最新 追記

Matzにっき


2006年11月01日 [長年日記]

_ [原稿] 日経ソフトウェア 2007年1月号

書いても書いても終わらない(笑

今回は特集の記事の一部を2本依頼されていて、 最初の方(2ページ)はアメリカにいる間に書いていたのだけど、 後半(8ページ)はなかなか書けずにいた。

が、なんとなく目鼻がついた感じ。 内容は最初のものが「LotY」、後半が「コードリーディング」。 どちらもいざ書き出すといくらでも書けて、 ページ数の制約のほうが厳しい感じ。

特にコードリーディングは、 デバッグやメンテナンス、パフォーマンスチューニングなど あらゆるところに関係するからねえ。

_ [Ruby] Bob Jenkins' hash algorithm

Rubyで使ってるハッシュ関数(1.8では古典的なアルゴリズム、1.9ではFNV-1)だが、 衝突を故意に発生させられるということで、 試しにHEADのハッシュアルゴリズムをBob Jenkins' hash algorithmに変えてみる。 最新のlookup3.cはエンディアン問題がややこしかったので、lookup2.cを採用。

とはいえ、それで問題が解決できたのか確信できないところが 浅い知識の悲しいところである。


2006年11月02日 [長年日記]

_ [Ruby] EuRuKo キーノートビデオ

今週末開催されるEuropean Ruby Konferenceでキーノートを頼まれた。 最初は「Skype Videoで」と話していたのだが、 時差・回線の品質などの理由でビデオを送ってほしいとのこと。

あんまりビデオは得意じゃないのだが、撮影も被撮影も。

しかたがないので、DVカメラを使ってビデオ撮影を試みる。 SDカードに画像をセーブできるので簡単...のはずだったが、 なんと1ショット最大2分までしか録画できないことが判明。 これでは使い物にならない。

しかたがないので、以下の戦略で。

  • 最初と最後の2分ずつ、DVカメラでメッセージを録画
  • 残りはスライドを表示したPC画面をデジカメ(CASIO EX-Z600)で録画
  • 最後にビデオ編集ソフトで合成

なんだかんだで丸一晩かかった。

_ [OSS] kino

で、上記のビデオ編集に使おうとしたのが、このkino。 初心者にもなんとか使えるレベルで、なかなか頑張っていたのだが、 最後の最後に編集結果を書きだすところでSEGV。 残念でした。

結局WindowsのMovie Makerとかいうのを使う必要があった。 フリーソフトウェアで完結できない悲しさよ。


2006年11月03日 文化の日 [長年日記]

_ 中学校文化祭

娘たちの中学校の文化祭。

吹奏楽の発表やら合唱やら。 美術の展示やら書道やら。

大変誇らしかった。

_ 日経一面「ルビーの奇跡」

朝からたくさんの人からメールをいただく。 どうやら日経一面の特集に名前が載ったらしい。

日経は入手しにくいので、何件かコンビニをまわってようやく購入成功。

なになに。「通称まつもとゆきひろ」ですか。 そうか。本名だと思ってたんだけどな。 当事者からはあまり「奇跡」という印象はないんだが、 外から見るとそういうものなのかもしれない。

エゴサーチをすると、普段私に近くないようないろんな人が この記事に反応している。やっぱり大新聞の影響力はすごいわ。


2006年11月04日 [長年日記]

_ 出雲市

出雲市にできた本屋に。なかなか大きい。

昼食で出雲の街で食事をしようと思ったが、 わずか半年前のガイドブックなのに、店が閉店してたりして 移り変わりの早さを感じる。

_ [Ruby] 地域づくり支援 - Rubyで構築された島根県ホームページが総務大臣賞

評価されるのはありがたいことである。

実際には島根県ホームページはstatic HTMLで構成されている。 しかし、バックエンド(CMS、HTML生成)などはRubyでできているのは間違いない。

_ [Ruby] Ruby for Symbian OS

携帯で動くRuby。どこまで実用的かというと、かなり疑問ではある。 楽しいおもちゃかもしれない。

_ [言語] Muli Koppel's Blog: Choosing Your Goggles: Ruby or Perl, Python or Rails

デザイナーで言語を選ぶ、という話。 なぜかDHHもいる。


2006年11月05日 [長年日記]

_ [教会] 安息日

長女が聖餐会音楽指揮の責任を引きうける。 慣れないながら一生懸命やろうとする姿に嬉しく思う。

次女は自分の気持ちを語ってくれた。 これも嬉しい。

「お父さんの顔してた」と指摘された。


2006年11月06日 [長年日記]

_ 某新聞取材

先日受けた某大新聞の取材のとき、写真が撮れなかったということで 大阪本社のカメラマンの人が松江に来てくださって、 いくつか写真を。

恥ずかしいことだ。

「松江らしい写真を」という無茶な注文に従い、 松江城をバックに屋外でハックという ありえない写真撮影が行われた。

しかし、松江城のお堀にかかる橋(塩見縄手)では 無線LAN APが見えるので本当にハックできたというのは、 さらに予想外であった。CVSコミットもできちゃった。


2006年11月07日 [長年日記]

_ 暗い日・暗い天気

ちょっと、いや、あまり嬉しくないこと(仕事ではない)でミーティングがあった。 正直、落ちこむ。

で、そういう気持ちを反映するかのように、 暗い天気の悪い空であった。

が、ミーティングが終わって、将来の希望が出てきた頃、 ちょうど雨が切れて、空が明るくなってきてた。

少しだけ気持ちが明るくなった。

_ スライド

明日、楽天社内でセミナーをするので、 そのためのスライドを用意する。

相変わらず泥縄である。

_ [Ruby] デンバー合意

デンバー合意によると10月末でRuby 1.9に対する修正はfix、 YARV移行へのベースラインバージョンを用意するということであったが、 原稿その他が忙しくて手をつけていなかった。

で、11月に入ってからごそごそ修正していたものをコミット。 ベースラインとすることにした。

  • Embeded Arrayはヤメ。苦労が多い割に効果が少ない。
  • Array lfreeパッチもステ。どうしてもバグが取れない
  • Symbol < Stringも止める。caseとかでのバグをたくさん生んでしまう
  • to_splatに関する複数のバグを修正
  • 「*nil」がエラーにならないように
  • includeで重複を再び許さないように

ここで時間切れ。

ここからの修正は手元のgitで行うことにする。


2006年11月08日 [長年日記]

_ 買い物

上京。息子がクリスマスにDS Liteが欲しい、というので 探してみる。しかし、考えてみれば、 DSみたいに一般の人も欲しがるようなタマ数が限定されるようなものは 秋葉原みたいに人が集中するところではかえって購入しにくいのではないだろうか。 何件か回ったけど、どこにも置いてない。

まあ、しょうがないか。12月までにはもうちょっとあるしな。

あと、Thinkpad X31のACアダプタがだめになったので、 中古で購入。ケーブルを巻いて持ち歩くので、 内部の線が疲労で切れちゃったみたい。 たまにバッテリ駆動になっててびっくりすることがあった。

まあ、いい買い物だったなあ。

_ [Ruby] 楽天セミナー

六本木ヒルズへ。 なんか浮いちゃってる感じもするんだけど。

セミナーでは300人以上の人が集まっていた。 楽天の中の人(協力会社含む)でこんなに集まるんだ。

新作を披露したのだが、 結構おとなしかった。「ここは笑うところですよ」と思ったところでも ウケなかったし。最後の質疑応答もあんまり質問が無かったし。 でも、つまらなかった、と言うわけでもないみたい。 「おとなしい」というだけのことなのかしら。

質疑では「Pythonどうですか」という質問に対して、 「いい言語だと思いますよ。私は使わないけど」というのが、 一番笑いをとっていたようだ。

それでいいのか。


2006年11月09日 [長年日記]

_ [Ruby] YARV

10時からの約束で秋葉原ダイビルに向かうが、 寝坊したりで実に1時間も遅刻してしまう。 笹田くんのオフィスの階でエレベータから降りて 「さて、どうやって開けてもらうかな」と思った瞬間に 電話が鳴る。前田くんからだ。

「遅くなってるそうですけど、どうしました?」

「いや、今、ドアの前まで来た。笹田くんの番号教えて」

というわけで、無事到着。

で、しばらく一緒にYARVの開発。

長らくRubyの開発をしているが、基本的に一人で作業してきたので(メールを通じたやりとりはあるけど)、こういう形で、アイディアを出し合ったり、あーでもない、こーでもないと言い合って開発したことはほとんどない。実に新鮮で、楽しかった。

また、こういう機会を持ちたいものだ。

_ [原稿] OSM原稿

オープンソースマガジン最終号のハッカーズライフの原稿。

しかし、昨日今日は出張でほとんど書けなかったし。 ほんとに終わるのかしらん。

_ [知財] 「著作権保護期間の延長、議論を尽くせ」−クリエイターや弁護士が団体発足

無条件に延長するのでなく、メリット・デメリットをちゃんと考えて、 かつデメリット(特に再利用の疎外)には手当てをすることを考えてほしい。

個人的には「登録すれば長期間権利を保留できる、そうでないなら発表後n年のみ」というのがいいんだけどなあ。で、「n年」はできるだけ短いとなお良い。

メシの種にしたい人は好きなだけ伸ばせばよい。 そうでない人は積極的にコモンズとして提供してもらうということで。

_ [Ruby] Ruby on Railsの統合開発環境,まつもと氏が在籍するNaClとOSJが発売

ここしばらく前田くんたちを中心に開発していたWindows上の統合開発環境(+サポート+α)が、 とうとう発表された。あちこちのプレスで取り上げてもらえたようだ。

CD-ROMとサポートのBasicで5万、それに講習会もつくPremiumで20万(税別)。 少々、お高い印象もあるかもしれないが、ちゃんとしたサポートで年5万とか、 それに定価18万の講習会がついて20万とか、提供側としてはわりと思い切った値付け、らしい。

ま、個人で買うものじゃないけど。

なお、これらは楽天市場のOSJオンラインから買える。楽天というのはかなり意外だった。


2006年11月10日 [長年日記]

_ DS Lite

松江のヤマダ電機で売ってた。

やはり、人が少ないところの方が有利なのか。

_ [原稿] 日経Linux 2007年1月号

なんか、Railsの近くを旋回しているような(前回はMVC)連載だが、 さらに同じような傾向で、今回は「オープンクラス」について。

Lispの経験があれば、わりと自然なのだと思うけど、 Javaスクール出身者にしてみれば、 トンでもないことなのかもしれない。

で、オープンクラスのメリットとデメリットについていろいろ。 特にActiveSupportがどんなに「スゴイこと」してるのかについて。 この「スゴイ」は、いい意味も悪い意味も両方ね。

っていうか、このオープンクラスもなにか手当てを考えたい領域ではある。 2.0(3.0?)では、クラスボックスかなにかでもうちょっとなんとかしたい。


2006年11月11日 [長年日記]

_ [OSS] GPLライセンシングは独禁法違反ではない

独占禁止法でGPLに対抗するというのは意外な発想であったが、 成功しなかったということはなによりだ。

_ バッテリー

妻が使ってる軽自動車のバッテリーがあがってしまったようだ。 キーを回してもスターターに力がない。

ブースターケーブルでつなごうと思ったが、 私の車は数年前のリコールでバッテリーに強固なカバーが付けられてしまって 端子にアクセスできない。このカバーがどうにも外れないのだ。

しかたがないので、カーレスキューに来てもらって、 ブースターをつなげて起動に成功。 いや、ご迷惑をかけました。


2006年11月12日 [長年日記]

_ [教会] 評議会

朝、軽自動車のエンジンがかからない。昨日のトラブルは単にバッテリーが空になっただけではなく、バッテリーそのものがダメになっていたようだ。 しょうがないので、一台で全員移動。

朝からワード評議会だったのだが、少々遅刻してしまった。残念。

_ [教会] 急遽お話

聖餐会でお話をお願いしていた人が一人を除いて全滅してしまったので、 急遽ビショップリックの二人で対応することに。

いや、残りの一人(実はうちの長女)も、できないかも、とか言ってたのでどきどきしてたのだが、無事「大役」を果たしてくれた。一安心。

で、私とビショップが残りの時間を。準備の時間がゼロなので、結構緊張した。 いくつか聖典を引用しながら、「神の国は近づいた」とかなんとか。 ま、普段、貯えたものしか出せないよね、こういうとっさの時には。

_ [教会] ステーク神権会

岡山でステーク神権会。移動は堪えるが、 それだけのものはあったように思う。


2006年11月13日 [長年日記]

_ バッテリー復活

結局、以前よくお世話になってた整備工場に電話して来てもらう。 わざわざ出向いてもらって、交換までお願いしたのに、 バッテリーの代金だけで済ませてもらった。

ありがたい。

_ [原稿] 日経Linux 2007年1月号

「オープンクラス」完了。疲れた。

_ 緊急持ち出し

家庭の夕べで緊急持ち出しカバンの中身をチェック。

前回チェックしてから数ヶ月にしかならないのに、 虫がついてたり、消費期限が過ぎたりで、だめになってるものがあったり。 なかなかメンテナンスが面倒なものだ。

_ Colemak keyboard layout: ergonomic, fast and easy to learn QWERTY/Dvorak alternative

QWERTYに似てるけど、ずっと良いキー配列。

  • QWERTYからの変化が少ない
  • Dvorakより移行が簡単
  • 効率はDvorakと同等

なんだそうだ。具体的には以下のようになってる。

TAB Q W F P G J L U Y ; [ ] \
 BS  A R S T D H N E I O '
SHIFT Z X C V B K M , . /

個人的には大量に文書を入力する日本語に対して「きゅうり改」があるから、 そんなに魅力的ではないけど、英文をたくさん入力する人には効果的、かも。


2006年11月14日 [長年日記]

_ [原稿] オープンソースマガジン 2006年1月号

なんか、原稿ばっかり書いてるな。

オープンソースマガジン最終号でライセンスについて取り扱うということで、 以前の「フリーソフトウェアライセンス診断」なんかに似た線でなにか、という依頼。

以前書いたネタだからと思って気楽に書きはじめたら、 いろいろ難しかったり、分量に納めるのに苦労したり。

あと、「ハッカーズライフ」とちょっとかぶったり、 特集のほかの記事とかぶったりしそうだ。

_ [OSS] ISID、Seasar2商用サポートサービスを拡張、バージョン固定サポートを導入

ISIDがSeaser2の商用サポートサービスで、特定のバージョンをサポートしつづけるオプションを提供する、という話。

商売としてはいろいろなオプションが増えるのを見るのはありがたい。 そうやって、市場の理解が進めば、ひいては私たちにも恩恵がある(可能性がないとまでは言えない)。

_ [OSS] サン、「Java ME」と「Java SE」のソースコードをGPLライセンスで公開へ

えーと、GPLを選ぶというのは正直意外であった。 望ましいことであると思う。

あと、この件についてはJRubyのCharles Nutterのエントリも紹介しておく。


2006年11月15日 [長年日記]

_ [原稿] オープンソースマガジン

「ライセンス診断」完結。楽勝、とまでは言えないが予想よりは楽だった。 むしろ削るのに苦労した。

_ Servoy - smart technology for smart clients

どこかで見つけたAdSenseリンク。いわく、

From plain browser-only apps to enterprise web-applications with Servoy

Are you tired of the complex syntax and the limited capability of Ruby on Rails? Servoy enables you to code even faster than with Ruby, yet offers you so much more functionality! With Servoy's strong feature set, you can code complex web applications with integrated business rules in very little time; and then deploy these applications as both a Servoy Smart Client and Servoy Web Client -- using the same code-base.

要するにJavaのアプリケーションフレームワークで、Rubyとはなんにも関係ないようなのだが、 「Ruby(とRails)の複雑な文法と制限された能力に嫌気がさしたら」というのは、 面白い宣伝文句だ。普通は逆方向の流れなのだが。

こういうのが出てくるというのは、個人的に「Railsはホンモノ」という印象を与える。

_ [言語] How Does a Programming Language Stagnate?

Perl5が言語として停滞するということはあるのか、という話。

言語の停滞(あるいは衰退)というのは、 言語設計者である私にとって重要なテーマである。

プログラミング言語の衰退はユーザがいなくなることによって起きる。 それはその言語の生態系が弱体化することである。 もはや、その言語で新しいプログラムが書かれなくなると、 言語はメンテナンスモードになる。ユーザは少しずつ減り、 長い時間をかけてその言語は次第に忘れ去られていく。

現在、COBOLがそのモードである。 確かにまだまだCOBOLは使われている(我が社は その証人でもある)。 しかし、そんな我々でも、今からCOBOLの新しいプログラムを書く人が少数派であることは否定できない。

FORTRANもかなり近い。これも分野限定では現役のようだが。

しかし、衰退の前に停滞が来るのだ。

それは言語が進歩を止めることである。 あるいは仮に進歩が起きてもユーザの手に届かなくなることである。

たとえば、Cはかなり停滞が進んでいる。最後の規格はC99だが、 実際問題C99をばりばり使う人はそんなに多くない。

だからこそ、ほとんどの人が1.8に満足していても、1.9や2.0の話を続けなければいけないのだ。 Rubyを前に進めるための燃料として。

とはいえ、1.8と1.9があまりに分離しても、停滞は起きうるんだよなあ。 悩ましい。


2006年11月16日 [長年日記]

_ [原稿] るびまErlang

RubyConf 2006 Welcomeセッションでもビデオが紹介されていた Erlangについて。

ところで、原稿には書かなかったが、実用的な観点からいうと

  • ロードしないとプログラム定義が使えない点
  • エラーメッセージがわけわかんない点

のふたつは致命的な気がする。

_ [Ruby] smalltalk.rb

RubyとSmalltalkをつなぐAvi Bryantから新しいニュースが。

JRubyのパーザを使ってSmalltalk VMをキックする方法。 Ruby on Smalltalk VMの第一歩になるかも。

_ [Ruby] Headius: Ruby for the Web? Check!

一方、同じJRubyを使って、あなたのブラウザでJRubyを動かすアプレットも 紹介されている。

_ 「魔界転生」などの漫画家、石川賢さん死去 - おくやみ

え? えーっ。

漫画家は死ぬのが早すぎる。プログラマはどうか。


2006年11月17日 [長年日記]

_ [原稿] 原稿未承諾

今週の計画だと、今日、もう一本原稿を書いて 「死の原稿ロード」から解放されるはず...だったのだが、 改めて原稿依頼をチェックしてみると、

依頼は受けたが承諾していなかった

フォローアップもなかったし、 これは断ったと見なされてるな。 ま、しょうがない。

一応、編集の人にメールして、 今日は開発の日にしよう。

やった♪

_ [Ruby] class local instance variable

思わず時間に余裕が出来たのと、 今週は全然プログラミングできてなかった抑圧とが 重なって、久々に大物に手をつけてみようという気になる。

今日の料理は「class local instance variable」、 つまり、そのクラスからしか見えないインスタンス変数。 C++のプライベートメンバ変数のようなものだね。

しかし、構造体ベースのC++と違い、 ハッシュベースのRubyでは少々面倒くさい。 Pythonではアンダースコアで始まる属性には クラス名を付加して疑似的にクラスローカルとしているようだが、 それは少々かっこ悪い。

そこで、以下のようにした

  • 名前が_で始まるインスタンス変数(@_fooとか)は クラスローカルインスタンス変数
  • これらはクラス(のアドレス)とシンボルから合成される特殊なシンボル
  • 「:@_foo/Object」で合成したインスタンスが得られる
  • to_sでは「@_foo」が得られる
  • inspectでは「:@_foo/Object」が得られる
  • インスタンス変数として使うと自動的にcbaseからシンボルを合成してアクセスする (ノードが増えた。ささだくんが泣くかな)
  • marshalはこれに対応

ついでに性能向上のため、Symbolをimmediateに戻した。

_ [原稿] WEB+DBマガジン No.36

なんてことを一通り終わった頃、 「やっぱり原稿お願いします」というメールが届く。 えーと、この一日をどう考えればよいのだろうか。

_ なぜ.NETが必要なのか? - @IT

えーと....、.NETの必要性をそうやってひねり出す能力は尊敬する。 正直、羨ましい。いや、妬ましいくらいだ。


2006年11月18日 [長年日記]

_ 留守番

妻が米子で用事があったので、夕方まで家族で留守番。

ま、結構楽しかった。まあ、一日末娘用のビデオ三昧で、 ちょっと飽きたけど。

_ 寿司

というわけで、うっぷん晴らしに、寿司を食べに行った。 回転するのだけど。

おいしかったよ。

_ Random thoughts on Intelligent Design

「Intelligent Design」(ID論)というのは、 発生や進化になんらかの知性ある「デザイナー」が関与しているという主張で、 比較的リベラルな創造論者が進化論と折り合いをつけるために、 宗教的シンボルを取り除いて、なお「創造主」という概念を表現しようとしたもの。

ま、保守的な創造論者からは変節だと非難され、 進化論者からは非科学的だと指摘されつつも、 ある一定のクリスチャン層からは評価されている主張でもある。

ID論は聖書を受け入れるクリスチャンにとっては、 魅力的に聞こえないでもないけれど、 個人的にはやはり距離を置いた方が良いのではないかと考えている。

で、リンク先はID論についての雑多な考えを書き綴ったものなのだけど、 「デザイナー」の代表として、私(Matz)が登場している。 そこが面白かった。

ま、「Intelligent Design」と比較されるほどのデザイン能力があるわけじゃないけれど。

あったらいいなあ。


2006年11月19日 [長年日記]

_ [教会] プライマリ発表

年に一度のプライマリの発表。

子供たちの発表はとてもかわいらしかった。 一生懸命なのが通じる。 というか、本番に強いなあ。

まあ、いろいろな個性の子供たちがいるが、 それぞれ自分らしくて良かったのではないかと思う。


2006年11月20日 [長年日記]

_ [Ruby] 取材

取材を受ける。

わざわざ松江まで来てくださって、ありがたい。 で、Rubyの歴史から、私の個人的なことまで、 とりとめのないことをつらつらと話したが、 これをどういう風に料理してくださるのか楽しみである。

_ [原稿] WEB+DB Press No.36

金曜日、一日ロスした原稿に取り掛かる。

まあ、わずか2ページなので、あっと言う間に書きあがるが、 また書きすぎてしまい、かなり削る。

なんか最近そういうのが多い。

_ IPA:未踏ソフトウェア創造事業:2006年下期未踏ソフト 公募結果

公表される。

笹田くんは3度目の当選。おめでとうございます。

しかし、未踏も回を重ねるにつれ、トンがったのが減ったような気がするのは気のせい? もうちょっと冒険したものも見たい気がする。

結局完成しないのも切ないけど。

_ [OSS] コミュニティが育てる・作る言語,フレームワーク,ERP,SNS---「関西オープンソース2006」レポート

先日行われた「関西オープンソース」のレポート。大変有意義だったらしい。

今年は運営が大変だったと聞くけど、 東京中心になりがちなオープンソース界で、 関西で定期的にイベントが開かれる意義は大きいと思う。

ぜひ継続していただきたい。

_ [言語] Bitwise Magazine:: S# - Smalltalk :: The Next Generation

新鋭SmalltalkことSmallscriptの父、David Simmonsが マイクロソフトと開発中の「次世代Smalltalk」S#について語る。

って、S#の実態はよくわかんないんだけど。

ついでにRubyやDについても語ってくれちゃっている。

このDavid Simmonsは、ものすごい自信に満ちあふれた人で、 一緒にいるとちょっと疲れちゃうところもある。 しかし、その広範な知識と、実績と、頭の回転の速さはホンモノである。

で、彼がずっと以前からSmallscriptで実現している Selector Namespaceがいまだに理解できてない*1私は、 当面彼にかないそうにないなあ。

*1  Classboxはなんとか理解できた


2006年11月21日 [長年日記]

_ [OSS] GPLv3スライド

明日のGPLv3カンファレンスのスライドに着手。

忙しくて手抜きになってしまった。申し訳ない。

ってか、開発者たるもの、ライセンスよりは開発そのものに関して 知識・経験を活用すべきだよね、ねっ。

_ [OSS] 「LinuxユーザーはMicrosoftに借りがある」、バルマー氏が明言

またFUD。特許がらみなのが悪質だ。 それならちゃんと特許番号を示してみろってんだ。

マイクロソフトに対して積極的に敵意を持とうと思ってるわけじゃないんだけど、 要所要所でこういう反発せざるをえない発言をしてくれるのが困る。

_ 「ユビキタスの鍵」−ターボリナックスが携帯型PC「Wizpy」を発表

ちょっと欲しいかも。値段も安そうだし。

_ 「オンリーワンが人の心に火をつける」---松江市長 松浦正敬氏がRuby City Matsueプロジェクトを語る

語ってくれちゃってます。とりあえず聞いてて励まされる内容です。 これがどれだけ成果を生むのか、注目して見てましょう。

って、人ごとな態度ではまずいんだろうな。 がんばって成果を生むようにしよう。そうしよう。


2006年11月22日 [長年日記]

_ [OSS] GPLv3カンファレンス

妻に送ってもらって出雲空港へ。

移動中に、先日のクラスローカルインスタンス変数に手を入れる。 前の実装ではシンボル名とクラスアドレスをpackしたシンボルを 作るという無理矢理な方法であったが、 シンボルテーブルを増やすことで対応した。

ついでにSymbolをもう一度immediateに戻す。 YARV方面で遅くなったという話を聞いたから。 これでもうちょっとマシになるといいんだけど。

GPLv3カンファレンス・パネル。

自作ライセンスを作ったのは出来心だった。 むしゃくしゃしてやった。フリーソフトであれば何でもよかった。 今は後悔している。

GPLv3についてはあまり語ることはなし。 ドラフト1はあまりに冒険的で不安になったけど、 現在のドラフト2は(ひと目で見るかぎりは)もっとずっとおとなしいし、 しかも、表現が難しくて正確なところは素人にはよくわからないし。

もうすぐドラフト3が出るということだし、 もうちょっと様子を見るしかないと思っている。

_ 書類不備

明日は妻と待ち合わせていたのだが、 夕食時に電話で連絡したら明日必要な大事な書類が期限切れだった、とのこと。

正直、内心「これは絶対ムリだな。予定変更か」と思ったのだが、 彼女の努力と、まわりの人の協力があって、驚くべきペースで、 手続きが進み、なんと書類更新が完了してしまった。

熱意か、信仰か。

感心した。感動したといってもいい。


2006年11月23日 勤労感謝の日 [長年日記]

_ でえと?

結婚15年目。そんなになるんだ。

羽田空港まで妻を迎えに行く。

その後、広尾へ。

会社の同僚から広尾のおいしいお店をいくつか紹介してもらったのだが、 知り合いに偶然に会ったり、カバンを置き忘れたのを取りに返ったりしてたら、 すっかり時間がなくなってしまった。 残念ながら、これは次回ということに。次回がいつになるかわからないけど。

まあ、子供抜きで二人の時間を過ごせたのはよかったなあ。 実家の両親に感謝しよう。

あ、留守番してくれた子供たちにもね。


2006年11月24日 [長年日記]

_ [言語] スクリプト言語 mongoose (マングース)

「新しい言語」

成長途上の様子が初々しい。

_ [言語] 日経ソフトウエア2007年1月号

いろいろ書きました。今月は合計20ページも書いたことになる。 がんばったなあ。

で、これに関して個人的に一番面白かったのは、 「Rubyの神髄」を推測したYuguiさんの記事。 また、Yuguiさん自身の言葉にも感銘を受けた。

Rubyは本当に、昨今のある程度知られた言語たちに比べて真新しい点というのはないと思うんです。言語機能に関してはまつもとさんが常々おっしゃってるとおり「C言語で実装してある処理系の間であれができるこれができるというのを競っても意味がない」ですし。構文もどこかで見掛けたようなのを細かくチューニングしているに過ぎないわけです。殊に、この特集の中でJavaScriptやEiffelと並べられると非常に弱い。でも、チューニングするにあたって、やはりRubyの個性が出てきている筈で、私がRubyを習得するにあたり「こいつ本物のアホだ(褒め言葉)。普通こんなんやらない」と思ったような点をひねくり回してRubyの個性をできるだけ描写しようとしてみました。

Rubyはなー、本当にブロックの終わりがendであることとメソッドがオブジェクトでないこと以外は極めて普通だと思う。逆に、なんで他の手続き型/オブジェクト指向/動的強型付言語はRubyじゃないんだろう。

まさにその通り。さらに言えば、ちょっと昔だとendで終わることも普通だった。 AlgolとかAdaとかModulaとかEiffelとか。

で、「なんで他の手続き型/オブジェクト指向/動的強型付言語はRubyじゃないんだろう」というのは、私にとっても興味深い謎である。現時点では「デザイナーの趣味が違うから」以上の答えを持ってない。

_ SVN Box

US Sunからマシンが届く。これをSubversionマシンにしようと思う。

が、設定が終わるのはいつになるんだか。


2006年11月25日 [長年日記]

_ [Ruby] RCRchive

Bikeshedに呼応して、新しいRCRが出来た。 まだ改善点はたくさん残っているようだが、 これでRubyを改善するデザインゲームが動きだす...といいなあ。

_ らいおんの隠れ家 - ポール・グレアム「変人の力」

前から読もう読もうと思っていたPaul Grahamのエッセイが いつの間にか翻訳されている(しかも、ずいぶん前だよ)。

やはり日本語の方がわかりやすいなあ。

「変であることを恐れてはいけない」。


2006年11月26日 [長年日記]

_ [教会] 松江ワード大会

年に一度のワード大会。

ためになる話をたくさん聞いた。自分の勉強不足を感じた。 昼食はなごやかで、しかもおいしかった。

_ [Ruby] Rubyist Magazine - Rubyist Magazine 0017 号

出た。

面白い記事が目白押しだが*1、いかんせん、この日記を書くのがずれすぎていて(実際に書いたのは12/8)、 知るべき人はみんな知っているし、役にも立たない広報になってる。

*1  Erlangの記事は、言語は面白いが、記事は単なる紹介だけだけど。


2006年11月27日 [長年日記]

_ Seasarメディア準備号 - ひがインタビュー

ひがさん、めっちゃRails意識してます、という話。

私自身はJavaやその上のSeasarを使う必要も、予定も、興味もないのだが、 技術動向としてはいつも注目している。

そういう「部外者の観点」から見ると、 Seasarプロジェクトのプロダクトは、 どれがなんだかすぐにわからなくなる。 Churaってなにとか、Buriってなにとか。

沖縄語(方言と呼ぶべき?)に使えそうな語彙がたくさんあるのは、 すごくいいことだと思うけど、耳になじんでないうえに、 それぞれの単語とプロジェクトの間に 連想が効かないのは結構つらい。

きっと中に入ってなじんでしまったら、なんでもないんことなんだろうな。

ところで、ChuraはJava界のRailsになることができるのだろうか。 つまり、適切なフレームワークの設計やツールの支援があれば、 Ruby抜きでRails(の本質)を実現できるのだろうか。

個人的にはLisp on Railsならば、やれば出来そうな気がするけど、 Java on Railsってのは相当難しい気がする。 たとえ、「3分でWebアプリケーション」が作れても。

そこはしばしばRailsの利点といわれているけれども、 Railsの本質はそこではないような気がするから。

_ 20XX年のユビキタス、ロボット、Web/Tech総研

対象領域が近いのでえとさんの予測が特におもしろかった。

未来予測は当てようと思うとしんどいが、 利害関係なくただ単に考えるだけならけっこう面白いなあ。

じゃあ、私も予測してみよう。

プログラミング言語も超メニーコアの時代になって、 1PCに65536個くらいCPUが載るようになると 並列性を人間に取り扱える形で(つまり、あまり見せないように)、 取り扱える言語が求められるようになり、 FORTRANのベクトル化技術に類似するものが復権して スクリプト言語を含めて広く利用されるようになる。

か、並列化が行いやすい副作用のない関数型言語が今とは別の意味で注目される。

とかね。


2006年11月28日 [長年日記]

_ [Ruby] スライド

30日の日経BP主催のイベントのためにスライドを用意する。

だいたいは先日のイベントそのままなのだが、 もうちょっとトンがった印象を与えるように調節する。

裏目に出そうな気もしないでもないのだが。

_ [Ruby] block wrapper

akrさんが、[ruby-dev:29022]で指摘していたblock wrapperの不完全性だが、 ここは難しいのでつい放置していた。実に半年も。

が、やっと心に余裕が出来て見直しをしてみたのだが、 とりあえず[ruby-dev:29616]で(パッチ付きで)提案されたもので なにが気に入らないのか、自分でもわからないので とりあえずそのまま取り込んでみた...。

別に不都合な点はなさそうだ。なにをためらっていたのだろう。

しばらく手元で使ってみて、確かめてみよう。

_ [知財] 著作権保護期間延長はクリエイターのためになるか

ならないんじゃないかと。 著作権なんて利用されてナンボなんで、 「原則差し止め」では文化の発展にもつながらず、 コモンズはやせ衰えるだけだろう。

宮沢賢治の名作から着想を受けといて、 自分の作品からの「インスパイヤ」には目くじらを立てる人もいるわけで。

子供のころはファンだったのになあ。悲しい。

まあ、いずれにしても、議論が盛り上がるのはいいことだ。 そして、コンテンツホルダーの利権ではなく、 クリエイターの権利と文化振興とユーザの利便を中心に据えた議論が 高まることを期待したい。

_ 「Wiiを使った運動」がカウチポテト族を救うか?

それ、なんて「剣聖ドラゴンクエスト」?

実は、先日リサイクルショップで「剣聖ドラゴンクエスト」が千円以下で 売っていたので、つい衝動買いをしてしまったのだが、 いまだに倉庫に眠っている。

もしかして、これ一生懸命やればやせられるかなぁ。

_ [Ruby] Editors' Choice 2006 | Linux Journal

2006年度版のLinux Journal Editors' Choiceの言語部門にRuby 1.8.5が選ばれました。

ぱちぱち。

って、これはRubyが達成したというよりもRails効果だよなあ。


2006年11月29日 [長年日記]

_ [知財] 特許二題

まずは韓国からのニュース。

マイクロソフトのOfficeが韓国で販売停止の危機──特許訴訟敗訴で

クレームを読んでいないが(きっと韓国語なので読めないが)、 記事を読むかぎりは、 単にインプット先に合わせてIMEのオン・オフを制御するだけの特許にみえる。 こんな特許で販売停止が言い渡されるというのも迷惑な話ではないか。

で、さすがにこういうことはまずいと思うのか、 アメリカでは動きが出てきている(のかな?)。

米最高裁、特許の「自明性」を審理へ

要するに「あんまり自明な特許はやめようよ」ということらしい。 その通りだ。

ほんとうは特許審査のレベルではねることができればそれに越したことはないのだが。


2006年11月30日 [長年日記]

_ 退職のご挨拶 - ふぇみにん日記

というわけで、同僚のかずひこくんがNaClを退社して、 新しい天地に旅立つことになりました。

出不精で、動くのが面倒な私にとっては 転職、それも国を越えてなんてのは、考えられない冒険です。 チャレンジャー精神にあふれたかずひこくんの前途に幸あらんことを祈ります。

ってか、異国で本当に大変なのは家族なので、 かずひこくんは家族をよくケアしてあげてくださいね。

_ [Ruby] 日経BP 次世代開発フォーラム 2006 Winter

東京に移動して、講演。

だいたいの内容はITProを参照のこと。

その後「小人数で開発できるものが軽く実装できても、パレートの法則で8割が重いままだったら、誤差じゃね」というツッコミをどこかのブログ(URL失念)で読んだが、 それは想定外のツッコミであった。

確かにそうかも。

ただ、Web2.0という文脈では、多少未完成でも素早く開発するのが重要で、 そのためには硬い言語よりも動的な言語が向いていて、 かつその領域は広がっている(ように見える)。 パレートの法則はここではあてはまらない...んじゃないかなあ(ちょっと、弱い)。


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