古典的)Unix思想ではなく、むしろMIT由来のLisp思想だ、とかいうような話。

ってか、上の文章だけで『ハッカーズライフ』2ページの主要な点をカバーしちゃってるな。 書きすぎたか。


2005年05月07日 [長年日記]

_ 風邪

ひきつづき休息を取らざるをえない。 なんだか背中がひどく痛む。筋肉痛になるようなことはなにもしていないので、 やはり風邪が原因の痛みだとしか考えられない。

長女も具合が悪いので、ふたりでおとなしくしている。 私と娘とで症状が違うのが気にならないでもないが。

で、たまったメールを片付ける生活。 休日と論文で忙しくて放っている間に数百通のメールがたまっている。 これを片付けるのもホネだ。

特異クラスの英語の名称(singleton class)がSingletonパターンを実現する Singletonクラスと名前がぶつかるから良くないというメールがruby-talkに。 ケンカを売るような尊大な口調は感心しないが言わんとすることはわからないでもない。

でもね、Singletonパターンと特異クラスの区別がつかないってことはないと思うんだけどなあ。 あんまり良い名前も思いつかないし。

_ [言語] PYTHON CHALLENGE

で、暇を持て余して少しずつ解いていたのが、これ。

Pythonを使ってクイズを解くというもの。思考力が下がっているので、 あんまり進まない。で、レベル5でPython固有の機能を使わないと解けない問題があったが、 そこのデータ解析だけPythonを使って、残りはRubyと他のUNIXツールを使って解いた。 っていうか、Pythonの基本的な使い方さえ身についていないので、 調べるための時間が苦痛で。

だが、レベル14で厭きてしまって放置している。 なんだか画像を加工する問題が多くて、やる気が出ない。 あ、RubyにはPIL (Python Imaging Library)相当がないからかな。


2005年05月08日 母の日 [長年日記]

_ にちようび

今日は母の日である。とりあえず一番身近で「母」をやっている人をねぎらおうということで、 昨日のうちにこっそり買っておいた花を妻に贈る。 妻はカーネーションは好きでないと言うことなので、ピンクのバラの鉢植え。 この方が長持ちするだろう。

しかし、花は喰えないのにな、どうしてあんなに喜ぶんだろう。謎だ。 そりゃ、きれいだけどさ。

教会。松江出席はありがたい。が、今日は元々松江の日だったな。 風邪を引いているので、わりとおとなしくしている。集会終了後も早めに帰る。

夕方、浜松の母から電話。花が届いたとのこと。 そういえば妻が双方の母親に花を贈ったって言ってたっけ。 風邪でぼーっとしてわすれていた。 よく気がつくことでありがたい。

浜松にもいろいろあるらしい。後、半年、がんばってくらはい。


2005年05月09日 [長年日記]

_ [Ruby] るビマ!?

Rubyist Magazine6号、公開っ*1

巻頭言

まさーるさんの追悼。むしろ高橋さんの感受性に感動しました。 この人は本当に良い人に違いない。

Rubyist Hotlinks 第 6 回 江渡浩一郎さん 前編

アートな江渡さん。一番、心動かされた言葉はこれ。

何が重要な点かというと、まつもとさんは形式的に判断したりしないじゃないですか。たとえばあるプログラミング言語で、BNF で記述すると非常にに短く書けるので、このプログラミング言語は理解しやすい、という主張を目にしたことがあるんですけど、「馬鹿かお前は」と言いたくなるんだけど。関係ないって思いっきり言いたい。あの、えてしてそういうふうに形式的に割り切りたくなるんだけど、まつもとさんは絶対そうしないじゃないですか。それが偉いなぁと思っていて、すごくアート的な感じを受けますけどね。

そんな自分でも曖昧にしか把握していないことを言語化できる江渡さんはすごい。 ま、あんまり「(日本語で言うところの)アート」っぽい人間ではないんですけどね。

RD でも書いてみようか 第 1 回

RDって中毒性ありますよね。私、もはやなんでもRDで書きたがるんです。 でも、テーブルは書けなかったりして(RTを使うか)。 あと、論文もそのままでは書けない。バックエンドとプラグインを書けばよいのか。

シリーズ パッケージマネジメント 第 1 回 RubyGems (1)

混乱のパッケージマネジメントを一刀両断する、ことができるといいなあ。 しかし、なんでこんなにもめるんだ。

CGIKit2.x を用いたアルバム CGI/Web アプリケーション

どうにもWebアプリケーションは弱くて。勉強します。

RubyOnRails を使ってみる 第 3 回 ActiveRecord

同上。今回はWebじゃなくてデータベースだけど、 そっちもやっぱりダメダメだという。

Ruby Library Report 第 5 回 数値計算と可視化

これも得意でない分野。Rubyってばすでに作者の把握できる範囲をはるかに越えてますよね。

Win32OLE 活用法 第 4 回 Adobe Illustrator

WindowsもIllustratorも使えないよぉ。 今号のRubyist Magazineは、「まつもとの苦手」特集ですか。

YARV Maniacs 第 1 回 『Rubyソースコード完全解説』不完全解説

あ、やっと「分かる話」が出た。笹田くんにはお世話になりっぱなしです。 東京に足を向けて寝られない? スーパークリエーター認定おめでとうございます。

RubyNews

あんなニュースとか、こんなニュースとか。

RubyEventCheck

あんなイベントとか、こんなイベントとか。OSCONが載ってないなあ。

編集後記

いつものやつ。

*1  これを書いているのは11日ですからちょっと遅くなっちゃいました


2005年05月10日 [長年日記]

_ ほしいもの

最近、私の行ってる教会のスタッフは全員PCが使えるようになった。 そこで、情報共有をWebで行おうと思うのだが、問題が。

  • みんなで自由に情報共有したい → Wikiか?
  • Wikiの気軽さは魅力だが、予算とか人事とかグループ外に見せたくない情報もある。
  • 管理したい情報はアジェンダやToDoなど。Wikiの運用でカバーできる程度。
  • login管理と参照・更新権限のあるWiki(ではないな、Wiki記法が使える簡易CMSか)があれば
  • グループには上位のグループがいて、上位グループはそのグループの全ての権限を持つ、とか。
  • 各ページには所属するグループが決まっていて、そのグループの権限がある人しか更新できない。
  • 各ページにはグループ権限がない人が参照できるかどうか指定できる。 または参照できるグループを別に指定できる。

というようなことに。だれかこんなソフトウェア知りませんか。 HikiやInstikiとかはグローバルな「更新者」と「参照者」は設定で可能だけど、 上記のような階層構造のある認証とかはないみたい。

Railsかなにかで作るしかないのかなあ。私にやらせるとフレームワーク辺りから作りはじめて いつまでたっても終わらないから、出来合いのものがある方が嬉しいんだけどなあ。

どうしても見つからないようなら、その辺のWikiに認証をつけて運用して、 外部からの参照にはページのコピーか、明示的にメールで送りつけることで対応するか。

でも、そういうソフトウェアがあったら、世のCMSがやってるようなことの一部は代替できそうな。 Wiki以上、CMS未満、というところか。

とりあえず名前を決めなきゃな(まず、そこか)。


2005年05月11日 [長年日記]

_ 「ITスクール2005」参加の高校生を募集

将来、世界第一級のクリエーターになるような優れた人材を発掘し、成長を支援しようと、文部科学省は高校生を対象に、夏休みに合宿して創作活動をする「ITスクール2005」を開く。

文部科学省もクリエータを発掘したいようだ。最近の若い者はチャンスがたくさんあるなあ。

経済産業省も負けずに今年もU20プログラミングコンテストを開催する。 我と思わん若者は今から準備していて欲しい。

_ 江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance

江島さんがZope Essentials 1に参加された話。それはどうでもよいのだが(失礼)、

Pythonといえば、まつもとさんがMatzにっきに書かれていた調査ではRubyに次いで2番目に愛されている言語だそうです。また、あの伊藤穣一さんが愛用していることでご存じの方も多いでしょう。

というようにあの調査を本気にする人が出るような書き方はいかがなものかと。 遊びですから,遊び。

江島さんと言えば、つい先日『4798108308』を献本していただいた。 Asteriaは彼の所属するInforteriaが提供している ビジュアルプラットフォームだ。ざっと読ましていただいた限りでは、いろいろ興味深い機能を持っている。

しかし、Asteriaには二重のチャレンジが待っている。それは、

  • 言語ビジネスが成功するのは難しい
  • ビジュアルプログラミングが成功するのは難しい

いや、ホント。もう、死屍累々。

是非ともAsteriaには,この厚い壁を乗り越えて成功していただきたいものだ。 不吉な物言いをして申し訳ない。ほんとに期待してますから。


2005年05月12日 [長年日記]

_ O'Reilly OpenSource Convention

8月1日から5日までのOSCON 2005のプログラムが決定した。

今年はちゃんとRubyトラックが用意されている。その内容は以下の通り。

2005-08-04

Yield to the Block: The Power of Blocks in Ruby
Yukihiro Matsumoto, netlab.jp
Location: E143
Time: 10:45am - 11:30am

Pragmatic Project Automation with Ruby
Mike Clark
Location: E143
Time: 11:35am - 12:20pm

A Starry Afternoon, a Sinking Symphony, and the Polo Champ Who Gave It All Up for No Reason Whatsoever
why the lucky stiff
Location: E143
Time: 1:45pm - 2:30pm

Metaprogramming Ruby
Glenn Vanderburg, Principal, Delphi Consultants, LLC
Location: E143
Time: 2:35pm - 3:20pm

Dependency Injection: Vitally Important or Completely Irrelevant?
Jim Weirich, Consultant, Compuware
Location: E143
Time: 4:30pm - 5:15pm

2005-08-05

Extracting Rails from Basecamp
David Heinemeier Hansson
Location: Portland 258 & 251
Time: 10:45am - 11:30am

その他にもチュートリアルキーノートがある。

2005-08-01

Introduction to Ruby
Dave Thomas, The Pragmatic Programmers, LLC
Location: E144
Time: 8:30am - 12:00pm

Ruby on Rails: Enjoying the Ride of Programming
David Heinemeier Hansson
Location: E144
Time: 1:30pm - 5:00pm

2005-08-04

High Order Bit: Secrets Behind Ruby on Rails
David Heinemeier Hansson
Location: Portland Ballroom
Time: 9:00am - 9:15am

DHH大活躍。それ以外にもおもしろそうなものが多い。 しかも、RubyトラックなんざOSCON全体から見たらほんの隅っこの一部に過ぎない。 参加するのが楽しみだ。後は金の工面を。


2005年05月13日 [長年日記]

_ [日記] 「Matzにっき」Rast検索

この「Matzにっき」の検索をtdiary grep検索から、Rastによる検索に変更してみた。

N-gramベースの検索なのでgrepと同等の使用感が得られるはず。 また、インデックスを使っているので検索速度はずいぶん向上しているし、 スコアリングも追加されたし、いいことだらけ、のはず。

不具合があれば報告してほしい。

_ [原稿] 日経Linux 7月号

「まつもと直伝 プログラミングのオキテ」第三回。

元々この連載は「オブジェクト指向のオキテ」というタイトルが(編集から)与えられていたのだが、 「それだとオブジェクト指向以外の話ができないからやめて」とお願いして、 直前にタイトルを変更してもらった経緯がある。

しかし、まあ、そういうタイトルをつけたくなったのもわかるくらい当面はオブジェクト指向ネタが続くのだった。先月はプログラミング抽象化の延長線上に継承を定義するという、やや乱暴かつ歴史の実態を反映していない(が考え方としては間違っていない)内容だったが、今月はそれを受けて、 多重継承について。

元々多重継承の多用にはあまり賛成でない私だが、しかし、単一継承*1ではなく、多重継承でなければ解決できない問題があるのも確かだ。単一継承で起きる問題、多重継承で起きる問題の両方を提示して、「じゃあ、どうすりゃいいのよ」ということを書こうという内容なのだが、ていねいに説明しようと思うとまわりくどい。が、きびきびと書き進むと他人にはわからない、なかなか難しいものだ。

〆切は月曜日。

*1  本連載ではsingle inheritanceの訳語を従来の単純継承ではなく単一継承に統一した


2005年05月14日 [長年日記]

_ [OSS] コード読みのコード知らず

小飼さんが怒っている。元々は三浦さんのエントリ。

Momokuri's Memo - Code readers daily [Japanese] - CodeFest 2005 JAPAN

だからこそ、CodeFestを日本で開く応援をしたい、推進派になった。人材育成とか、日本発のOSSとか、コードも書かない人に言われたくはない。一緒に取り組んでいる仲間を増やすこと、同じ空間と時間を共有して、フリーソフトウエアの世界を確かに広げた実感を共有すること、それこそが醍醐味ではないか。

...おい、何生意気いってんだよ。コードだけでOSSの世界が回ると思ってんのか?「コードも書かない人」だと?だったら言ってやる。必要経費も出さない奴にOSSがなんだかいわれたかねーよ。コードが書けずとも、コーダーに理解を示してくれる貴重な人たちの手を払いのけるようなことを言ってる奴にフリーソフトウェアがなんたるかいわれたかねーよ。

うーむ。まあ「コードを書かない人間に」という表現だと直接コードを書かない人間すべてを排除しちゃうんで表現としてはイマイチで、実際は「コード書きの気持ちがわからない人間に」くらいが正解ではないだろうか。小飼さんはTim O'ReillyやLawrence Lessigのことをあげているが、彼らは自分ではコードを書かないかもしれないが(ただし、Timはコードを書く人のはず)、コード書きの気持ちはかなりわかってると思う。

で、まずそこをはっきりさせておいて、 さらに考えるとどうにも「コードだけでOSSの世界が回ると思ってんのか?」という言葉に引っかかる。 いや、小飼さんの真の意図とは(おそらく)別にこの言葉の表現が非常に気になるのだ。

オープンソースという概念の周辺を取り囲むひとつの生態系がある。 オープンソースプログラマやコミュニティの参加者、 オープンソースビジネスにかかわる人などなどから構成される系である。 わざわざオープンソースという単語を使うところがビジネス臭を感じさせる。 これをとりえあず「オープンソース・エコシステム」と呼ぼう。

小飼さんのおっしゃる通り、オープンソース・エコシステムはコードだけでは成立しない。 開発者以外に、議論に参加する人、ドキュメントを書く人、単なるユーザ、本を買う人、 ビジネスとして利用する人、オープンソース開発者を雇用する人などが集まって絡み合って成立する系だからだ。 そういう意味では「コードだけでOSSの世界が回ると思ってんのか?」という言葉に嘘はない。

また、

コーダー<としても>OSSに関わってる実感から行けば、コード書きなんて一割いかねえよ、必要な作業の。

という言葉も、「必要」が「ビジネスに利用するに十分なクオリティを確保するため」のものであると 考えれば納得できる。個人的にはそれでも1割よりもうちょっと多いとは思うけど。

で、嘘がなく、納得できる内容のはずの言葉なのだが、どうにも私の心に響くのだ、ネガティブに。

おそらく、以下の点について言及が無いからなのだろう。

  • オープンソース・エコシステムによって再生産的に開発されているオープンソースソフトウェアはまだほとんどない*1。割合は少なくてもコードが無ければエコシステムが持続できない。エコシステムにとってコードがクリティカルな存在であることはこれからも急激には変わらない。
  • オープンソース・エコシステムによって食べていけているプログラマは増えている。 私もそうだ。それは良いことであり、ありがたいことだが、 エコシステムがなくなってオープンソースソフトウェアがビジネスに使われなくなったら 致命的かというとそうでもない。プログラマにとってエコシステムはクリティカルではない。
  • フリーソフトウェア・プログラマが幸せに開発を行うためには、 コンピュータ、インターネット、小さくてもよいコミュニティ、 自由な時間とわずかな食い扶持とがあれば良い。 オープンソース・エコシステムが亡んでも フリーソフトウェア・プログラマが不幸になるとは限らない。
  • エコシステムの存在はプログラマを楽にしているとは限らない。 給料を払ってもらえてる人はもちろん楽させてもらっているけど、 その他のことをエコシステムが肩代わりしてくれているわけでは実はない。 むしろ、エコシステムの一部である圧倒的な「勘違いしたお客さん」が プログラマの負担を増やし続けている。 「あなたはコーディングに専念してください」とか 「ドキュメント整備、広報、伝道など引き受けますから」なんて話はついぞ聞いたことない。 助けてくれる人もたくさんいるけど、 それはほとんどの場合ビジネス臭の強い「オープンソース・エコシステム」からではなく、 手弁当の有志である。わずかな例外を除くとね。

こういう事実もあるところで、

コーダー<としても>OSSに関わってる実感から行けば、コード書きなんて一割いかねえよ、必要な作業の。MLでコンセンサス取って、ドキュメントを整備して、モノが出来たら広報して伝道してフィードバック受け付けて、それを回すだけのインフラを用意して....未だにコーダーだけでやってけると思ってるのかこの青二才が。

と言われると、はなはだしく萎えるのだ。嘘じゃなくても。 私、上司からこういう言葉をいただいたら、その日のうちに転職を考えます。

そういう意味で、こういう発言をしてしまった小飼さんは、ご自分が想像する以上に 「コード書きの気持ちがわからない人間」になってしまっていると見える。 少なくとも私からはそう見える。 たとえご自身がコードを書くことがあっても、 本人そのつもりが無くても、 他のプログラマに「わかってもらえてる」という信頼を得られない言葉を吐く時点でかなりヤバい。

これらに小飼さんが気づいてないはずはないと思うのだが、 怒りのあまりうっかりしたか、私が思っている以上に小飼さんの心がスーツ化しているということか。 あるいは(元々の三浦さんのエントリがそうであるように)単なる表現上の問題か。

*1  Rastとかうちの会社で作っているものは例外的にそういうのが多いけど

_ 第1回出雲・玉造アートフェスティバル

近所で「あーとふぇすてぃばる」なるものが開催されている。 子供たちは学校帰りにいくつも目撃しているらしい。 夜はライトアップされているとも聞く。

そこで、今夜は見学することにする。もっとも30箇所以上ある「あーと」を全部見るわけにはいかないので、 「玉造温泉ゆ〜ゆ」と「玉造史跡公園」にあるものを中心に。

結構おもしろいものが多かった。若い人の作品が多いのね。 多摩美の大学院卒業制作のものが複数あった。

次女がうっかり「バオバブ・プランテーション」のライトにふれてしまって、けっこうな火傷を負ってしまったのは残念だった。 この展示がいちばんきれいでインパクトが大きかっただけよけいに残念。 でも、暗いから注意書とか書いても読まないだろうしなあ。 つい、なんにでも触りたがる次女が悪いと言えばそのとおりだし。

5月末までの展示なので、終わるまでに残りも見よう。


2005年05月15日 [長年日記]

_ [教会] 松江

聖餐会の司会を依頼される。実に18年ぶりになる。 あの時は出席者も16人ほどしかおらず小さな小さな集会であったが、 今度は「ちゃんとした」集会なので余計に緊張する。

...なんとか無事こなした。

集会終了後、末娘をだっこしながら階段を降りていたら、 最後の一段に気がつかず、床に足を置くつもりで空中を踏みしめてしまい、 思いっきり転んでしまった。左ひざ、右ひじ、そして頭で着地してしまった。いった〜っ。 娘が泣き出したので動揺したが、どうやら守り切れたらしく、 娘にはけがや打ち身などは無いようだ。よかった。

体が痛い。が、心も痛いぞ。

_ [教会] 情報共有CMS

以前、欲しいと言った情報共有用Wiki的CMSだが、 なんだか期待されているらしい

かずひこくんと、そのうち作るつもりだが、とりあえずサービスを提供したかったので、 手元にHikiを認証付きでインストールした。 今回は一番小さなグループでの情報共有だけを行う。

今回の仲間たちはWiki初体験だけど、それなりに便利さは伝わったようだ。 これでどうにも散逸しがちな情報を管理できるようになるかもしれない。

諸般の事情からHikiを選んだけど、他の人のために、 MoinMoinのaclを使えば最初の希望に近いことを実現できるという情報を おくじさんから教えてもらったことを明記しておく。

あと、個人的な情報管理としてHowmを導入した。 前から気になってたけど、ちょっと敷居が高くて。しかし、いざ使って見るとこれは便利だ。

Howmで記録して、(認証用のパッチを当てた)hiki-modeでWikiに転記、 いつもEmacsの中で快適。

いやあ、こういう環境整備の仕事は燃えるねえ。 完全に手段と目的をはき違えるタイプ。 手段のためには目的を選ばないっていうか、なんていうか。


2005年05月16日 [長年日記]

_ [OSS] Re: こうもりの言い分

おとといのエントリに対して、 小飼さんから反応をいただく

読んでまず、私の表現の不備に気がついたので訂正しておく。

オープンソース・エコシステムによって再生産的に開発されているオープンソースソフトウェアはまだほとんどない

この表現は自明ではないし、実際に小飼さんにも私の意図とは違う読み方をされてしまった。 これは私の落ち度だ。

私の意図は、「コミュニティから草の根的に発生したのではなく、オープンソースビジネスを標榜する企業によって主体的に開発がスタートされたオープンソースソフトウェア(で、成功したもの)はほとんどない」ということだった。前のエントリで「オープンソース・エコシステム」という言葉に対して「ビジネス臭」を強調していたのは、オープンソース企業を強く意識してのことだ。ビジネスが関係ないなら「フリーソフトウェア・エコシステム」と呼んだことだろう。

さて、訂正したところで続きを論じる。

小飼さんは

「だいたいなんでオリがこんなこと言わなきゃならないんだYo?」を「わかってもらえ」なかったことだけが悲しい。

と述べておられるが、正直な話、私にはわからない。わかってあげられない。 小飼さんは「なんでこんなこと言わなきゃならない」んだろう。

あのEntryは「John Orwantが投げつけたマグカップ」と同じだ。必要だったのは結論ではなく疑問の提示だ。

とおっしゃっているが、その疑問とはなにか。

John Orwantは「Perlの開発が停滞している」ことを劇的な方法で示すためにカップを投げたそうだが、 小飼さんがあそこまで怒って(or 怒ったフリをして)表明したかったモノはなにか。

わからない。

いや、表面的には全くわからないでもない。

すでに「コーダーのためのガード下の焼き鳥屋」はヴァーチャルにもリアルにも存在する現在,必要なのは「あたたかい理解」ではなく、「冷たい現実の認識」ではないのか?

とある以上、「コーダーよ、現実を認識せよ」ということが言いたいのだろう。 が、コーダーは現実を認識していないのか。本当に?

あるいはコーダーに「冷たい現実の認識」がなかったとして、 それは問題を引き起こしているのか。本当に?

私にはそういう意識はない。自覚がないのが問題だ、と言われると返す言葉がないのだが、 それならそれで「これこれこうだから問題だ」と指摘してもらえると、 「問題」に対処できるようになるのでありがたい。

この一件に関して私が認識できる問題があるとするならば、 それは「わかってもらえない」ことにあると思う。 この「わかる」は「理解する」よりもむしろ「共感する」の方の「わかる」である。

Tachさんも言及していたが、 コードを書く人間はコードを書かない人間のことがある程度「わかる」。 しかし、コードを書かない人間のほとんどはコードを書く人間のことが「わからない」。 が、オープンソース・エコシステムにおいてコード(を書く人間)がクリティカルな要素である以上、 ビジネスの論理、スーツの論理で口出しするのは生態系をゆがめかねない。

私は、三浦さんはそういうことを意識して発言したのだと推測するし、 その発言には共感できる。 で、今回の小飼さんの発言「コードだけでOSSの世界が回ると思ってんのか」からは、 それでなくてもエコシステムの中で搾取されがちなコーダーの気持ちを 共感してもらえてるとは感じられない。

それは問題ではないのか。 実際に小飼さんが共感しているかどうかは別として、そういう印象を与えてしまうということは。 コーダー(ギーク)が「スーツに共感してもらっている」という印象を持てるということが、 オープンソース・エコシステム全体に対して有益だと思うのだがどうか。

知らない人もいるかもしれないけど、私は小飼さんに何度も会ったことがあるし、 ある程度小飼さんがどんな人間なのか理解しているつもりだったから、 この発言には少なからず驚いている。 私と小飼さんはある程度「似た者」だと思っていたから。

違いと言えば「私はRubyで小飼さんはPerl」、「私はビンボーな雇われで、小飼さんはリッチな経営者」というところか。前者はともかく後者はあまりにも大きな違いかもしれないな...。

最後に、私の自明でない表現から生まれた部分なので本筋とは関係ないのだが、 重要なので述べておく。

Matz wrote:

エコシステムがなくなってオープンソースソフトウェアがビジネスに使われなくなったら 致命的かというとそうでもない。プログラマにとってエコシステムはクリティカルではない。

もしこれが正しければ、世のソフトウェアは「俺ウェア」だけでいいということになりはしないか?ただネットにソースを転がしておくだけでも費用は発生しているのである。

大多数のフリーソフトウェアの本質は「俺ウェア」ではないだろうか(その定義はよくわからないけど)。 「俺が作りたいから作る」、「俺が使いたいから使う」、「俺がバグを見つけたから直す」...。

が、フリーソフトウェアでないソフトウェアも数多くあるだけに 「世のソフトウェアは俺ウェアだけでいい」というのは広すぎる言明だと思う。 また、フリーソフトウェアの開発・保守に費用は発生しているのは確かだが、 現実を見るとその費用の相当の割合は開発者自身が負担している。

オープンソースビジネスとえらそうに言いながら、 そのほとんどの実態はすでにあるオープンソースソフトウェアを利用するだけ、 改めて開発を支援することなどしない、という企業*1が数多くある中で、 これ以上開発者に「冷たい現実を認識」させてなにがしたいのか。

追記

ありえる別の問題としては「コードのことしかわからないのに付け上がるプログラマ」というのも あるのかもしれない。が、それはそれ、ビジネスとして接する場合にはビジネスのルールに従うことになるので、ビジネス上は淘汰されるのではないかと(お金を持っている人のほうが強い)。ビジネスと関係ない領域であればプログラマがいくら「付け上がっても」放っておけばよいわけで。

業務連絡。

小飼さんへ。「Matzにっき」では、うちのエントリへの言及/リンクのないトラックバックは削除しています。 私は小飼さんのブログ、毎日じゃないけどチェックしていますから、 「読んでほしい」という理由だけのトラックバックは不要です。

*1  もちろんオープンソースソフトウェアを単に利用するだけでなく、きちんと支援している優良な企業もある。多くないけど。

_ ソフトイーサってこんな仕事

ゴールデンウィーク前の記事だが、風邪引いたりして紹介するのをすっかり忘れてた。

ソフトイーサで一躍有名になった登くん率いるソフトイーサ社が山崎マキ子の『...ってこんな仕事』のインタビューを受けてます。

って、共同溝に入ってるし。 私が若い頃は「共同溝に入ると除籍」、「松見池の鯉を食べると除籍」、「...すると除籍」と言われていたものなのだが、時代は変わった。

_ 筑波大集中講義

それはそれとして、卒業以来すっかり縁遠い母校筑波大学ですが(卒業後2回しか行ってない、はず)、 今年は新城くん*1の紹介で集中講義を行います。期間は夏休み中の7月。2日間の予定。

さて、なんについて話したもんだか。

*1  同級生で生年月日も同じ。だが、新城先生と呼ぶべきか

_ [OSS] Re: ルービックキューブ

小飼さんからお返事。

「コードも書かない人に言われたくはない」というのは、中坊のころの私だ。受け入れてくれる人たちの手まではねのけていた、あの頃の私だ。

要するに「コードを書かない人の中にもわかってくれる人はいるよ」という意味? まさかそんな単純なこと?

いや、そんなことかも。

でも、私も(おそらく三浦さんも)そんなことはとっくの昔にわかっているんだけど。 小飼さんは三浦さんを知らなくて「15のあの頃の自分と同じだ」と感じちゃったってことなのかなあ。

もちろん「コードを書かない人の中にもわかってくれる人はいる」んだけど、 どーしてもわかってくれない人もいて、 えてしてそういう人の方が力を持ってたりするんだよ。

だから、「コードも書かない人に言われたくない」ってのは、 わかってくれる人も一緒に切り捨てちゃうので問題がある表現ではあるけど、 そう言いたくなる気持ちというのもまた同時に存在するのだ。 私は、この発言は「15の夜」の発言ではなく、 大人の折衝に疲れた「30の夜」の発言だと思う(いや、40でもいいけど)。

だから、私としては代わりにこう言うのだ、 「コード書きの気持ちがわからないとオープンソース・エコシステムで成功できない」と。

ま、それが事実かどうかはともかくスローガンとして。

_ [原稿] 日経Linux 7月号

深夜(というか、早朝か)完了。

前からちゃんと文章にしたいと思っていた

  • 単一継承の欠点
  • 多重継承の欠点
  • 仕様の継承と実装の継承
  • 静的型言語で多重継承が必須なわけ
  • better多重継承としてのMix-in

などについて書けたのは個人的にはうれしい。 が、記事としてみると限られた紙面(8ページ)には詰め込みすぎだったかも。


2005年05月17日 [長年日記]

_ ブロードキャストフラグ敗退。コピーフリーになった米DTV

アメリカでは地上波デジタル放送が今後もコピーフリーでいくことになったという話。 日本でもそういう話にならないものか。

なぜ米国ではこんな経緯となったのか。裁判に関して思い当たるのは、原告団体や世論の性格や力が日本と違うことだ。

まず、この判決で目を引くのは原告団体の多さと強さだ。図書館関係の団体5つ、ネット上の市民権に関して非常に活動が活発なPublic Knowledge(以下PK)とElectronic Frontier Foundation(EFF)、やはり活発な消費者団体Consumer Federation of AmericaとConsumers Unionの合計9団体が原告団となっている。

日本にはPKやEFFほどの言論団体はないし、B-CASなどの問題について日本の主婦や公立図書館司書の団体が大きく動くこともない。動いたとしてもすぐに告訴にはいかないだろう。ところが米国では2003年11月のフラグルール発表後、2004年1月末にはもう上記9団体が一致団結で告訴だ。ファイティングスピリッツがまるで違う。

うーん、上から与えられる権利を承る日本と、権利を勝ち取るアメリカの違いということか。

一方、日本はと言うと、放送のコピーワンス化だけでなく、 録音補償金でも権利者ばかり優遇されている。

_ 私的録音・録画補償金制度では誰も幸せになれない

本当に権利者に還元されているかも検証されないまま、 補償金の範囲だけが拡大して行く。結局儲けるのは誰か。

ユーザーが実際にどういう用途に使うかに関与せず、「使うかもしれない」ことを前提に補償金がかけられるのは、あまりにも丼勘定が過ぎる。

補償金制度の運用開始よって、元々著作権法で保証されてきた「私的録音・録画は自由かつ無償」の原則が一部制限され、「自由かつ有償」になったわけである。

そもそも補償金制度のベースである「自由かつ有償」という約束が、すでに話が違ってきているのである。さらにそれを押して課金範囲を広げれば、消費者はあまりにも踏んだり蹴ったりではないか。

権利者団体がどうしても補償金制度にこだわりたいのであれば、払ってもいい。そのかわり、コンテンツの私的利用においては、黙ってコピーフリーにしてもらわなければ割が合わない。もしくはわれわれ消費者がDRMを受け入れる代わりに、補償金はなしだ。それがフェアなトレードオフというものである。

小寺さんの論はあまりにも真っ当だ。

元々音楽や映像といったコンテンツは生活必需品ではなく、嗜好品である。その消費にブレーキをかけるようなことが続けば、もう音楽聴くのやめちゃうよ、テレビ見るのやめちゃうよという選択肢が、消費者にはあり得るのだ。

少なくとも私は2011年以降テレビ見るのをやめようかと思っている。


2005年05月18日 [長年日記]

_ IPA X 2005

うちのRastが出展するので、 東京までお出かけする。末娘が風邪っぽいので心配だが、仕事をキャンセルするわけにもいきそうにない。

2便を使ったので、会場に付いたのは昼過ぎ。その後、少しだけ見て回る。

今日、目に付いたもの

  • YARV (もちろん)
  • POM - 漫画支援ツール。仕上げ工程ではなく、ネームとコマ割りを支援する。これは「未踏」かも。
  • XAA - RELAX NGでモデルを定義し、MVCモデルでアプリケーションを構築する

あと、「オープンソースゾーン」なるコーナーがあるのだが、 出展企業の中でオープンソースを主体としている企業は 「ネットワーク応用通信研究所」と「グッデイ」だけのような。 もしかすると本当にこのふたつしかないのか(そんなことはないと信じたい)。

たくさんの人と名刺交換をした。なんか、私のことを知っている人が多いのはありがたいけど、 必要以上に意識されてしまうのはちょっと抵抗が。私はあくまでも「普通の人」です。 社会人として欠けているところがいくつもあるのは確かだけど、それは置いといて。

スーパークリエーターたちは認定証をもらっていた。 しかし、百歩譲って「スーパークリエーター」は良いとして、 「天才プログラマー」と連呼しちゃうのはいかがなものだろうか。 なかには天から与えられた才能ではなく、努力の結果偉大な成果をあげた人もいるんじゃないだろうか。 そういう人を安易に「天才」と呼ぶのはもしかして失礼なんじゃないだろうか。

5時で展示は終り、レセプションがある。

大学の同級生にばったりと会う。世間は狭い。 しかし、「もう10年もコードを書いてない」なんて話を聞いちゃうと、 ああ、そういうトシなんかなあ、とか感慨深くなっちゃったりして。

もっとも、中田先生なんか退官して「これでコーディングに集中できる」とか言ってるみたいだから、 上には上がいる。私もそういう老後を目指したいものだ。

その後、Ruby関連者など十数名で二次会(というのか)。 ごめんなさい、参加した人を把握しきれてません。

面白かったのは「なでしこ」のクジラ飛行机さんこと、 山本さんとの対話。 「なでしこ」のプログラムってのは、「確かにやりたいことを表現しているが、 人間に対してならともかく、コンピュータがそれをちゃんと理解しているとはなかなか信じがたい。 マジック」という印象がある。「マジック」ってのは善し悪しで、 ちゃんと動いているうちは良いが、一度分からなくなると手が付けられなくなる。 マジックだから。

しかし、山本さんと話をしたら、ちょっとだけ「なでしこ」の動きが分かって、 「マジック」が減った。面白い。自分自身で使うのはちょっと、だけど。 日本限定なのもちょっと厳しい。

山本さんと話すうち、いろいろと面白いアイディアが湧いてきた。

  • 韓国語版「なでしこ」 - 文法的には似ているそうだから。まず、韓国留学して韓国語を身に付けるところから。
  • 中国語版「なでしこ」 - 以下同文。ただ、中国語は文法は英語に近いらしいからちょっと違うかも。
  • 秘密のアイディア。未踏に応募するかも知れないからヒミツ。

新しい言語は変化が大きくて、ダイナミズムが高い。 もう10年も続けてきて、世界中にユーザがいるとなかなか変化できなくなる。 いっそ、エメラルドか?


2005年05月19日 [長年日記]

_ 停電とメール不調

聞くところによると、昨日、うちのサーバー室の電気工事で業者が回線をショートさせて、 停電を起こしたんだそうだ、二度も。おいっ。

大事なマシンはUPSがついていたので大事にはならなかった...と思ってたのだが、 私のスプールが置いてあるマシンにはつけてなかった。 で、どうやらそれが原因でスプールが壊れちゃってたみたい。 POPでメールが取り出せなくなって困る。

で、結局手動でスプールを削除した。 で、バックアップしておいた壊れたスプールファイルから メールを救済しようと思ったのだが、これがmbxフォーマットというフォーマットなんだそうだ。 手元にmbxを理解できるツールが無かったので、rubyでちょいとスクリプトを書いて、 個々のメールに分割し、morqに流し込む。うーむ、面倒なことを。

無くなったメールはないみたい。まあ、gmailにも保存してあるんだけどね。

_ IPA X 2005 (その2)

午前中、会場に顔を見せる。 が、ふたつほど展示を見た時点で時間切れ。 電子カルテが面白そうだったが、技術的な点ではなく、社会的な点での課題が大きそうだ。 もうひとつ、分散とレプリケーションを実現するものもおもしろそうだった。

しかし、「まつもと ゆきひろ」という名札を下げていると無用に緊張されているような気がする。 普通に聞いてるだけなんだけどなあ。

_ プロコン審査委員会

本審査前の最後の会議。募集要項も決まったし、審査手順も決まった。 今年は「オープンソース・フリーソフトウェアとして公開することを推奨する」という問言も入って、 満足している。来週には公表されるらしいので、そしたら大々的に宣伝しよう。

_ 食事

うちの三人やグッデイの池添さんや足永さん、XAAの大崎さん、富士通の宗田さんと食事。 いや、「飲み」か。私はジンジャーエールオンリーだったけど。

なかなか楽しかった。NaClとグッデイの間での「交換留学」とかの話も出る。 そんなに長い期間でなくても、結構面白いかも。

_ 高田馬場

高田馬場駅の発車時の音楽が「鉄腕アトム」なのは、 科学省が高田馬場にあるからか。ちょっと感動した。


2005年05月20日 [長年日記]

_ IPAX 2005 (3日目)

最終日。あちこち見て回る。未踏ゾーン(ユース含む)は特に面白い。 特にビジネスに絡んでいないところに魅力を感じてしまうのは、 ひねくれているせいか、それともフリーソフトウェアプログラマの性なのか。

特に印象に残ったのはkVerifierとsf。 sfは技術的には非常に面白い。算数に弱い私としてはあこがれもある。 kVerifierの方はよくわからない。組み込みではうれしいのだろうか。 全然商売ッけがない、というわけでないところが微妙。

後は後輩にあたるソフトイーサ社のみなさんにご挨拶。

で、くたびれきって帰る。


2005年05月21日 [長年日記]

_ くたびれた

私の出張中、妻は具合を悪くしていた。どうも風邪を引いたらしい。 私は、というと3日間立ちっぱなしだったのですっかり疲れてしまった。

というわけで、1回休み。

あ、でも暇を見てanthy.elをハックしてきゅうり改対応をしたなあ。 まだ移行するかどうかは決めてないんだが。


2005年05月22日 [長年日記]

_ [教会] 松江

妻はひきつづき具合が悪いので自宅で留守番。末娘以外の子供たちを連れて教会へ。

うちもそうだけど、風邪でもはやっているのか病気による欠席が目立つ。 姪っ子も40度の熱が出たそうだ。季節の変わり目でもないのにどうしたことだろうか。 いや、梅雨前だから変わり目といえないことはないか。

いずれにせよ、みなさん、お大事に。


2005年05月23日 [長年日記]

_ 入院と主夫

妻の具合はなかなかよくならないので自宅作業。 とはいえ、子供のお守りもあったりして、実質的にほとんど仕事できないから、 会社的には休みと同じだな。

午後、妻は病院に行く。いくらなんでも長引きすぎだから。

その後、いつまでたっても帰ってこないなあ、と思ってたら電話がかかってきて 「入院」だそうだ。そうか。出産以外では初めての入院ということになるなあ。

で、急遽身の回りのものを取りそろえて病院に。近いのがまださいわいか。 まあ、単なる肺炎で心配することはないのだけれど、 弱いながらも感染の危険があることと*1、休息を取る必要があるということで。病院側も事情を理解してくれて、できるだけ早く退院できるように取り計らいます、ということだった。

ということで、今日からいきなり生後6ヶ月の娘の面倒を見ることになる。 とりあえず家事ひととりはできるつもりだけど、末娘は 今まで母乳のみで育ててきたのに、大丈夫かいな。夜はちゃんと寝るのかな。

*1  でも、今日まで一緒にいた家族には「感染の危険」は今さらだけど


2005年05月24日 [長年日記]

_ 主夫2日目

結局、末娘は哺乳瓶からミルクを飲んでくれたのでなんとかなった。 2番目と3番目の子は母乳のみで、哺乳瓶からまったく飲んでくれなかったので、 末の子もそうだったらどうしようと心配していたのだが、 杞憂だったらしい。一日中機嫌がいいし、目は離せないけど、それほど手はかからない。

しかし、主夫とは忙しいものだ。こんな日に限って次女は陸上大会だとかでお弁当だとか言うし。 出来合いのオカズと卵焼きで、超簡単な弁当を用意して、持たせる。

それから子供達に朝食を用意して、 学校に送り出し、それから自分と赤ん坊の朝食を済ませると、 今度は病院へ。

末娘も妻と似たような症状なので、きっと同じ病気に感染しているだろうということで、 小児科につれていく。先生も「まあ、そうでしょう」と同意してくださって、 抗生剤を処方してくださる。混んでいることで有名な病院なのだが、 駐車場に入るのに戸惑った以外は予想外にスムーズに済んだ。 もっともその後薬局で薬をもらうのに40分も待たされたのは辛かった。 院外処方なんだから、もっと空いた別の薬局に行けばよかった。

午後は自宅作業ができるかな、と期待していたのだが、 さすがに乳児は手がかかる。ちっとも仕事できなかった。 届いたメールに目を通したら、それだけで時間が過ぎてしまった。

夕食を作る気力がなかったので、外食。今日は回転寿司。


2005年05月25日 [長年日記]

_ 主夫3日目

子供を起こして、学校に送り出す。 上の娘は中学生で手がかからないが、 小学生はなかなか手がかかる。

長男は今日学校でやりたくないことがあると言ってぐずったあげく、 集団登校に参加できなかった。なんとかなだめて学校に連れていく。 次女は次女で忘れ物をしているので、それを届けに再び学校に。 なんでこんなに手がかかるんだ。

昼食が終わったころ、会社から電話。 ちょっと話し合いが必要なことがあるようだ。 しょうがないので、赤ん坊を連れてオフィスへ。

打ち合わせを終えてうちに帰ったら、すっかり疲れきっていて、 赤ん坊と一緒にうたた寝してしまう。

慌てて夕食を作り、食後に全員を連れて妻に面会。 今日もまた慌ただしい一日であった。

むかしから「なんでもできる人になりたい」と思ってきていて、 ようやく「プログラマの偉い人」くらいにはなれたんだが、 今回の経験で「主夫もできるプログラマ」にランクアップしたかも。

_ IPAX 2005 - 今語られるスーパークリエータの開発のきっかけ

一言に「未踏の人」といってもさまざまなわけだが、 その辺を分析していて面白い。

まず「そもそもなぜ未踏ソフトウェア事業に応募しようと思ったのか?」という点についてだが、これについては人それぞれの意見が出た。

...

ただ多くの開発者に共通するのが「自分が欲しいソフトを作る」という点。

...

「ソフト開発に必要なスキルはどこで身につけたか?」という質問に対しても、浜田氏や登氏など「開発の過程やそれ以前の段階(研究・趣味などを通じて)で独学で身につけた」という答えが一般的で、平林氏のように「元々職業プログラマだった」というのはむしろ少数派。

ま、いろんな人がいるのが面白いところだし、それができている点が「未踏」の最大の成功点だと思っている。

未踏のメリットとしてあげられた

未踏のメリットとして開発者の多くが挙げたのが「開発者同士の交流」。未踏ソフトウェア事業では各開発者が自らの成果を発表する合同の中間報告会や、発表会が開かれることが多いが、その席上において他の開発者の報告を聞いたり、その後の懇親会等で開発者同士が交流したりという中で、いろいろと有益なアイデアを得られることが多いという。

というのはよくわかる気がする。未踏に選ばれるような人間はどこかしら似たようなところがあるので、 交流することで有益なアイディアが出てくることってのはよくありそうだ。 もっとも、未踏でなくても、学会やオープンソースコミュニティでもそのようなことは起きるので、 これが「最大のメリット」とされちゃうとちょっと(だいぶ?)さみしい気がする。

できることなら「他の人は本気にしてくれなかったアイディアに投資してくれる」ということを メリットとしてあげてほしかったなあ。

しかし、デメリットとしてあげられた点はちょっと意外だった。

一方で問題点として挙がったのが、まず「期間が短い」割に「すぐ商品化できるものを求める」という点。渡辺氏は「未踏ソフトウェア事業は開発期間が短く、そこで作ったものをそのまま世に出せるところまで持って行くのが難しいため、未踏の期間が終わるとせっかくの技術が埋もれてしまう」と述べ、今後は「ポスト未踏」が必要だと語った。

期間が短いのはわからないでもない。未踏はスタートアップを支援する仕組みなので、 継続的な開発には向かない点があるのは確かだ。意外なのは「すぐ商品化できるものを求める」こと。 私は初年度の未踏だったせいか、そんな雰囲気は余り感じなかった。 まああれからIPAの独立法人化もあったし、やや方向性に変化があったのだろうか。

未踏の仕組みは「すぐ商品化できるもの」の育成には向かないと思うのだが。

「ポスト未踏」が必要か、というとよくわからない。私の中の未踏のイメージでは、 ちょっと違うもののような気がする。ま、おんなじ未踏でもビジネス色の強いPMやプロジェクトも多いし、 逆にオープンソース風味のプロジェクトも多い。前者と後者では感じかたも違うかも。

個人的には前者と後者できっちり分けちゃった方が良いと思うけどね。 前者は「未来ベンチャー支援」みたいな方向で、 後者は「技術発掘(or 技術者発掘)」を目指すということで。


2005年05月26日 [長年日記]

_ 主夫4日目

朝、息子が起こしにくる。時計を見ると学校に出る時間ぎりぎり。 子供たちに朝ごはんを食べさせてやれなかった。ダメ主夫だ。

いくつか買いものなど。赤ん坊を連れて移動するのは結構大変だ。 車に乗るたびにチャイルドシートにくくり付けないといけないし、 降りたら降りたで、それなりに重たいもの(8Kg弱)を持ち歩かないといけないし。 粗末には扱えないし。放っておくわけにもいかないし。

が、4日目にもなるとだいぶ慣れてきて、手際よくできるようになってきたものもある。 ミルクも作るし、散歩もするし、夕食も作るし、おむつも替えるし。

今日は日経Linuxのゲラ修正があったので、夜のうちに印刷しておいたゲラを 子供を背中にしょいながら赤ペン持ってチェック。二宮金次郎か。 学校から帰ってきた次女に末娘を見てもらってる間に修正内容をメール。

それ以外の仕事は全然できなかった。

まあ、それでもこの時期というのはラッキーだったかもしれない(look at the bright side)。

入院したのが月の前半だったら、各種原稿の〆切があってパニックになってたろうし、 論文の〆切が近かったら、同じようにパニックだし、 来週のように出張が入ってたら、あちこちに迷惑をかけてたろうし、 子供がもう少し大きくて這ったり歩いたりしてたら、少しも目が離せなくてしんどかったろうし。

昨年10月に子供が生まれて以来、夜眠れなかった妻は病院でぐっすり眠れたらしいので、 それなりに休養が取れたようだ。まあ、よかった、よかった。

_ なでしこ開発日記 - IPAX2005に出展

「なでしこ」のクジラ飛行机さんのMYCOM PCの連載の第19回。

こんにちは。なでしこ作者のクジラ飛行机です。私事ですが、IPAX 2005(5/18〜5/20)に出展しました。これは、情報処理推進機構(IPA)の事業成果等の総合展示会です。なでしこのブースでは、パンフレットを配ったり、実際にプログラムを作るところを見せたりしました。イベントは、皆様から素直な意見が聞ける絶好の機会です。今回も来場の皆さんからたくさんの意見を頂きましたので、今後の開発に反映させようと思います。

基本的にプログラミング言語ってのは地味で、展示会とかプレゼンとかでは困ってしまうことが多いのです。 私はいつもそんな目に遭っていますから、展示会とかはあまり好きじゃないんです。 今回のIPAXでもYARVが同じような目に遭ってました。

ところが、「なでしこ」のブースはいつも人だかりができていました。 山本さんの人徳もあるのでしょうが、やはり「日本語プログラミング」の魅力なのでしょうか。 正直、以前は「日本(語)限定なんて」と思っていたのですが、 今回、いろいろな意味で「なでしこ」を見直しました。

また、嬉しいことに、日本発のスクリプト言語"Ruby"の作者のまつもとゆきひろさんとお話することもできました。会話にあふれるユーモアとヒゲが印象的な方で、ヒゲについて伺うと「成功するプログラミング言語の作者(の多く)はヒゲを生やしている」とのことでした。それを聞いて、私もヒゲを伸ばさなければ、と密かに思っているところです。

やっぱり、ヒゲはインパクトがあるようですね。 今回IPAXで私をはじめて見た人は、以前の「コンタクト+ヒゲなし」の私に戻ったら、 識別できないんじゃないでしょうか。

しかし、「クジラ飛行机」というからにはクジラのような人かと思ってたら、 温厚そうな普通の人でした。名前の由来も尋ねたのだが「覚えていない」とのこと。


2005年05月27日 [長年日記]

_ U-20プログラミングコンテスト

本年度のプロコンのページが公開された。今年の特徴は

  • 一次審査を勝ち抜いた候補者は、最終選考会でプレゼンを行う
  • プレゼン結果を受けて最終選考が行われる
  • 最終選考を待っている間、講演が行われる(しゃべるのは私、テーマはたぶん「(本物の)ハッカーになろう」か「オープンソース」)
  • 候補作品をオープンソース(フリーソフトウェア)とすることが推奨される
  • 必要であればオープンソース化のための「専門家」の支援が与えられる

くらいか。若い人は是非とも参加してほしい。

_ 退院

検査の結果がよく、妻の退院が決まった。 子供達は大喜び。私も一安心。


2005年05月28日 [長年日記]

_ ひきつづき主夫

妻が退院したからといって、完全に回復したわけじゃない。 というわけで、ひきつづき主夫業が続くことになる。

しかしだな、昨日までは感じなかった疲れを感じるのはどういうわけだろうか。 これはつまり、妻がうちにいるということによる甘えなのだろうか。

それともただ単に今週のたまった疲れが顕在化しただけなのだろうか。

夕食はカレー。あんまり成功したとは言えないな。トマトを入れすぎてすっぱいカレーになってしまった。

_ [言語] signatureベースの型システム

Rubyに導入することはあきらめた型システムではあるが、 「Rubyではない別の言語」であれば、可能性は十分にある。 また、そのような型システムを持つ言語はあまり知られていないから、 そんな言語を設計(実装)できれば、成功の可能性があるかもしれない。

しかし、難しい問題も横たわっていそうだな。

しかし、それに付いて考察するにはこの日記の余白は狭すぎる。

とりあえず課題を。

  • もっとも基本的な型(stringとかintegerとか)をどのように表現するか。解釈するか。
  • 型を(内部的に)どのように表現するか。どのように型チェックを行うか。
  • 型チェックを行うタイミングはいつか。

いろいろ考えなきゃいけないようだ。langsmithで議論することにしよう。


2005年05月29日 [長年日記]

_ [教会]松江

回復しきっていない妻と末娘には留守番をお願いして、教会へ。 教室の鍵の整理などした他は特に変わったこともなく。

ただ、結構風邪などで休んでいる人が多い。今週は監督もお休みだったし。

夕方、年に一度の非常時対応訓練で連絡網を通じて連絡を行った。 今年からケータイメールを活用してみたのだが、首尾はどうだったのだろうか。


2005年05月30日 [長年日記]

_ anthyハック

ここ数日、Emacs上での日本語入力はAnthyを使って行っている。 「きゅうり改」を使って入力できるので、それなりに快適である。

もっと早く移行すればよかったな。anthy-kyuri.elを作ったら、 将来のリリースに取り込んでいただけるとの連絡をいただく。 ありがたいことだ。

ただ、使っているうちにいろいろ不具合を見付けたので、 しばらくハック。やっぱりEmacs Lispはプログラムしていて心地よい。

まあ、言語が優れているというよりも、 プラットフォームとしての機能の充実によるところが大きいのだろうけど。

ついでに元のanthy.elにもバグを見付けてしまった。

いろいろいじっているうちに、それなりに満足するものができたようだ。 変換効率もさほど悪くない。まだ「最高」とまでは言えないけど。

後は、「きゅうり改」で使っているとanthy-agentが30M以上メモリを使ってしまう現象がちょっと気になる。 rkmapを書き換えるとそういうものなのか、それともどこかにリークがあるのか。

_ 仕事

ひさしぶりにオフィスに行ったら、うちの部署宛の仕事がいくつか来ていた。 まあ、確定ではないとはいえ、仕事があることはありがたいことだ。 普段あまり金にならないことをしているので、 たまには稼がないと「お荷物部署」とか思われると嫌だし*1

とはいえ、全部〆切が7月1日というのはいかがなものか。 どういう営業でこうなるんだか。

*1  実際には大変に尊重してもらっている

_ 期待+思い込み=ストレス

子供、特に赤ん坊っていうのはだいたい親の期待に応えてくれない。 寝てほしいときに限っていつまでも寝ないし、 やっと寝たと思って布団に置いた途端に泣きだしたり。

「この子を寝かせて、仕事を片付けてしまいたい」なんて思っているときにはなおさらだ。 ストレスが溜るったらありゃしない。

が、冷静になって考えてみると、この種の「親の期待」なんてのは、 結局、親の都合の押しつけであるわけだ。 自分でない他者が自分の都合に合わせてくれないと嘆くのは、 どっちかっていうと「わがまま」とか「甘え」とかの領域で、 あまり褒められたもんじゃない。

「こうでなくちゃいけない」とかいうような思い込みを捨てて、 「ま、そういうこともあるわな」とのんびり構えることが必要だったようだ。 おかげでストレスからちょっと脱出できた。

仕事が進んでないのは変わらないんだけど、な。


2005年05月31日 [長年日記]

_ 「セキュアLSI」などで著作権保護技術を搭載し、ハイビジョンがようやくパソコンで実現

富士通がARIBの基準を満たして、ハイビジョンが扱えるPCを発売した、という話。

PC Watchによる開発談

専用のボードを開発し、HDDの録画時、バス上のデータ、処理中のメモリにいたるまで保護を行い、 家電なみの著作権保護機能を実装とのこと。

まあ、ご苦労さまなことだし、努力のほどはわからないでもないが、 そこまでして客を悪者扱いしなければならない制度や基準は変だと思う。

別にハイビジョン映像が扱えなくてもいいから、 もっと自由にコンテンツを見たい・扱いたいという私の欲求は自然なものだと思うのだけど。

「デフォルトコピーワンス」の世界が遠くない今、 なにかもう一度考え直す必要があるのではないだろうか。

_ プレゼン練習

わたし自身も明日発表があるのだが、 これはLinux Conferenceで発表する後輩の練習につきあう。

だがしかし、技術的には間違ってない、嘘のない内容ではあるが、 全体のストーリーが弱く、小さな話が数珠つなぎになっているような構成なので、 聞いてて正直つらい。直前だが、全体構成から見直してスライドを並び替えるように提案する。

酷なことをしてしまったか。

_ [Ruby]暗黙のcall

Ruby 1.9ではしばらく前から、ローカル変数の後ろに引数を並べたものは、 そのオブジェクトに対する「call」の呼び出しとするというルールを試験的に導入していた。

しかし、いろいろ試してみると

  • ローカル変数と同名のメソッドを呼び出す例
  • ローカル変数だけでは満足しない(任意の式に対してimplicit callしたい)人

が予想以上に多かった。というわけで、このアイディアを採用するのは止めようと思う。

思い付いたときには、いいアイディアだと思ったんだがなあ。

で、代わりにどうするかというと、ばくぜんと以下のいずれかを考えている。

  1. なにも新たには追加しない。
  2. 「foo[]」の呼び出しにブロックが指定できるようにする
  3. 「(expr)(args...)」でimplicit call

2番目のものは、現状のclosureは[]を使ってcallの代わりをして、 なんとなく関数的に見える呼び出しかたを許しているが、 現状のRubyは[]の呼び出しにブロックを指定できないので、 完全互換ではない。ここを修正することで、関数呼び出しと同等にできるというアイディア。

試しに実装してみたら、「foo[1]{p 11}」のようなスタイルは簡単だが、 ブロック変数「&block」を許そうと思ったら、とたんにreduce/reduce conflictの山だった。 要するに「ary[&block]=5」のようなものをどうするかということなんだと思う。

3番目のものは実装してみたら簡単だった。あんまり、あっというまにできてしまったので 拍子抜けしてしまったくらい。ただし、

a=lambda{|x,&b|p 5; b.call}
(a)(10){p 11}

のようなコードを許すのが本当によいことなのか自信はない。 っていうか、「(a)(10){p 11}」はあんまりだろう。 International Obfuscated Ruby Code Contest出場者は喜ぶかもしれないけど。


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